5、「夫婦で生活費折半」がおかしいと思ったら弁護士に相談を
夫婦で生活費折半がおかしいと思った場合には、一人で悩まず弁護士に相談してみてください。
夫婦の収入や資産、家事の負担割合などの状況から、適切な生活費の負担割合を教えてもらうことができます。
また、夫婦で話し合うことが難しい場合には、弁護士に代理人となってもらい、交渉を進めて示談書を作成することも可能です。
当事者同士の話し合いよりも冷静に話し合うことができますし、法的な観点から相手に説得を試みることができます。
話し合いで解決できない場合でも、調停や裁判手続きをそのまま任せられるというメリットもあります。
もちろん離婚を視野に入れている場合には、離婚手続きや離婚条件についても相談することができ、心強い味方になってもらえるでしょう。
夫婦で生活費折半についてのQ&A
Q1.夫婦で生活費折半はおかしい?
それぞれの家庭には家庭ごとのルールがあり、生活費の負担割合に関しても家庭ごとにルールは異なります。夫婦で生活費折半をしていることは、一般的に見ておかしいのでしょうか?
①妻が専業主婦の場合
妻が専業主婦の場合、明らかに生活費折半はおかしいでしょう。
専業主婦で収入がないのに生活費折半を要求される場合、どこから生活費を捻出すればいいのでしょうか?
完全な専業主婦ではなくパートやアルバイトをしている場合でも、得られる収入は限られています。
妊娠を機に退職や休職したにも関わらず、これまでの共働きの状態のまま生活費の折半を続ける夫もいるようです。
貯金を切り崩すにも限界がありますし、妻だけが苦しい思いをすることになってしまいます。
②共働き家庭の場合
共働き家庭の場合であれば、専業主婦よりも生活費折半はおかしくないのではないかと考える方もいるかもしれません。
しかし、共働きでも収入格差はありますし、妻の方が家事や子育ての分担が大きい場合が多いと考えられます。
そのため、共働き夫婦でもよほど収入格差もなく、家事・子育てを完璧に分担しているという場合ではない限り、生活費折半はおかしいと考えられます。
Q2.夫婦の生活費の負担割合はどのように決めるべき?
夫婦で生活費を折半すると、妻の不満から喧嘩、離婚などのトラブルに発展することも多いです。それでは、夫婦で生活費の負担割合はどのように決めるべきなのでしょうか?夫婦の生活費の負担割合を決める方法についてご紹介します。
①収入や資産に応じて決めるのが公平
結婚した場合、夫婦は相手が自分と同じ水準の生活を送れるように互いに扶助する「生活保持義務」が生じます。法律でも夫婦間の扶助義務が次のように定められています。
第七五十二条
夫婦は同居し互いに協力し扶助しなければならない
引用元:民法
そして、夫婦には扶助義務だけではなく、婚姻費用を分担する義務があります。婚姻費用とは、食費や住居費など夫婦が婚姻生活を送るために必要な費用を指します。
Q3.適正な生活費を渡さない配偶者と離婚できる?
適正な生活費を渡してくれないという理由で離婚することは可能なのでしょうか?
①双方が合意すれば可能
離婚する場合、まずは夫婦の協議で離婚を進める「離婚協議」から始めることが一般的です。
離婚協議で双方が離婚や離婚条件で合意に至れば、離婚原因に関係なく協議離婚することができます。
ただし、協議離婚する場合には、離婚条件についてしっかりと話し合うことが大切です。
また、合意に至った場合には、合意内容を口約束で終わらせず、離婚協議書を作成しましょう。
離婚協議書には離婚条件について記載し、互いに署名・押印をします。
決まった形式はないので当事者が自由に作成できますが、公正役場で公正証書にすることをおすすめします。
公正証書は信頼性が高く、証拠として認められる能力の高い書面です。
強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、相手が約束どおりに支払いを行わなかった場合には裁判をすることなく財産の差押えが可能になります。
相手が約束どおりに支払うのか不安がある場合には、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておきましょう。
②家庭生活が成り立たない場合は強制的に離婚できることも
話し合いで相手からの合意が得られない場合、裁判で強制的に離婚するには法定離婚事由が必要です。
法定離婚事由とは法律(民法第770条1項)で定められた離婚事由で、「不貞」や「悪意の遺棄」、「婚姻を継続しがたい重大な事由」などがあります。
相手に収入があるにもかかわらず十分な生活を渡してもらえず、家庭生活が成り立たない場合には、「悪意の遺棄」もしくは「婚姻を継続しがたい重大な事由」が該当する可能性があります。
「悪意の遺棄」とは、民法第752条に定められている夫婦の扶助義務に違反するような行為を指します。
収入があるにも関わらず生活費を渡さず、それで家庭の生活が成り立たない状態になっているのであれば、夫婦の扶助義務に違反していると考えられます。
また、配偶者が金銭の自由を奪うことで経済的にもう一方の配偶者を追い詰めているような状況であれば「経済的DV」に該当する可能性があり、経済的DVは「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められる可能性があります。
③別居して婚姻費用を請求するのもひとつの方法
離婚までは決心がつかないようなケースや、離婚協議が難航しているケースでは、まず別居して婚姻費用を請求するという選択肢もあります。
婚姻費用分担請求調停・審判をして適正な婚姻費用を請求したあとに、今後の夫婦関係についてじっくり検討することができます。
別居して婚姻費用をもらいながら夫婦関係の修復を目指して話し合うこともよいでしょう。
また、離婚協議を継続したり、離婚調停を申し立てたりするなどして、離婚に向けて進めていくことも可能です。
配信: LEGAL MALL