パパ・ママ育休プラスとは
パパ・ママ育休プラスは、夫婦が協力して育児にあたれるようにするための制度です。具体的な内容を見ていきましょう。
1歳2カ月になるまで取得できる育休制度
パパ・ママ育休プラスは、育児休業(以下、育休)の取得期間を延長できる制度のことです。従来は、原則として1歳までが育休の対象となる年齢でしたが、現在は子どもが1歳2カ月になるまで延長できるようになっています。
夫婦それぞれが取得可能な育休期間に変更はなく、どちらも1年間です。パパ・ママ育休プラスを利用すれば、夫婦そろって育児する機会が持てるようになります。
取得期間によって、交代で切れ目なく育児にあたったり、できるだけ長く夫婦で同時に育児に集中できたりします。それぞれの家庭状況に応じて、柔軟な使い方ができるのです。
パパ・ママ育休プラスを取得するには
どんな場合でも、パパ・ママ育休プラスを利用できるわけではありません。取得するための条件や、申請方法などを見ていきましょう。
取得条件
パパ・ママ育休プラスを取得する主な条件は以下の通りです。
・パパとママの両方が育児休業を取る
・制度を利用する人の育休開始予定日が子どもが1歳になる前
・制度を利用する人の育休開始予定日が配偶者の育休開始後
・子どもの1歳の誕生日の前日までに、配偶者が育児休業を取得している
パパ・ママ育休プラスが生まれた背景には、男性が育児に参加しやすくする目的があり、夫婦どちらか一方のみが育休を取る場合には適用されません。
参考:改正育児・介護休業法のあらまし|II 両親ともに育児休業をする場合の特例(パパ・ママ育休プラス)関係|厚生労働省
申請方法
パパ・ママ育休プラスを利用したい場合は、まずは勤務先に申し出ます。本人から申請もできますが、企業が管轄の公共職業安定所に申請手続きを行うのが基本です。
<育休の申請に必要な書類>
・休業開始時賃金月額証明書
・育児休業給付受給資格確認票
・出生時育児休業給付金支給申請書
・育児休業給付金支給申請書(ハローワークから交付)
通常の育休に必要な申請に加え、パパ・ママ育休プラスを利用する際は、支給申請時に以下の書類を準備しておきましょう。
・世帯全体について記載されている住民票の写し
・配偶者の育児休業取扱通知書の写し、または配偶者の疎明書など配偶者が育児休業の取得を確認できる書類
申請の期限は、子どもの1歳の誕生日前日を含む支給対象期間までとされています。
参考:「パパ・ママ育休プラス」「延長交替」時の必要書類|厚生労働省
取得例
パパ・ママ育休プラスを利用する際の、一例を見ていきましょう。
・パパとママが交互に育休を取得…ママが産後10カ月まで育休を取った後、パパが交代で1歳2カ月になるまで育休を取得
・パパとママが同時に育休を取得…ママが1年間育休を取り、パパが数カ月遅れで育休に入り1歳2カ月になるまで育児にあたる
・夫婦両方が仕事に復帰後、時間をおいてパパが育休取得…祖父母に子どもを預けてママが早めに仕事に復帰し、祖父母から引き継いでパパが育休に入る
パパ・ママ育休プラスは多様なパターンに対応でき、夫婦が交互に育休を取得するだけでなく、同時取得も可能です。
子どもが1歳になる前であれば、夫婦両方が働いている状態であっても育休を取得し、1歳2カ月まで延長できます。仕事の都合でママの仕事復帰と、パパの育休開始のタイミングが合わなかったとしても、対応できます。
育児給付金について
パパ・ママ育休プラスを利用したときも、育児給付金は夫婦それぞれが受け取れる決まりです。支払われる金額は、通常の育児給付金と相違ありません。
育児休業給付の1支給単位期間ごとの給付額(※1)は、「休業開始時賃金日額(※2)×支給日数(※3)×67%(ただし、育児休業の開始から181日目以降は50%)」により、算出します。
平均月額が約20万円の場合、育児休業開始から180日目までの支給額は約13.4万円で、181日目以降の支給額は約10万円が目安とされています。
通常より月収が減ってしまいますが、無収入になるわけではないので、生活費に不安がある人も利用しやすいでしょう。
男性の育休制度について
日本では、女性が家庭で家事や育児を行うことが当たり前とされていた時代の名残で、男性が育休制度を取りづらい背景がありました。
時代が変化しているにもかかわらず、男性の育休制度に対する理解が薄い人もいます。男性の育休制度を理解するポイントをチェックしましょう。
育休は男女にかかわらず利用できるもの
育休は性別に関係なく取得できます。「育児・介護休業法」の改正によって、男性が育休を取りやすいように様々な試みが行われており、パパ・ママ育休プラスもその1つです。
出産や育児にあたっては女性の負担が大きいので、育休は女性のものだと誤解されやすいですが、男性も積極的に育休を取ることが推奨されています。
育休は「労働者の権利」であり、男性であっても取得が認められなければなりません。育休の申し出を理由に、企業が労働者の雇用形態を変更させようとしたり、取得をあきらめるように説得したりする行為は認められていません。
産後パパ育休制度
2022年10月に新しく誕生した「産後パパ育休」という制度によって、仕事の都合で長期間の休みを取るのが難しい人でも、育休を取得しやすくなりました。
産後パパ育休は男性版産休とも呼ばれています。育休とは別に、子どもの出生後8週間のうち4週間まで、2回に分けて休業できる制度のことです。
産後パパ産休・パパ・ママ育休プラスは併用できるので、休みを4回に分割できます。なお、労使協定を締結している場合、労働者が合意した範囲内であれば休業中の就業も可能です。
まとめ
パパ・ママ育休プラスを上手に使えば、夫婦が協力して育児にあたれます。ママが仕事に復帰しやすくなったり、パパが育児を担える分量を多くできたりといったメリットもあります。共働きの夫婦にとって助けとなってくれる制度です。
夫婦両方が育休を取得する必要があるので、育児の負担を夫婦で分散できるでしょう。ママからパパへ育児の引き継ぎをして復帰したり、祖父母に中継ぎをしてもらい、パパが育休を取得したりといった方法も可能です。
産後パパ育休制度と組み合わせれば、より柔軟な育休の取得ができるようになり、長期間の休みをまとめて取りづらい場合にも対応できるでしょう。