財産分与の対象はどこまで?財産分与で後悔しないための4つポイント

財産分与の対象はどこまで?財産分与で後悔しないための4つポイント

3、個別の財産を分与する際の注意点

夫婦の共有財産を分与するためには、それぞれの財産ごとに注意すべき点があります。

以下では、不動産、年金、生命保険といった一般的によく問題となる財産を分与する際の注意点を紹介します。

(1)不動産

不動産は、売却して分与する方法と、売却をせずに夫婦の一方が住み続ける方法もあります。売却する場合、一方が住み続ける場合には、不動産会社に依頼して離婚時の評価額を算出します。売却した場合には、売却価格から経費を差し引き、残りを夫婦で分けます。

一方が住み続ける場合には、退去することになる配偶者に対して評価額の1/2を渡すことで財産分与を行います。

しかし、住宅ローンが残っている場合には、このように単純な財産分与をすることが難しい場合も少なくありません。離婚の際にマイホームの住宅ローンが残っている場合、マイホームの売却には住宅ローン債権者の同意が必要となります。

特に、ローンの残額がそのときのマイホームの評価額よりも大きい場合(オーバーローンの状態にある場合)には、残債務を完済しないかぎり売却などについて住宅ローン債権者の同意を得られない可能性が高いことにも注意しておくべきでしょう。

(2)年金(年金分割)

婚姻期間の厚生年金の既存保険料は、夫婦の協力によって支払ってきたものとみなされます。

したがって、夫婦の合意が成立すれば、将来受け取れる年金も婚姻期間中の保険料納付分に相当する金額が、財産分与の対象とすることができます(合意分割制度)なります(分割をしないという合意も可能です)。

具体的な分与の割合は、離婚する夫婦の合意によって定めることができますが、合意がまとまらない場合には一方の申立てによって裁判所に決めてもらうことも可能です。

また、年金分割について夫婦間で合意できなかった場合でも、3号被保険者(扶養家族にはいっているため年金保険料の自己負担がない人)に該当する期間がある人は、3号被保険者に該当していた期間に相当する年金の分割(1/2ずつ)を受けることができます(3号分割制度)。

(3)生命保険・学資保険

生命保険、子供の学資保険(掛け捨てではなく解約返戻金がある保険)も婚姻期間中に加入したものであれば、名義を問わず財産分与の対象となります。

保険金(解約返戻金)の分割をする場合には、保険会社に依頼をして、解約時の払戻金を試算してもらい、解約する場合には、試算結果を基に財産分与を行います。

また、夫婦のどちらか一方が加入し続ける場合は、加入しない方に対して払戻金に相当する金額の1/2を支払います。

なお、夫婦の一方が婚姻前に保険料を支払っていた期間に相当する払戻金額は、財産分与の対象にはなりません。

(4)退職金

退職金は、離婚のタイミングにより財産分与の対象になるかどうかが異なります。

まだ退職金を受け取っていない場合で、定年まであと数年、近い将来必ず退職金を受け取るとみなされるときは、婚姻期間に相当する額が財産分与の対象となります。

既に退職金が支払われてから離婚をする場合には、預貯金や現金などの形で財産として残っていれば財産分与の対象となりますが、すでに使い切ってしまったという場合には、財産分与の対象とすることはできません。

(5)負債

離婚の際に、婚姻生活によって生じた借金がある場合には、それも財産分与の考慮対象となります。負債も貯金などのプラスの財産と同様に夫婦の共同生活に必要なものである限り共有財産の清算にあたって考慮するべきだからです。たとえば、住宅、自動車のローンや生活費のための借り入れなどの負債も財産分与の考慮対象になります。

その他方で、夫婦の一方がギャンブルや遊興費、浪費などが原因で作った借金は、婚姻期間中であっても財産分与の考慮対象とはなりません。これらの負債は婚姻生活のための借金とはいえないため、他方の配偶者に負担を強いることは公平とはいえないからです。

婚姻生活で生じた借金は、一方が主債務者、他方が連帯保証人となっている借金も少なくありません。このような借金が残っている場合には、後のトラブルを予防するためにも特に慎重に対応する必要があります。

4、離婚の財産分与でお困りの時は弁護士に相談

離婚をする夫婦が財産分与をするということは、簡単なことではありません。

婚姻期間中に貯めた預貯金や購入したものであっても、「配偶者には自分の名義のものは渡したくない」と思っている人も少なくないかもしれません。

また、夫婦であってもお互いが管理している財産の詳細をきちんと把握していない場合もあるでしょう。そのため、離婚に伴う財産分与は、離婚して数ヶ月、数年経ってから問題が再燃することも珍しくありません。

さらに夫婦の関係がこじれてしまったことが離婚の原因となっているときには、ふたりでは冷静に話し合いができないということも考えられます。

弁護士にご依頼いただければ、財産の調査、相手方との交渉などの負担の重いやりとりをすべて任せることができます。

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