財産分与のやり方とは?損しない離婚のための5つのポイント

財産分与のやり方とは?損しない離婚のための5つのポイント

3、財産分与の計算方法

それぞれの資産について、分与の計算方法を説明します。

(1)現金・預貯金

現金や預貯金については、別居時の残高が基準となります。子ども名義の預貯金についても、夫婦の財産を原資として捻出されたものであれば、財産分与の対象に含まれます。

(2)不動産

不動産については、住宅ローンが残っているか否かによって以下のとおり計算方法が異なってきます。

①住宅ローンがない場合

住宅ローンがない場合には、当該不動産の評価額が財産分与の基準となります。 

不動産の評価については、現金や預貯金のような一律の基準があるわけではなく、固定資産税評価額、路線価、不動産会社の査定、不動産鑑定士の鑑定などさまざまな評価方法があります。

評価方法によって不動産の金額は大きく変動しますので、どのような評価方法を採用するかは慎重に判断しましょう。

②住宅ローンが残っている場合

住宅ローンが残っている場合には、不動産の評価額から住宅ローンを控除した金額が財産分与の対象となります。住宅ローンを控除した結果、マイナスになる場合には、当該不動産は、価値がないものとみなして、財産分与の対象から除外されます。

たとえば、3000万円の評価額の建物があり、住宅ローンの残額が3500万円であった場合には、当該建物は価値がありませんので、財産分与の対象外となります。

③不動産購入費を夫婦一方が特有財産で支払いしている場合

不動産を購入する際に夫婦の一方が特有財産から支払いをしていた場合には、財産分与の計算にあたっては、特有財産部分を控除する必要があります。

ただし、不動産は、購入時から価額が変動していることが通常ですので、単純に支払った金額を控除するのではなく、現在の評価額から当時支払った特有財産割合を控除するという方法をとります。

たとえば、5000万円の不動産を購入し、夫が独身時代に貯めたお金から1000万円を頭金として支払ったとします。そうすると、特有財産割合としては、20%になります。現在の不動産の評価額が4000万円であったとすると、夫の特有財産部分は800万円になりますので、3200万円が財産分与の基準となります。

(3)退職金

退職金については、離婚時の年齢によって財産分与の対象となるかどうかが異なってきます。 

既に退職をして現実に支払われた退職金については、当然財産分与の対象に含まれます。

しかし、まだ、退職をしていない場合には、定年が近いなどの退職金が将来支払われる蓋然性が高い場合に限って財産分与の対象に含まれるという取扱いが一般的です。ただし、定年がまだ先という年齢であっても、現在自主的に退職した場合に退職金がいくらになるのか計算が可能な場合には、その金額については財産分与の対象とするという扱いも多くなってきています。

退職金が財産分与の対象に含まれるとしても、財産分与の対象になるのは、あくまでも婚姻期間中に築いた財産の部分になりますので、婚姻前からその会社で働いている場合には、その期間分を控除した部分が財産分与の対象となります。

(4)生命保険

財産的価値のある生命保険についても財産分与の対象に含まれます。生命保険の保険金は事故が生じてから支払われるものですので、事故が生じる前の財産分与の時点では、保険金額ではなく、解約した場合の解約返戻金相当額が財産分与の対象になります。

ただし、財産分与の対象になるのは、あくまでも婚姻期間中に築いた財産の部分になりますので、婚姻前から加入している保険であれば、その期間分を控除した部分が財産分与の対象となります。

(5)その他

婚姻後に犬や猫などのペットを購入した場合には、当該ペットも財産分与の対象に含まれます。ペットの評価は、別居時の時価で行いますので、財産的価値はそこまで大きくはならないでしょう。

しかし、家族同様に生活していたペットをどちらが引き取るかで揉めるケースも少なくありませんので、ペットを引き取る代わりに一定の財産を支払うという取り決めが必要になることもあります。

4、財産分与で少しでも多くもらうためのやり方

財産分与で少しでも多くの財産を分けてもらうためのやり方としては以下のとおりです。

(1)離婚の意思を伝える前に共有財産を洗い出す

財産分与で少しでも多くの財産をもらうために重要となるのが、対象となる財産を漏れなく調査するということです。

婚姻中にお互いの財産をすべて把握しているのであれば問題はありませんが、多くの夫婦は、お互いにどのような財産を保有しているかを正確に把握しているということは少ないでしょう。そのため、相手が隠している財産があったとしてもそれに気付かずに財産分与を進めてしまうということもあります。そうすると本来得られたであろう財産に比べて低い金額しかもらうことができません。

離婚の意思を伝えた後では、相手も警戒して財産を開示してくれないこともありますので、離婚を検討している方は、相手に離婚の意思を伝える前に相手の保有している資産を調査することをおすすめします。

(2)財産分与の増額を離婚の条件にしてもらう

財産分与の割合や金額については、夫婦が話し合いによって自由に決めることができます。

相手から離婚を求められており、早期に離婚をすることを望んでいるという場合には、離婚に応じる代わりに財産分与の金額を増額してもらうように交渉してみるとよいでしょう。

話し合いで離婚が成立しなければ、調停や裁判を行わなければならず、離婚理由によっては、裁判をしても離婚が認められない場合もあります。どうしても離婚をしたいと迫られている場合には、有利な離婚条件を引き出すことができる可能性もありますので、相手の申し出にすぐに応じるのではなく、慎重に交渉を進めていくようにしましょう。

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