離婚裁判で財産分与について譲れない!知っておくべき重要ポイント

離婚裁判で財産分与について譲れない!知っておくべき重要ポイント

5、離婚裁判における財産分与の判例

離婚裁判において財産分与が争点となった裁判例としては、以下のようなものがあります。

(1)財産分与の基準時に関する判例(最判昭和34年2月19日)

どの時点の財産を基準として財産分与の対象財産を決定するかについて、判例は、「民法七七一条によつて裁判上の離婚に準用される同法七六八条三項は当事者双方がその協力によつて得た財産の額その他一切の事情を考慮して、財産分与の額及び方法を定めると規定しているのであつて、右にいう一切の事情とは当該訴訟の最終口頭弁論当時における当事者双方の財産状態の如きものも包含する趣旨と解するを相当とする」として、口頭弁論終結時までの財産を考慮すると判断しています。 

もっとも、口頭弁論終結時の財産が基準という意味ではなく、口頭弁論終結時までの財産が考慮されることを指摘したものであり、その後の裁判例を踏まえると、夫婦の協力関係が終了した別居時が基準になると考えられています。

(2)財産分与の割合に関する裁判例(大阪高判平成26年3月13日)

医療法人を経営する夫の財産分与割合が問題となった事案について、裁判所は、原則として、夫婦の寄与割合は、2分の1とするのが相当であるとしながらも、以下のような場合には、例外的に財産分与割合の修正を認めています。

①夫婦の一方が、スポーツ選手などのように、特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが、加齢によって一定の時期以降は同一の職業遂行や高額な収入を維持し得なくなり、通常の労働者と比べて厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合などの事情がある場合

②高額な収入の基礎となる特殊な技能が、婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合

そして、裁判所は、医療法人の経営者である夫は、医師の資格を取得するために婚姻前から個人的な努力をしてきたこと、医師の資格を有し、多くの労力を費やすことによって高額の収入を得ていることを踏まえて、財産分与の割合を「夫:妻=6割:4割」としました。

6、離婚裁判で財産分与を検討したら…弁護士に相談しよう

離婚裁判で財産分与を請求することを検討している方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

(1)財産分与請求調停から依頼できる

財産分与は、離婚裁判で一緒に争われることが多いですが、離婚後に財産分与だけを請求することも可能です。

財産分与は、複雑な法的問題が多く存在する分野ですので当事者同士で不利な合意をする前に弁護士に相談することが重要です。弁護士は、調停や裁判など法的手続きに発展する前の段階から依頼することも可能です。紛争が激化する前に依頼をすることで早期に解決する可能性もありますので、早めに相談をするとよいでしょう。

(2)財産分与請求に必要な証拠を収集

財産分与請求で希望する金額の財産を獲得するためには、ご自身の主張を裏付ける証拠が必要となります。どのような証拠が必要になるかは、対象となる財産や具体的な主張によって異なってきますので、適切な証拠の収集をしていくためには専門家である弁護士にサポートが不可欠となります。

必要十分な証拠をそろえることによってご希望の財産分与請求を実現することが可能になります。

(3)依頼すれば裁判に出席する必要なし

離婚裁判と聞くと、「毎回裁判所に出頭するのが負担」と感じる方も多いでしょう。

弁護士に離婚裁判の手続きを依頼すると、弁護士がご本人に代わって裁判所に出頭することができますので、ご本人は原則として裁判所に出頭する必要はありません。

弁護士から裁判期日の報告を聞いたり、弁護士と必要な打ち合わせをするだけで済みますので、ご本人の負担は相当軽減されるはずです。

(4)除斥期間が近い場合にはすぐに相談を!

離婚後に財産分与の請求する場合には、離婚後から2年という期間制限があります。2年という期間は、離婚後に引っ越しや就職活動などをしているとあっという間に過ぎてしまいます。2年の期限内に調停または審判の申立てをすることによって、期間経過後も財産分与を請求することができますが、手続きに不慣れな方だと申立ての準備に手間取り、期間が経過してしまうリスクがあります。

2年の除斥期間が迫っているという方は、権利を保全するために、すぐに弁護士に相談に行きましょう。

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