共有財産とは?離婚時の財産分与でもらえる財産はどこまでかを解説

共有財産とは?離婚時の財産分与でもらえる財産はどこまでかを解説

3、共有財産に当たるものと当たらないもの

以上のように、共有財産に当たるものは財産分与の対象となり、特有財産に当たるものは財産分与の対象から除外されます。そのため、離婚の話し合いをする際、夫婦の財産が共有財産に当たるのかどうかが争われるケースが少なくありません。

ここからは、共有財産に当たるものと当たらないもの(特有財産に当たるもの)について整理していきましょう。

(1)共有財産の例

共有財産に当たるものの具体例として、主に以下のものが挙げられます。

①婚姻後に貯めた預貯金

婚姻中に貯めた預貯金は、その名義が夫婦のどちらのものであっても財産分与の対象となります。婚姻関係にあっても夫婦それぞれが生活費を一定金額ずつ捻出していたり、家庭に入れる生活費以外のお金は自由に使って問題ないという夫婦のルールを作ったりしている夫婦がいますが、このような場合でも婚姻後に貯めた預貯金は財産分与の対象となります。

②土地、建物等の不動産

婚姻中に夫婦の収入で取得した土地、建物等の不動産は、夫婦のいずれか一方の名義になっているものでも財産分与の対象となります。不動産については査定を取り評価額を算出して分与することが多いですが、不動産の金額は大きいため財産分与の主要な争点の一つとなるケースが少なくありません。

夫婦のどちらが不動産を取得するか、それともすべて不動産を売却し金銭での財産分与とするか等、不動産については慎重に検討していく必要があります。

②家財道具

婚姻中に購入した家具、家電等も共有財産に当たり、財産分与の対象となります。高級な家具はそれ自体で何十万、何百万といった値がつくものがありますので、婚姻中に購入したもののリストを作る等して、漏れがないように確認していきましょう。

③車、宝石類

婚姻中に購入した車や宝石類も財産分与の対象となります。売却する場合、売却に要する費用を差し引き、残った金額を分配することが多いです。他方、売却をしない場合は、査定を依頼し評価額を分配して、取得する側が取得しない側に金銭を支払う形をとることが一般的です。

ただし、宝石や貴金属類については、夫婦の一方の専用とする合意をした場合や、贈与を受けたといえる場合には、特有財産となりえます。

④有価証券

婚姻中に夫婦の収入の中から購入した有価証券も、共有財産として財産分与の対象となります。有価証券はタイミングによって価格が大きく異なりますが、公開株式等であれば離婚が成立するタイミングの時価を基準に評価します。

⑤保険(解約返戻金が生じるもの)

婚姻中、生命保険や学資保険の保険料を家計から支払うことがありますが、これらについても財産分与の対象となります。子どもがいる家庭では、万が一の場合に備えてこれらの保険への支払いを婚姻中継続して行っている人が多いでしょう。

保険会社に連絡をすればその時点での解約返戻金の額がわかりますので、その額を元に分配します。離婚することによって保険料の支払いやその受取人に変更が生じる場合は、保険会社に連絡をしましょう。

⑥ローンなどの負債

住宅ローンや学資ローンなど、夫婦双方のための借り入れによる負債は財産分与にあたって考慮の対象となります。たとえば、不動産の多くは購入した瞬間を境に価値が目減りしていくものがほとんどです。そのため、住宅ローンについては、離婚の合意をしたときの評価額を算定し、そこから住宅ローン残元金額を控除して財産分与の計算をします。このように、ローンを半分ずつ負担するわけではないことは注意が必要です。

(2)特有財産の例

共有財産に当たらず、特有財産に当たるものの具体例として、主に以下のものが挙げられます。

①婚姻前に貯めていた預貯金

婚姻前に夫婦の一方が貯めていた預貯金は、夫婦が協力して形成した財産ではありませんので特有財産となり、財産分与の対象となりません。通帳や取引履歴等には日付が印字されていますので、日付をもとに婚姻前に貯めていた預貯金額を確認しましょう。ただし、離婚時まで預貯金が維持されていたことの証明が必要です。

②夫婦の一方がその親族から相続した財産

婚姻中、夫婦の一方がその親族から財産を相続することがありますが、これは夫婦が協力して形成した財産ではないので、財産分与の対象となりません。夫婦の一方がその親族から相続した財産は、夫婦が婚姻関係にあることとは関係なく得られたものなので、夫婦の一方に財産を維持・処分する権限が委ねられています。

③夫婦の一方が贈与を受けた財産

婚姻中、夫婦の一方が贈与によって受け取った財産も特有財産であり、財産分与の対象となりません。例えば、夫婦の一方がその親族から生前贈与として不動産を譲り受けた場合、この不動産は特有財産となります。

④別居後に夫婦それぞれが取得した財産

別居開始後は夫婦が協力して財産形成しているわけではないので、別居後に夫婦それぞれが取得した財産は財産分与の対象となりません。夫婦が協力して財産形成の準備をしたものの、財産を得たタイミングがたまたま別居開始後になったようなケースでは、その財産の形成準備が婚姻中(同居中)に行われたことを立証していく必要があります。

⑤第三者名義の財産

第三者名義の財産は財産分与の対象となりません。たとえば、夫が会社を経営しており会社名義の自動車や不動産がある場合でも、これらの会社名義の財産は夫婦の共有財産とはなりません。ただし、子供名義の預貯金は夫婦の共有財産となる場合があります。

⑥年金

年金についても財産分与の対象となりません。ただし、年金については「年金分割」という方法により夫婦で分割することがあります。年金分割とは、離婚した場合に夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。すなわち、厚生年金(共済年金)の年金保険料のうち、婚姻中に夫婦が納めた実績に応じて夫婦で年金を分割することができます。

年金の分割は、原則として、離婚をした日の翌日から2年を経過すると請求できなくなります。

参照:法務省

4、これも共有財産?財産分与をする際の注意点 

共有財産と特有財産の区別については上記のように判断基準がありますが、全てを明確に区別できるわけではありません。中には共有財産に該当するのか判断が分かれる財産もあります。共有財産に該当するかどうかを判断する際は以下の点に注意しましょう。

(1)借金は財産分与すべき?

婚姻前からの負債については、夫婦の婚姻生活とは関係がありませんので、財産分与の対象となりません。例えば婚姻前に借り入れをした奨学金や消費者金融への負債が残っていても、この負債は借り入れをした本人が返済すべきものであり、配偶者が返済するものではありません。

一方、婚姻後、婚姻生活のために形成された借金は財産分与の対象となります。ただし、婚姻後の借金であっても、ギャンブル等個人的な理由で形成した負債は財産分与の対象となりません。キャンブル等の負債は婚姻生活とは関係なくあくまでも個人が負った負債であるためです。

なお、住宅ローンが残っていてオーバーローンとなっている場合は注意が必要です。オーバーローンとは、住宅を売却しても住宅ローンの残債務を完済できていない状態のことです。

オーバーローンの場合、実務上は、住宅を取得した夫婦の一方がローンを負担し、オーバーローンの部分は他の財産を清算する中で調整するという処理がなされることが多いです。

先ほども説明した通り、借金の財産分与という意味は、借金を半分ずつ返済するということではなく、財産分与にあたり債務の金額をプラスの資産の額から控除することをいいます。

(2)退職金はどのように分ける?

退職金については、近い将来支払われることが高い確率で見込まれる場合には、財産分与の対象となることがあります。ただし、退職金として支払われる金額が全て財産分与の対象となるのではなく、婚姻期間(退職金の形成に夫婦の協力が影響を及ぼした期間)に応じた金額が財産分与の対象になると考えられています。

退職金を財産分与の対象とするためには、以下の記事もご参照ください。

(3)ペットはどちらが引き取る?

婚姻中に飼い始めたペットについては「物」として扱われ財産分与の対象となります。ペットについては2つに分けることができないので、引き取る側がそれ相応の金銭を相手に支払う等の財産分与方法になるケースが多いです。なお、婚姻前から夫婦の一方が飼っていたペットについては、当初から飼っていた側の特有財産に当たるため、財産分与の対象となりません。

ペットは子どもとは異なり「親権」という概念がありません。婚姻後から買い始めたペットに対しては夫婦双方が愛情を注いでいるケースが多く、離婚時に夫婦のどちらがペットを引き取るのかについてもめることも少なくありません。離婚を希望するもののどうしてもペットを引き取りたいと考えている方は、以下の記事もご参照ください。

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