訴訟を起こす方法は?メリット・デメリットや費用についても解説

訴訟を起こす方法は?メリット・デメリットや費用についても解説

5、訴訟を起こした後の流れ

訴状提出、つまり訴訟を起こす手続きが済むと「裁判期日」が指定されます。流れとして、第1回口頭弁論期日だけで済む場合もあれば、続行期日が指定される場合もあるでしょう。各期日では原告と被告(もしくは各々の代理人)が出席し、双方主張・反論したり証拠を提出したりします。

このようにして最終弁論期日から判決言渡しへと向かい、判決後期限までに控訴・上告がないと、判決が確定することになります。

(1)第1回口頭弁論期日の指定・呼出

提出した訴状や添付書類に問題がなければ、裁判所から原告もしくは代理弁護士に電話がかかってきて、第1回口頭弁論期日の日程を調整します(民事訴訟法139条)。規則上は訴状提出から30日以内が原則とされていますが(民事訴訟規則60条2項)、実務上は1ヶ月半から2か月程度先に指定されるケースが多くなっています。

その後、被告(=訴えられた側)にも訴状副本と呼出状がセットで送付され、期日に裁判所に来るよう促されます。

(2)答弁書の提出(~第1回口頭弁論期日)

第1回口頭弁論期日に被告が現れないのはよくあることですが、事前に答弁書が提出されていればその記載内容を期日において陳述したものとみなされます(民事訴訟法158条)。このことを「擬制陳述」といいます。

その場合、出頭した原告またはその代理弁護士は訴状の内容を陳述し、その期日の手続きは終了となります。

(3)続行期日・弁論準備手続期日

事案の内容によりますが、第2回目以降の「口頭弁論期日」や「弁論準備手続期日」が指定される場合があります。期日指定のペースは概ね1か月に1回程度です。

裁判期日を重ねていくごとに、双方の反論・再反論をまとめた「準備書面」や証拠が提出され、それを裁判所が精査することによって争点が整理されていきます。

なお、第2回目以降の期日は、「関係者の距離を縮め、より踏み込んで話し合い、柔軟なやりとりができるように」との考えから、小部屋で1つのテーブルを囲む「弁論準備手続」に付されることが一般的です。弁論準備手続は口頭弁論とは異なり、非公開の手続きとされています。

(4)和解協議

双方の書面による主張・立証が尽くされ、争点も整理され、裁判所がその事件の行方についてある程度の心証を抱いた段階で、和解協議が行われることも多くあります。当事者から和解の希望が出ることもあれば、裁判所から当事者に対して和解を打診することもあります。

当事者が裁判所を介して協議した結果、妥協できるポイントが見つかり合意に至れば裁判上の和解が成立し、訴訟手続はそこで終了です。この場合は「和解調書」が作成され、和解の条件となる支払条件等が記載されます。本書面は確定判決と同じ力を持つため(民訴法第267条)、判決言渡しを迎えた場合と同様に、強制執行申立ての条件が整ったことになります。

(5)証拠調期日

和解が成立しないか、和解協議が行われない場合は、いったん口頭弁論の手続きに戻された上で、証拠調期日が指定されます。第三者である証人の話を裁判所に直接聞いてもらったり(証人尋問)、当事者が裁判所の目の前で改めて事実を述べたり(原告・被告の本人尋問)、というように、「人」の供述による証拠を裁判所に取り調べてもらうための期日です。

希望する際は、証明すべき事実等を記載した「証拠申出書」を提出します。尋問の前には、その人が述べることをまとめた「陳述書」をあらかじめ提出することが一般的です。

当日は当事者の一方による①主尋問、②相手方による反対尋問、③申請した側による再主尋問、必要な場合に④裁判所による補充尋問が行われます。時間がある程度限られているので、言いたいことを簡潔にまとめておかなくてはなりません。

(6)判決言渡し

以上の手続きがひと通り終了した後、再度、和解協議が行われることも多くあります。この段階でも和解が成立しなければ弁論手続きは終結となり、判決言渡期日が指定されます。

ただし、弁論手続き終結の前にもう一期日だけ、当事者双方が事実や意見をとりまとめて記載した「最終準備書面」を提出するための口頭弁論期日が指定されることも少なくありません。弁論終結から判決言い渡しまでの期間は、事案にもよりますが、一般的な民事訴訟で2ヶ月前後が一般的です。

(7)控訴・上告

判決言渡しと言っても、その期日に確定(=判決の効力が発生)するわけではありません。判決正本を受け取ってから2週間以内なら、納得できないとして上級裁判所に訴える控訴・上告が可能です(ただし、裁判の種類によってはこのような上訴の制度がないこともあります。)。

6、訴訟を起こすことは自分でもできる?

理屈の上だと自力で訴訟を起こせますが、デメリットで解説した「面倒さ」は想像を絶するものです。トラブル自体は明快であっても、なるべく弁護士に依頼し、代理人として一切の手続きを進めてもらうことをお勧めします。

(1)訴訟手続きを自分でやる難しさ

訴訟を自力でやるとなると、やはり自分で事案別に異なる必要書類を調べ、収集しなくてはなりません。訴訟手続の進行中も、期日が指定される度に「また書類を用意して裁判所に足を運んで、しかも同じことを繰り返し言わなくはならないか」と疲弊するでしょう。少しでも対応を誤れば長期化や不利な判決に繋がり、数ヶ月から1年以上に渡って気の抜きどころのない生活を強いられます。

上記のような訴訟の実態は、たとえ自分の方が有利であるとしても、一般の人の手にはとても負えないものではないでしょうか。

(2)弁護士に訴訟提起を依頼するメリット

自力で訴訟を起こす場合と違って、弁護士に依頼した場合は「必要最低限の書類を集めて打ち合わせ、あとは報告を待つだけ」になります。訴訟代理権において、必要書類の判断からその収集・提出、期日の対応、そして有利な点は最大限生かす対応を取ってもらえるのです。

弁護士の的確な対応は、解決のスピード化にも繋がります。加えて、判決後に必要な強制執行手続き(差押え等)を含めてアフターケアを受けられる点でも、安心感は全く異なります。

(3)訴訟にかかる弁護士費用の相場

弁護士に訴訟提起を依頼する際には、「着手金」および「成功報酬」と相談料や実費、弁護士の日当などが必要となります。

着手金は、弁護士が仕事に着手するためにかかる費用であり、結果にかかわらず原則として返金されることはありません。一方、成功報酬は弁護士の事件処理によって得られた成果に応じて発生する費用です。

弁護士費用の決め方は法律事務所によって異なりますが、民事の訴訟案件における着手金については請求する金額に応じて、成功報酬については得られた経済的利益の額に応じて、それぞれ一定のパーセンテージを掛けて計算されるのが一般的です。

一例として、貸金返還請求訴訟(貸したお金を返してもらうための訴訟)を想定し、300万円の回収に成功したとしましょう。この場合の着手金および成功報酬としては、一例として以下のように経済的利益(300万円)に一定のパーセンテージをかけて計算することが多いです(下記は、あくまで例であり、弁護士費用の定め方は、法律事務所によって異なります。)。

着手金:300万円×8%=24%
成功報酬:300万円×16%=48万円

上記の仮定計算では合計で72万円ですが、消費税を加算すると79万2,000円となります。あくまでイメージとしてご理解いただければと存じます。

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