共有財産とは?離婚時の財産分与でもらえる財産はどこまでかを解説

共有財産とは?離婚時の財産分与でもらえる財産はどこまでかを解説

5、特有財産でも財産分与の対象になることも!

上記のように、共有財産は財産分与の対象となり、特有財産は財産分与の対象となりません。しかしながら、特有財産として扱われるものであっても、その後の財産の維持方法等により、実質的に共有財産として財産分与の対象になることがあります。以下のケースを確認していきましょう。

(1)共有財産に変わるケースの例

夫婦の一方の特有財産であっても、他方の配偶者がその財産を維持するために協力し、実質的には共有財産として評価すべき事情があるときは、例外的に財産分与の対象になるとされています(東京高等裁判所昭和55年12月16日判決)。共有財産として考える場合、財産を維持したことに対する貢献割合に応じて財産を分けることとなります。

たとえば、夫が相続で不動産を譲り受けたものの、妻が時間と労力を費やしてその不動産の維持・管理に貢献していたケースでは、当該不動産が共有財産となる可能性があります。特有財産と扱われているものを共有財産として主張するためには、財産の維持・管理にどの程度貢献したかを主張立証していく必要があるでしょう。

また、結婚前に持っていた預貯金は特有財産ですが、この貯金を婚姻生活で使った場合は注意が必要です。婚姻期間(同居期間)が長くなると結婚前の預貯金と結婚後の預貯金が渾然一体となりがちです。このような場合、結婚後の配偶者の収入によって、結婚前の預貯金が減少した分が補填されたと考えられるため、結婚前の預貯金額をそのまま特有財産として主張することは認められなくなる可能性が高いといえます。

(2)共有財産か判断しがたいときの対処法

共有財産と特有財産のどちらに該当するかについて、どうしても判断しがたいときの対処法については、民法に規定があります。

婚姻生活中に夫婦のどちらが取得したものか不明の場合、共有財産として推定されるのです。すなわち、「共有財産ではない」との反証がなされない限り共有財産として取り扱うことになっています(民法762条2項)。

したがって、特有財産であることを主張したい場合は、特有財産であることを主張立証していくことが必要となります。

6、財産分与で損しないためのポイント 

財産分与は離婚後でも一定期間内であれば請求できますが、離婚してから時間が経ってしまうと公平な財産分与を実現することは難しくなりがちです。離婚から時間が経つにつれ、財産分与の対象となる共有財産の範囲を把握することも困難になるでしょう。

後悔しないためには、離婚成立前に以下の点を十分確認してから財産分与の取り決めを行うことが大切です。

(1)相手に隠し財産がないかを調査する

相手の財産について一番把握しやすいのは相手と同居しているときです。別居後はなかなか相手の財産について把握できる機会がありませんので、裁判をしない限り調査が難しくなります。

相手の給料や社内預貯金についてはもちろんのこと、相手名義の株式投資や保険会社の年金積立などは見落としがちです。同居中にできる限り相手の財産を把握しておきましょう。

また、共有財産として主張するためには証拠が必要であり、証券口座や保険の証券に関する情報なども重要となりますので、給料明細や関係書類のコピーをとる等して保管しておきましょう。

離婚の話が本格化する前や別居前の段階で、書類の把握含め相手に隠し財産がないかを調査してください。

(2)合意ができたら公正証書を作成する

財産分与や慰謝料について相場や判断基準はありますが、最終的には夫婦の合意により取り決めを行います。夫婦で合意した内容は、口約束で終わらせず公正証書の形で残すようにしましょう。

公正証書は、公証役場で公証人により作成される公文書です。公正証書に残しておけば、離婚時の取り決め内容を離婚後でもお互いに確認することができます。

また公正証書に残しておくことで「そんな話は聞いていない」「その金額では合意していない」等の言い分に対して対抗することができます。

また、離婚後、離婚時に取り決めた金銭の支払いが滞る可能性があります。

その際、強制執行認諾文言が付されている公正証書があれば、裁判をせずに強制執行手続きを申立て、相手の財産を差し押さえることが可能となります。

離婚の話し合いをしている際は、配偶者のことを信頼し「公正証書までは作成しなくてもいい」と安易に考える人がいますが、離婚後に元配偶者の態度が大きく変わることは珍しくありません。信頼できる配偶者であったとしても、万が一に備えて公正証書を作成しておくことをおすすめします。

(3)法的手続きも視野に入れる

財産分与に関する話し合いがまとまらない場合、いつまで経っても離婚できないことにもなりかねません。

夫婦だけの話し合いで合意できない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停手続きの中で財産分与について話し合うことも可能です。調停でも合意できない場合には離婚訴訟を提起し、判決による強制的な解決を図ることになります。

(4)期限内に財産分与を請求する

離婚時に財産分与を請求し忘れたケースや、早く別れたい一心で財産分与の取り決めをせず離婚したケースもあるものです。

財産分与の請求は、離婚後でも可能です。財産分与を請求できるのは離婚したときから2年以内と決まっていますので、必ず期限内に請求するようにしましょう(民法第768条2項ただし書き)。

離婚から2年と聞くと時間に余裕があるように感じられるかもしれませんが、離婚後は生活が一変するためあっという間に2年が経過してしまうことは珍しいことではありません。財産把握の調査にも時間を要しますので、早めに動いていきましょう。

また、離婚後は相手と離れるため連絡が取りづらくなるケースがありますが、そうすると財産の把握は困難となります。

離婚の話し合いをしているときはお互いに意思疎通を図ることができても、離婚後は赤の他人のようになり連絡しても返事がない関係性になる可能性があります。できる限り離婚時に財産分与の取り決めをしっかり行っておきましょう。

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