新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科の碓井真史教授に聞いた。
「子どもが『死にたい』と言うとき、小学生と中学生とでは状況が異なります。中学生の場合は、ときどき口に出したり、先生への連絡帳などで書いたりすることがよくあり、大人が言う意味に近いです。しかし、小学生の場合はもっと気軽に『死ね』とか『死ぬ』とか言うことがあるのです」(碓井先生 以下同)
小学生の場合の自殺はきわめて少なく、「死にたい」という言葉も、大人が思う意味とは全然違うこともある。しかし、予防は考えたほうが良いそう。
「過敏に心配する必要はないですが、少なくとも『死にたい』『消えたい』『やめたい』『遠くに行きたい』『自分はいらない子』などと言うのは、なんらかのサインですから、そういう気持ちの子を放っておいて良いわけではありません」
●「どうしたの?」と聞いて「何でもない」と言われても、もう一声かける
子どもが「死にたい」と言ったとき、多くの大人がやってしまいがちなのは、「説教する」「笑ってごまかす」「聞こえないふりをする」こと。これらは非常に悪い対応だそう。
「大人はそれを想像することも怖いから、まともに向き合えないのです。本当に自殺のサインかはわかりませんが、何であれ、何かは起きていて、子どもなりに悩んでいるはずなので、まず『どうしたの?』と聞いてあげましょう」
親が「どうしたの?」と聞いたとき、ごくくだらない話や単なるグチであるケースもある。その場合は、一緒に笑えば良いという。
ただし、問題は「語らない子」のほうだ。
「誰かにわかってほしいけど、わかってほしくないという微妙な心理があります。そうした場合、子どもは『何でもない』と言うでしょう。そこで大人はホッとしてしまい、その問題から逃げたいために『あらそう』で終わらせがちですが、そこでさらにもう一声かけてほしいのです」
子どもが語りたがらないときは、とりあえずおやつでも食べながら話をしてみることがオススメだ。
「大原則として、子どもの『死にたい』は自分ひとりで背負わないこと。ダンナさんやおじいちゃんおばあちゃん、先生などに話しましょう。ただし、大騒ぎしないことが大切です」
騒がず、無視せず、複数の目で見守ること。すると、気づかなかった子どものSOSが見えてくることもあるかも。
(田幸和歌子+ノオト)