個人事業主の離婚で財産分与の範囲とは?損しないための5つのこと

個人事業主の離婚で財産分与の範囲とは?損しないための5つのこと

3、妻とともに個人事業を営んでいた場合の財産分与の注意点

会社または法人の資産については、原則として財産分与の対象にはなりません。しかし、その実態が個人経営・家族経営の域を出ないことが明らかな場合には、例外的に、財産分与の対象に含まれる場合があります。

たとえば、ともに医師である夫婦が長年にわたり医療に従事して医療法人を運営してきたという事案において、裁判所は、離婚に伴う財産分与において医療法に基づいて設立された医療法人であっても、夫婦の出資持分以外の医療法人の資産も財産分与の対象に含めて判断しています(大阪高判平成26年3月13日)。

このように、事業用財産と個人用財産が明確に区別されていない場合には、法人化したとしても事業用財産が財産分与の対象となる可能性が高くなります。そもそも、妻とともに経営していたのであれば、財産分与に関するトラブルを可能な限りおさえるという意味でも、事業用資産を一定割合分与するという気構えが欲しいところです。適切な財産分与の方法を検討するにあたっては、弁護士に相談をすることによって、妥当な分与割合が見えてくるでしょう。

4、個人事業主の離婚において財産分与で揉めた場合の対処法

個人事業主が離婚時の財産分与で揉めた場合には、以下のような対処をするとよいでしょう。

(1)財産分与調整手段としては「調停」と「裁判」がある

財産分与については、夫婦が離婚をする際の条件として話し合いをするのが一般的です。しかし、個人事業主の財産分与は、対象財産の選定が複雑になることもあり、話し合いでは解決しないことも少なくありません。 

話し合いで解決することができなければ、次の段階として、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることによって解決を図ります。離婚調停は、2名の調停委員が当事者の間に入って紛争解決に向けて調整を行ってくれます。当事者同士で話し合いをするよりかは冷静に話し合いができますので、円満な解決ができる可能性が高い手段といえます。

しかし、調停手続きもあくまで話し合いの手続きですので、当事者が離婚や財産分与の条件に合意しなければ解決することはできません。その場合には、最終的に離婚裁判を起こして裁判官に判断をしてもらうことになります。

(2)弁護士を入れた協議がおすすめ

調停や裁判は、調停委員や裁判官が第三者として夫婦間の問題を判断する手続きになります。第三者として公平に判断を下すためには、夫婦間の出来事を詳細に主張し、それを裏付ける証拠も提出しなければなりません。

しかし、お互いに主張や立証を繰り広げていくのは、感情的な対立を生み、争いが長期化することにもなりかねません。主張や証拠の提出の準備をするだけでも相当な時間と労力を要する作業ですので、簡単な手続きではありません。

そもそも、財産分与は夫婦間で決められる問題です。二人で話し合いがうまくいかない場合には、あなたの味方となる弁護士をつけ「交渉」をスムーズに行うことが、最も迅速で有益な結果に繋げられる手段だといえるでしょう。

(3)まずは離婚だけしてしまうことも可能

「財産分与の話し合いがまとまらず、なかなか離婚することができない・・・」などとお悩みの方も少なくないでしょう。実は、財産分与の話し合いがまとまらなくても離婚をすることは可能です。

夫婦間で離婚をすることについて合意ができているのであれば、離婚の手続きを先行して行うということも一つの方法です。離婚をしたら財産分与ができなくなるということはありませんので、妻側にも離婚後2年以内であればいつでも財産分与を請求することができる旨伝えて、先に離婚をしてもらえるよう説得してみるとよいでしょう。

離婚をすることによって、自治体から各種補助も受けられますので、経済的に余裕が得られる可能性もありますので、妻側としても離婚を先行させるメリットは小さくないはずです。

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