身長を伸ばす○○はウソ? ホント? 衝撃の真実

第3回 低身長のわが子。どうしたらいい?
昔から、 “○○は背を伸ばす”“背が伸びる○○”など、身長にまつわるいろいろな“説”や“商品”についてよく耳にしますよね? でも、これらは医学的にホントなのでしょうか? そこで、小児内分泌科の第一人者で、たなか成長クリニック院長の田中敏章先生にお話を伺いました。

「身長については、まことしやかに噂され、多くの人が信じこんでいる情報や知識がたくさんありますので、どうか惑わされないように気をつけてください」(田中先生 以下同)

●牛乳を飲むと身長が伸びるはホント?

わが子の背が伸びるように…と、牛乳をたくさん飲ませている親御さんも多いのでは?

「牛乳で背が伸びると言うのはウソです。背を伸ばすのは基本的には“たんぱく質”なんですよ。牛乳にもたんぱく質は含まれていますが、少量です。多く含まれているのは、カルシウムですよね? しかし、カルシウムは骨は強くしますが、背を伸ばす力は残念ながらありません」

身長が伸びる○○は、ウソ? ホント?

●よく寝る子は背が伸びるはホント?

「確かに、睡眠が少なければ成長率は悪くなります。しかし、知っておいていただきたいのは、長く寝ればいいということではなく、睡眠の“質”が重要なのです。背を伸ばすために重要な成長ホルモンは、時間で分泌されるものではなく、実は“深い睡眠”のときに出るんですね。しかし、人は深い眠りと浅い眠りを交互に繰り返していますから、ある程度の長さがないと成長に必要な成長ホルモンの量が確保できないというわけなんです。かといって、10時間以上寝たりしても、最後のほうは夢ばかり見て浅い睡眠なので、成長ホルモンはほとんど出ません」

よく午後10時から午前2時に成長ホルモンが分泌されるという説が巷に流れていますが…。

「これはまったくのウソで、何時に寝ようが成長ホルモンは出ます。深い睡眠と一致して分泌されるもので、昼でも深く寝れば分泌されることが、40年以上も前に世界的な学術雑誌に掲載され、確かめられています。つまり、時間帯ではなく、睡眠の質とある程度の長さが重要です。小学生では8時間以上、中学生以上であれば7時間以上の睡眠があればいいでしょう。ただし午後10時すぎには寝るような生活習慣をつけた方が、成長のためには良いと思いますが」

●バレーボールをすると背が伸びるってホント?

バレーボールやバスケットボールをしたり、鉄棒にぶら下がったりすると背が伸びる。逆に、筋トレをすると背が伸びないとよく言われていますが…。

「これもすべてウソです。バスケットやバレーボールをやったからといって背が伸びることはありません。背が高いほうが有利なスポーツですよね? だからそういう人が集まるし、そういう人が結果的に残っていっているんです。逆に、体操選手は、背が低い人が有利ですから、背が低い小柄な人が残っているんです。鉄棒でぶら下がって伸びることもありません。一時的に関節や軟部組織がゆるんで、直後には1~2cm高く計れるかもしれませんが、すぐに重力で元に戻ってしまいます。よく筋肉を鍛えると、背が止まるという情報もまことしやかに流れていますが、これもまったく関係ありません。筋肉がよく付く時期は男性ホルモンがたくさんでている思春期の終わりなので、そのように誤解されているのだと思います」

●身長を伸ばすサプリメントはホント?

身長を伸ばすサプリメントなどの広告や情報をよく目にしますが…。

「サプリメントも背を伸ばす効力はありません。例えば、カルシウムは骨を強くしますが、成長を促進する効果はありません。成長ホルモンを促進するといわれているサプリメントは“アルギニン”が有名です。確かに成長ホルモン分泌刺激試験に用いますが、その場合は30kgの子どもなら15gを30分で点滴をして血中濃度を上げることにより、成長ホルモンの分泌を刺激します。1~2gのアルギニンを服用して成長ホルモンの分泌が増えて成長が促進したという科学的データが、信頼できる学術雑誌に報告されたことはありません。ほかの成長ホルモンの分泌を促進すると宣伝されている物質に関しても同様です」

これらの結果に衝撃を受けた方も多いのでは? 巷で飛び交う情報に惑わされるのではなく、きちんとした知識を持つことが大事ですね。
(構成・文/横田裕美子)

お話をうかがった人

田中敏章
田中敏章
たなか成長クリニック 院長
東京大学医学部卒業後、神奈川県立こども医療センター、 マニトバ大学、虎ノ門病院、国立小児病院、国立成育医療 センターを経て、2007年、小児内分泌科疾患の専門クリニ ックを開設。第一人者として、低身長などに悩む子どもの治療 にあたっている。
東京大学医学部卒業後、神奈川県立こども医療センター、 マニトバ大学、虎ノ門病院、国立小児病院、国立成育医療 センターを経て、2007年、小児内分泌科疾患の専門クリニ ックを開設。第一人者として、低身長などに悩む子どもの治療 にあたっている。