3、配偶者に適正な生活費の負担を求める方法
夫婦の生活費折半がおかしいと考えている場合、金銭面でも精神面でもつらい思いをしながら生活を続けなければなりません。
配偶者に適正な生活費の負担を求めるための手順をご紹介するので、生活費の負担割合に不満がある場合は次の方法を試してみてください。
(1)まずは話し合う
生活費の負担割合を決める場合、基本は夫婦で話し合って自由に決めることになります。
話し合うことで相手も納得してくれるケースもあるでしょう。
しかし、折半を強行的に要求する相手の場合、話し合いは簡単には進まないことが予想されます。
論理的な説明や説得が必要になるので、あらかじめ説得するための材料などを揃えておくとよいでしょう。
また、感情的になってしまうと話し合いが進まなくなります。
冷静に話し合い、相手が感情的になっても落ち着いて対処するようことを心がけてください。
(2)婚姻費用分担請求をする
婚姻費用の請求は別居後に行うものだというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
しかし、婚姻費用の分担に関することを定めた民法760条を見ても、別居しなければ請求できないという文言はありません。
そのため、同居中でも婚姻費用分担請求を行うことが可能です。
同居中に婚姻費用分担請求を行う場合、まずは話し合いで交渉します。
請求したい金額を相手に伝えて交渉し、双方が合意に至れば解決します。
ただし、相手が約束通りに支払うとは限らないため、合意内容は書面にして残すようにしましょう。
合意書があれば、「言った・言わない」のトラブルを避けられます。
また、話し合いで婚姻費用の分担を取り決める際には、相手が支払わなかった場合のペナルティなどを決めておくと、相手が約束どおりに支払うことが期待できます。
(3)調停・審判の申し立ても可能
婚姻費用分担請求の交渉が進まない場合には、家庭裁判所の調停や審判を利用することもできます。
調停や審判というと別居や離婚時にしか利用できないというイメージがあるかもしれませんが、同居中でも婚姻費用分担請求の調停・審判の申し立ては可能です。
家庭裁判所へ申し立てを行えば、裁判所によって調停委員が選任されます。
その調停委員が夫婦それぞれの主張を聞き、話し合いを進めてくれます。
双方が話し合い内容に合意できれば調停は成立となり、「調停調書」という書面が作成されます。
調停調書には裁判の判決と同じ効力があり、記載された内容どおりに支払いが行わなければ強制執行による財産の差押えが可能になります。
ただし、調停は裁判所を通した話し合いなので、双方が納得しなければ不成立になります。
調停が不成立の場合には審判手続きが開始され、裁判官が判断を下します。
4、適正な生活費を渡さない配偶者と離婚できる?
適正な生活費を渡してくれない配偶者との生活はつらく、離婚を考える方もいるでしょう。
適正な生活費を渡してくれないという理由で離婚することは可能なのでしょうか?
(1)双方が合意すれば可能
離婚する場合、まずは夫婦の協議で離婚を進める「離婚協議」から始めることが一般的です。
離婚協議で双方が離婚や離婚条件で合意に至れば、離婚原因に関係なく協議離婚することができます。
ただし、協議離婚する場合には、離婚条件についてしっかりと話し合うことが大切です。
早く離婚したいという一心で離婚条件に妥協してしまったり、適正な離婚条件を知らないまま離婚してしまったりすれば、後悔する可能性が高くなります。
後悔のないように十分に話し合いましょう。
また、合意に至った場合には、合意内容を口約束で終わらせず、離婚協議書を作成しましょう。
離婚協議書には離婚条件について記載し、互いに署名・押印をします。
決まった形式はないので当事者が自由に作成できますが、公正役場で公正証書にすることをおすすめします。
公正証書は信頼性が高く、証拠として認められる能力の高い書面です。
強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、相手が約束どおりに支払いを行わなかった場合には裁判をすることなく財産の差押えが可能になります。
相手が約束どおりに支払うのか不安がある場合には、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておきましょう。
(2)家庭生活が成り立たない場合は強制的に離婚できることも
話し合いで相手からの合意が得られない場合、裁判で強制的に離婚するには法定離婚事由が必要です。
法定離婚事由とは法律(民法第770条1項)で定められた離婚事由で、「不貞」や「悪意の遺棄」、「婚姻を継続しがたい重大な事由」などがあります。
相手に収入があるにもかかわらず十分な生活を渡してもらえず、家庭生活が成り立たない場合には、「悪意の遺棄」もしくは「婚姻を継続しがたい重大な事由」が該当する可能性があります。
「悪意の遺棄」とは、民法第752条に定められている夫婦の扶助義務に違反するような行為を指します。
収入があるにも関わらず生活費を渡さず、それで家庭の生活が成り立たない状態になっているのであれば、夫婦の扶助義務に違反していると考えられます。
また、配偶者が金銭の自由を奪うことで経済的にもう一方の配偶者を追い詰めているような状況であれば「経済的DV」に該当する可能性があり、経済的DVは「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められる可能性があります。
(3)別居して婚姻費用を請求するのもひとつの方法
離婚までは決心がつかないようなケースや、離婚協議が難航しているケースでは、まず別居して婚姻費用を請求するという選択肢もあります。
婚姻費用分担請求調停・審判をして適正な婚姻費用を請求したあとに、今後の夫婦関係についてじっくり検討することができます。
別居して婚姻費用をもらいながら夫婦関係の修復を目指して話し合うこともよいでしょう。
また、離婚協議を継続したり、離婚調停を申し立てたりするなどして、離婚に向けて進めていくことも可能です。
配信: LEGAL MALL