育児休業給付金の支給条件
育児休業中は、勤務先の会社から給料が支払われないケースが大半です。そんななか、お金の心配をせずに育児に専念できるよう国から支給されるのが「育児休業給付金」です。
通称「育休手当」とも呼ばれる育児休業給付金について、まずは支給対象者や条件を見ていきましょう。育児休業中は、勤務先の会社から給料が支払われないケースが大半です。そんななか、お金の心配をせずに育児に専念できるよう国から支給されるのが「育児休業給付金」です。
通称「育休手当」とも呼ばれる育児休業給付金について、まずは支給対象者や条件を見ていきましょう。
支給対象になる人
育児休業給付金は、雇用保険の被保険者で、育児休業を取得している人であれば男性・女性を問わず受給できる給付金です。正社員だけでなく、条件を満たせば派遣やパートなどの有期雇用契約者も同様に受け取れます。
雇用保険の被保険者であることが前提となるため、経営者や自営業者などの雇用されていない(雇用保険に加入していない)人は対象外です。
また、育児休業給付金は育児休業が終わった後、職場へ復帰することを前提とした給付金です。育児休業を取得した時点で退職が決まっている人は、支給対象にはなりません。
満たす必要のある条件
育児休業給付金の受給には、雇用保険に入っている以外にも、一定の条件を満たす必要があります。具体的には次の2つです。
・育児休業を取得している(1歳未満・条件によっては2歳未満の子どもを養育している)
・産前休業が始まる前の日から過去2年間に、11日以上または80時間以上働いた月が12カ月以上ある
1歳未満の子どもを養育するために、育児休業を取得していることが条件です。子どもがいても、育児休業を取得していない場合は支給の対象にはなりません。
基本的に育児休業を取得できる期間は、子どもが1歳になる前日までです。ただし、パパ・ママ育休プラス制度を利用した場合は1歳2カ月まで、保育所に入れない場合は最長2歳まで延長できます。
就業日数・時間の条件については、2021年9月から緩和されています。
これまでは、育児休業開始の前日からのカウントでしたが、産前休業が始まる前の日に変更されたことで、出産・育児に備えた休業があった場合でも支給対象となる可能性があります。
自身が対象になるか分からない人は、会社やハローワークに確認してみましょう。
参考:令和3年9月1日から、育児休業給付に関する 被保険者期間の要件を一部変更します|厚生労働省
2022年10月からの改正ポイント
2022年10月1日に施行された改正育児・介護休業法では、男性が育児休業を取得しやすい制度が定められました。
・育児休業の分割取得
・産後パパ育休(出生時育児休業)
主な変更点は、以前は分割取得できなかった育児休業が2回までに分けて取得できるようになったことと、子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得できる「出生時育児休業制度」が創設されたことの2点です。
この改正により、男性の育児休業取得の促進が期待されています。
参考:令和4年10月から育児休業給付制度が変わります|厚生労働省
育児休業給付金の内容
育児休業給付金の支給期間や額は、人によって異なります。自身の条件をしっかり確認しておきましょう。
出産や育児は予定通りにいかないこともありますが、制度上の決まりを目安にすると、収入を予想しやすいはずです。
支給期間
育児休業給付金の支給期間は、育児休業の期間と同じなので「育児休業を開始した日から子どもが1歳になる誕生日の前日まで」が基本です。
子どもが1歳になる前に職場に復帰した場合は、復帰の前日までが支給対象の期間となります。
原則は1歳になる前日までですが、保育所に入れなかった場合は最大2歳までの延長が可能です。
また、出産した母親と父親では育児休業の開始日が異なるため、支給期間も異なる点についても注意しましょう。
母親は産前産後休業からそのまま育児休業に入るケースがほとんどで、育児休業開始日は出産日から58日目となります。
一方、父親に産前産後休業はないため、配偶者が出産した当日または出産予定日から支給が始まります。
支給額
育児休業給付金の支給額は、以下の計算式で算出できます。
・育児休業開始から180日目まで
休業開始時賃金日額×支給日数×67%
・育児休業開始から181日目以降
休業開始時賃金日額×支給日数×50%
「休業開始時賃金日額」とは、育児休業が始まる前日から6カ月間に支払われた総賃金(※臨時の手当や3カ月以上ごとの賃金を除く)を180で割った金額です。上限額は1万5190円・下限額は2657円と定められています。
育児休業開始前6カ月間の総支給額が120万円(月20万円)だった場合を例に、30日あたりの支給額を計算してみましょう。
・120万円÷180日×30日×67%=13万4000円
育児休業開始から180日目までは、毎月13〜14万円が支給されるということです。181日目からは、月に約10万円が支給されます。
※賃金の支払い対象となる日数が11日以上ある月が6カ月未満だった場合、賃金の支払い対象となる時間が80時間以上あった月6カ月に支払われた総賃金で計算する。
育児休業給付金の申請方法
育児休業給付金は、初回と2回目以降で申請に必要な書類が異なる点に注意が必要です。
勤務先の担当部署に申請したい旨を申し出るのが一般的ですが、勤務先の所在地を管轄するハローワークに個人で申請することも可能です。
初回申請の場合
育児休業給付金を初めて申請するときは、次の書類を用意して育児休業の開始日から4カ月後の末日までに手続きを済ませる必要があります。
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・育児休業給付受給資格確認票
・育児休業給付金支給申請書
・賃金台帳や労働者名簿・出勤簿・タイムカードなど、勤務状況と支払われた賃金について確認できるもの
・母子手帳をはじめ育児をしている事実や出産した日付が確認できるもの
「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」「育児休業給付受給資格確認票」「育児休業給付金支給申請書」は会社側が用意するため、個人で申請する場合は必要書類を会社に請求しましょう。
2回目以降の申請の場合
育児休業給付金の申請は、原則として2カ月に1回行う必要があります。ただ、 2回目以降の申請は初回よりも簡単で、必要な書類も多くありません。
・育児休業給付金支給申請書
・賃金台帳・労働者名簿・出勤簿・タイムカードなど、勤務状況と賃金が確認できるもの
育児休業給付金支給申請書は、前回の申請手続きを済ませた後にハローワークから交付されます。2回目以降の申請は、対象期間の支給開始日から4カ月後の末日までに済ませましょう。
出生時育児休業給付金の場合もチェック
産後パパ育休の期間中に受け取れる「出生時育児休業給付金」の受給にも、育児休業給付金と同じように申請する必要があります。
必要書類は、申請書のほかは育児休業給付金の初回申請と同じです。
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・育児休業給付受給資格確認票
・出生時育児休業給付金支給申請書
・賃金台帳・労働者名簿・出勤簿・タイムカードなど、勤務状況と賃金が確認できるもの
・母子手帳をはじめ、出産した日が確認できるもの
出生時育児休業給付金の申請期限は、子どもが生まれた日の8週間後の翌日から2カ月後の末日です。
育児休業給付金の疑問
育児休業給付金の取得にあたって多くの人が抱える疑問についても、解消しておきましょう。知らないとのちのち困る可能性もあるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
育児休業中に働いてもいい?
育児休業中に働く可能性がある場合、育児休業給付金を受け取るには次の要件を満たしている必要があることに注意しましょう。
・対象期間(育児休業開始日から1カ月ごとの期間)のなかで、就業したのが10日または80時間を超えていない
・対象期間のなかで、休業開始時賃金日額×支給日数の80%以上の賃金が支払われていない
10日または80時間を超えて働いていたり、休業開始時賃金日額×支給日数の80%以上の賃金が支払われていたりする場合は、育児休業給付金は受給できません。
育児休業中に働くこと自体は問題ありませんが、育児休業給付金を受給したいなら支給要件を満たす働き方に調整する必要があります。
なお、賃金が休業開始時賃金日額×支給日数の80%未満の場合は、給付金と賃金の差額が支給されます。
育休に入ったらすぐ支給される?
育児休業給付金は、育児休業を開始した後2カ月が経過してからハローワークに申請します。
ハローワークが申請書を受理したら給付のための審査や手続きが行われ、交付日が決定してから1週間をめどに入金される流れです。
事業所とハローワークを通して手続きが進むため、処理に時間がかかるケースも少なくありません。育休開始と同時に振り込まれるわけではないので、産後数カ月の間は生活できるだけの貯蓄を用意しておきましょう。
まとめ
育児休業給付金は、子育てを頑張るママ・パパを応援する頼もしい制度です。お金の心配をせず子育てに集中するためにも、制度の対象や内容をしっかり理解して申請しましょう。
基本的に所属する事業所が申請してくれるため、前もって会社に申請したい意思を伝えておくとスムーズです。ギリギリになって慌てたり準備不足で需給できなかったりといった問題が起こらないよう、早め早めの準備を心がけましょう。