●実母に嫌悪感を抱く、2つの転機とは?
横山さんによれば、これまでとても仲が良かった母娘なのに、ある時を境にぎくしゃくしはじめたというケースは意外に多いそう。
「きっかけのひとつとしては、彼氏ができたり結婚して夫という存在ができたりすること。彼から『お母さんとべったりしすぎじゃない?』などと指摘されて、改めて母親との関係を考えはじめるのです。さらに、彼や夫との時間を多く割くようになると、母親が娘を必死につなぎとめようとすることが多々あります。たとえば、これまで休みの日に一緒に出掛けていたのに、彼や夫を優先しようとすると不機嫌になったり、不満を言ったりする。それにより娘が板挟みになってしまうんです」(横山さん、以下同)
恋愛や結婚という新たな人生の転機を喜べず、自分が置いてきぼりにされてしまうという母親の意識が、娘にとって不快かつ複雑な感情をもたらし、ひいては嫌悪感を増幅させてしまうようです。
「また、娘自身が母親になったときも、実母との関係性に変化が生じるターニングポイントです。『自分のお母さんの育て方ってどうだったんだろう?』と客観的に考えるようになるのですが、そこで『なんであんな接し方や言い方をしたんだろう』とか『将来の夢をつぶされた』という不満が蘇ることがあります。それが引き金となって嫌悪感が芽生えることもありますね」
●優しい性格の娘ほど実母への嫌悪感と向き合いにくい
こうした、母親に対して“後天的”な嫌悪感が芽生えた場合、その負の感情に戸惑い、苦しむ人も少なくないといいます。
「早くからお母さんが嫌いだと気付いている人であれば、まだいいんです。思春期に反発したり反抗したりしながら、高校や大学を卒業して就職と同時に家を出てしまうとか、母親との距離を完全に取れる人たちですよね。逆に大人になってから母親に負の感情を持つと、その後の関係性に悩んでしまいます。とくに、性格が優しくて対立を好まないような娘さんの場合、モヤモヤしていても『お母さんのことをそんな風に思っちゃいけない』という思い込みがありますので、余計に苦しくなってしまうんです」
他の人間関係にくらべて、濃い絆で結ばれている実母だからこそ、関係性に苦しむこともあります。まずは、なにを契機に実母を嫌悪するようになったのか、振り返ってみることが大事なのかもしれません。
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)