急死した夫、最も困ることとするべき手続きは?葬儀の専門家に聞いた

第1回 夫の急死で起こること
誰しもいつかは死が訪れます。若くて元気なうちは、なかなかリアルに感じることができないものですが、ある日突然、パートナーを失う不幸に遭う可能性もゼロではありません。実際、厚生労働省の人口動態統計月報年計によれば、平成26年の30代40代の死亡数は5万3405名に上り、若年層といえども他人事ではないようです。

もしも子育て世代のママたちが、夫を急に亡くしてしまったら、どんな変化が起き、どんなことに困るのでしょうか。終活カウンセラーの武藤頼胡さんに聞きました。

●夫の急死で暮らしと将来設計が突然崩れる悲劇

武藤さんいわく、パートナーを急に亡くすことは、あらゆる面でかなりの打撃になってしまうそう。

「まず、一番大きなダメージになるのが、いままでの生活がガラッと変わり将来設計が白紙になってしまうことです。平均寿命に近い年齢になれば、自分も含めパートナーに対してもある程度『死』ということを意識し始めるので、人生の終わりに向けて準備も整えようとするものです。しかし、若年であれば当然ながら将来のことを夫婦ふたりで話し合ったり、考えたりしていますので、そうした計画が崩れてしまうということは、突然生きる糧を失うということになります」(武藤さん、以下同)

とくに、若いうちは死んだ後のことについて話す機会は少ないものです。病気などで死について考える時間があれば別ですが、急死となると心の準備だけでなく、将来のことまで考えがいたらないこともあるはずです。

夫の急死で変わること、最も困ることとは?

●夫の急死による生活の立て直しは速やかに行う

また、将来のこともさることながら、気になるのは当面の生活。収入の柱だった夫が亡くなれば、急激に困窮してしまうことも考えられますが…。

「ケースにもよりますが、故人が一般的な企業にお勤めであったり、生命保険に加入していたりすれば、突如明日をも知れぬ生活に陥るといったことは考えにくいです。生命保険は契約内容にもよりますが、契約者の死後5日ほどで数千万近いお金が入ることになります。また、遺族年金も支払われることになりますので、明日からのお金に困るということはあまりないと思います」

とはいえ、それもいつまでもアテにはできません。特にコストのかかる「住まい」については、早急な見直しを迫られる可能性が高いようです。

「もし夫名義で住宅ローンを借り入れていれば、一般的に団体信用生命保険に入っていますので妻に返済義務はなく、債務が消滅します。問題は賃貸や借家だった場合。固定費として毎月支出していくことになりますので、引越しなどの判断は早めにする必要があると思います」

日本の公助システムにおいては、夫の死後すぐに生活に困ることはないそうですが、やはり暮らし方を見直す必要は出てくるようです。夫の死による心のダメージは計り知れないものですが、子どもを抱えて新たな一歩を踏み出すためにも、生活の再建は早めにする必要があるということだけは、心しておいた方が良さそうです。
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)

お話をお聞きした人

武藤頼胡
武藤頼胡
一般社団法人 終活カウンセラー協会 代表理事。終活カウンセラーの生みの親。『終活』という考えを普及すべく、テレビ、新聞などメディアへの出演多数。年間200回の講演講師を担い、一人一人に「終活」を伝えている。
一般社団法人 終活カウンセラー協会 代表理事。終活カウンセラーの生みの親。『終活』という考えを普及すべく、テレビ、新聞などメディアへの出演多数。年間200回の講演講師を担い、一人一人に「終活」を伝えている。