離婚裁判で財産分与について譲れない!知っておくべき重要ポイント

離婚裁判で財産分与について譲れない!知っておくべき重要ポイント

離婚時には財産分与の話し合いも一緒に行われますが、話し合いではなかなか解決できない場合もあります。配偶者と話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることになりますが、それでも解決できないときには最終的には離婚裁判で財産分与を争っていくことになります。

離婚裁判は初めて経験するという方も多いため、どのような点に気を付けて対応していけばよいのかわからず不安な方も多いでしょう。

今回は、

離婚裁判で必要になる財産分与の証拠とは
離婚裁判で財産分与を争う際の流れ
離婚裁判における財産分与の判例

などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

この記事が、離婚を検討している方々のご参考になれば幸いです。

1、離婚裁判で財産分与を求めるなら「証拠」が全て!

離婚裁判では、自己の主張を裏付ける証拠がなければ裁判官に有利な認定をしてもらうことができません。そのため、離婚裁判においては「証拠」が何よりも重要となります。

以下、財産分与について裁判まで発展する主なケースごとに、そこで必要となる証拠について説明していきます。

(1)特有財産を主張する場合

財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻生活中に築いた共有財産の部分に限られます。「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産」(民法762条1項)については、特有財産として財産分与の対象外となります。

そのため、財産分与の金額を少なくしようとする場合には、相手方が共有財産として主張する財産の全部または一部が特有財産であると主張していくことになります。

たとえば、預貯金に婚姻前に貯めた部分が含まれていることがあります。そのような場合には、過去の預貯金口座の写しや取引履歴などから婚姻時点に当該口座に存在した預貯金残高を立証していくことになります。

ただし、給料の振り込みや生活費の引き落としによって日常的に口座の残高が変動している口座の場合には、特有財産部分と共有財産部分が渾然一体となっていることがあります。そのような場合には、特有財産部分の立証が困難な場合が多いので注意が必要です。

(2)貢献度(寄与度)に応じた財産分与割合を主張する場合

離婚裁判では、財産分与の割合については、原則として2分の1とされています。これは、夫がサラリーマンで、妻が専業主婦であったとしても変わりありません。

ただし、夫婦の一方が資産形成・維持に特に貢献したという事情がある場合には、財産分与の割合が修正される場合があります。

たとえば、株式やFXなどの取引によって資産を増加させたという場合には、その人の特殊な才能によって資産形成をしたという側面がありますので、有価証券の取引報告書などを証拠として提出することで有利な財産分与割合を主張することができます。

また、相手方が著しい浪費によって財産を減少させたという事情がある場合には、相手方の分与割合を少なくすることができる場合があります。この場合の証拠としては、領収書、クレジットカードの取引明細書などを証拠として提出することになります。

(3)相手が資産を隠している

財産分与の主張をする際には、双方が自己の保有する資産を開示したうえで、夫婦の共有財産の総額を計算していきます。「相手方には他にも資産がある」と主張したとしてもそれを裏付ける証拠がなければ裁判官は、その主張を採用してくれません。

離婚裁判では、相手方が任意に資産を開示しない場合や他にも資産が存在する可能性がある場合には、「調査嘱託」や「文書提出命令」という手段を使うことによって明らかにすることができます。 

たとえば、金融機関に調査嘱託や文書提出命令を利用をすることによって、既に開示された預貯金口座以外にも口座があることが判明することがあります。また、証券会社に調査嘱託や文書提出命令等を利用することによって、未開示の有価証券の存在が明らかになることもあります。

(4)扶養的財産分与を主張する場合

扶養的財産分与とは、離婚後に夫婦の一方が経済的に困窮するというような事情がある場合に、扶養名目で行われる財産分与のことです。一般的な財産分与は、「清算的財産分与」と呼ばれるもので、扶養的財産分与はあくまでも補充的な位置づけとなります。

扶養的財産分与が認められるには、扶養の必要性があることと扶養の能力があることを主張立証していく必要があります。扶養の必要性があることについては、所得証明書などによって収入が少ないことを、診断書などによって就労が困難であることなどを立証します。また、扶養の能力があることについては、相手方の所得証明書や源泉徴収票などから十分な所得があることを立証します。

2、離婚裁判で財産分与を争うなら〜知っておくべき財産分与の原則

離婚裁判で財産分与を争うことになった場合には、財産分与の基本的な知識を押さえておく必要があります。

(1)調停前置主義

調停前置主義とは、裁判をする前に、調停手続きを経ていなければならないという制度のことをいいます。離婚などのデリケートな家庭問題については、裁判によって審理する前に、当事者が話し合いによって解決したほうが好ましいという理由から設けられた制度です。

そのため、協議離婚がうまくいかなかったからといって、いきなり離婚裁判を起こしたとしても家庭裁判所の調停手続きに回されることになります。

ただし、相手方が行方不明など話し合いによる解決の見込がない場合には、例外的に調停手続きを経ることなく離婚裁判を起こすことができます。

(2)財産分与の対象

財産分与の対象となる財産は、婚姻生活中に夫婦が協力して築いた「共有財産」に限られます。共有財産にあたる財産としては、以下のようなものが挙げられます。

現金、預貯金
株式や投資信託などの有価証券
不動産
保険の解約返戻金
退職金

(3)財産分与の割合

財産分与の対象となる財産を確定した後は、どのような割合で財産を分与するかを決めなければなりません。離婚裁判の実務においては、財産分与の割合は、原則として2分の1とされています。

専業主婦が財産分与を請求する場合でも、2分の1の割合は変わりません。

ただし、財産分与は、夫婦の貢献度に応じて財産を分与する制度ですので、スポーツ選手や画家など個人の特殊な才能によって財産形成がされたという事情がある場合には、例外的に財産分与の割合が修正されることもあります。

(4)借金がある場合の財産分与の考え方

夫婦のどちらか一方の名義の借金があったとしても、それが夫婦の共同生活から生じた借金であれば財産分与においても考慮することになります。しかし、夫婦どちらか一方が浪費やギャンブルによって借金をしたような場合には、夫婦の共同生活とは無関係な借金ですので財産分与では考慮されることはありません。

財産分与において借金を考慮する場合には、プラスの財産からマイナスの財産を引いた残額を財産分与の対象とするという扱いが一般的です。

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