「男性不妊について広く知られるようになり、結婚をする前の独身男性が精子の状態を調べる『精液検査』を受けに来る人が増えてきました。一方で晩婚化を反映して、40代くらいのご夫婦も来院することが多いです。年配のカップルですと、子どもの授からない原因は妻だけにあると夫が誤解をしていたり、不妊治療に対して温度差があったりする様子も見受けられます」(大橋先生 以下同)
妻と産婦人科に行き、そのときに一緒に精液検査を受けたら結果が悪く、自分にも原因があったことに初めて気付く男性もいる。このとき、男性は「オトコ」として否定されるように感じることも多いそう。
「妻にだけ原因があると思っていたら、自分が原因だと分かってショックを受けた夫に対して、『一緒に頑張りましょう』と伝える心温かい奥さまもいましたね」
大橋先生が所属する荻窪病院には、年間約300人の男性が初診で来院する。そのうち150人ほどの人がネットを検索して来ているが、調べているのはほとんどが妻なのだとか。
●夫の不妊原因や治療によっても、妻の負担は変わる
不妊治療は不妊の原因や夫婦それぞれの考え方によって、治療内容が変わることがある。
「男性不妊の原因のなかでも症例が多い精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)は、精子の状態が悪いと外科手術をオススメしています。手術後、50~60%の患者さんが手術後に精子の状態が良くなります。なかには外科手術を行わずに体外受精、顕微授精を頑張って受ける女性もいらっしゃいます。しかし、卵子と精子を取り出して受精させて体内に戻す『体外受精』と『顕微授精』は、女性側に負担がかかります。外科手術をすることで女性側に負担をかけずに妊娠に至る夫婦もいらっしゃいます」
また無精子症や射精障害が改善できない場合、「精巣内精子採取術TESE(テセ)」で直接精巣から精子を取り出し、卵子に受精させて子宮に戻すといった治療もある。
不妊治療は夫婦で取り組むことが大前提。夫婦間でよく話し合い、意見をすり合わせておくことが重要だ。
(ノオト+石水典子)