3、弁護士は正義の味方?その前に「あなたの味方」です
弁護士が「正義の味方」であることは間違いありません。
そのため、「離婚したい」「借金を減らしてほしい」「罪を犯したけれど、処分を軽くしてほしい」といった悩みは相談しにくいと考える方が少なくありません。
しかし、弁護士は中立・公平な裁判官とは異なり、依頼者の権利・利益の実現を図ることを職務としています。
つまり、正義の味方である前にご相談者・ご依頼者の味方です。
たとえ世間から見て非難されるような立場にある方であっても、弁護士には遠慮なく相談して構わないのです。
(1)弁護士相談、どこまで話す?
弁護士に相談するとしても、「不利なことは言いたくない」「隠しておきたいことがある」と考える方は多いものです。
しかし、弁護士に問題解決を依頼することまで考えているのであれば、その事案に関する事実は不利なことも含めてすべて正直に話すことが大切です。
弁護士に事案の内容を正確かつ詳細に把握してもらってはじめて、最善の解決方法を提案してもらうことが可能となるからです。
弁護士はご相談者・ご依頼者の味方ですので、不利な事実を話したからといって怒鳴ったり、叱ったりすることはありません。
そんなことをしても事件の解決には何一つ役立たないからです。
また、後でもご説明しますが、弁護士は法律上の厳重な「守秘義務」を負っていますので、ご相談者・ご依頼者の秘密を漏らすことは決してありません。
恥ずかしくて言いにくいことや隠しておきたいことでも、弁護士には安心して話してください。
どうしても話したくないという場合、相談時には無理に話さなくても構いません。
話せる範囲内の事実を話すだけでも、それを前提とした法的アドバイスが得られますので、参考になることはあるでしょう。
ただし、依頼することになった場合には、すべての事実を正直に話しましょう。
その際には、「先日の相談時にはどうしても話せなかったのですが…」と切り出せば大丈夫です。
正式な依頼前であれば解決方針はまだ確定していませんので、弁護士も「よく話してくれました」という感じでやさしく対応してくれるはずです。
もし、この段階で怒り出す弁護士がいたとしたら、その弁護士に依頼するのは考えものです。
別の事務所に改めて相談することも考えてみるとよいでしょう。
(2)弁護士の話は難しい?
ご相談者のことを親身に考えている弁護士は、決して難しい話はしません。
難しい法律が絡む問題でも、素人にわかりやすいようにかみ砕いて説明してくれます。
ただし、一部には難しい法律の話に終始する弁護士もいるようです。
そんな弁護士はご相談者のことを親身に考えていないか、わかりやすく説明できるだけの知識や能力が欠けている可能性があります。
もしも、相談した弁護士の話が難しくて理解できなかった場合には、別の法律事務所にも相談してみることをおすすめします。
同じ問題でも説明がわかりやすい弁護士とわかりにくい弁護士がいることに驚かれるかもしれません。
(3)弁護士の仕事は問題の法的な問題の整理
相談したい問題の内容によっては、「法律問題じゃないと言われて門前払いされそう」「些細な問題だから取り合ってもらえないのではないか」と感じられることもあるでしょう。
しかし、そんな問題こそ、気軽に弁護士に相談してみるべきです。
弁護士の第一の仕事は、困っている方の話を聞いて、そこにどのような法律問題が潜んでいるのかを見極め、整理することです。
一般の方では、日常で遭遇する問題のどこに法律問題があるのかが見えづらいものです。
また、些細と思える問題の中に法律問題が潜んでいることもよくあります。
素人判断で「法律問題ではない」「些細な問題だ」と決めてしまうのではなく、弁護士に相談して法的に問題を整理してもらうことが重要なのです。
もし、弁護士が取り扱うべき法律問題ではなかった場合には、「役所で○○という手続きをしてください」「警察に相談した方がよいでしょう」などと、しかるべきアドバイスがあるはずです。
軽くあしらわれたり、頭ごなしに叱られるようなことはありませんので、ご安心ください。
(4)相談者のメリットなく依頼を勧める弁護士はいない
いったん弁護士に相談すると依頼をしつこく勧められるのではないか、という心配も無用です。
弁護士が最も重視するのは、依頼者の「納得」です。
納得しない依頼者ともめることは、弁護士にとって非常に負担となります。
事務所の悪評が立つ原因にもなりますので、通常の弁護士はご相談者にメリットがないにもかかわらず依頼を勧めることはありません。
もし、依頼を強制してきたり、執拗に依頼を勧めてくる弁護士がいたら、事務所の利益のみを考えている可能性が高いので、そこに依頼するのは考えものです。弁護士への依頼は「委任契約」です。
契約は当事者の合意によってのみ成立するものですので、望まない場合には自由に拒否できます。
4、弁護士の「守秘義務」は重い
弁護士には法律上の「守秘義務」があり、やぶった場合には重いペナルティも用意されています。
実際にも弁護士は厳重に守秘義務を守っていますので、法律相談で話したことが「相手に漏れそう」という心配は不要です。
(1)弁護士の守秘義務
弁護士には、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないという義務が課せられています。
この義務のことを「守秘義務」といいます。
弁護士法23条では、以下のように規定されています。
第二十三条 弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
引用元:弁護士法
「職務上知り得た秘密」には、弁護士が依頼を受けた案件だけでなく、法律相談で相談者から聞いた秘密も当然に含まれます。
ここにいう「秘密」には、世間一般から見て他人に知られたくないと考えられる事項だけでなく、ご相談者本人が隠しておきたいと考える事項も含まれます。
そのため、弁護士に話した秘密は自動的に守られますが、特に秘密にしておきたいことがあれば「このことは相手に伝えないでください」「誰にも言わないでください」と弁護士に申し出れば安心です。
(2)弁護士が守秘義務を守る理由(ワケ)
弁護士に守秘義務が課されているとはいっても、違反して秘密を漏らされるのではないかと不安になることもあるでしょう。しかし、その心配は不要です。
守秘義務に違反した弁護士に対しては重いペナルティが用意されているからです。
守秘義務違反の行為に対して弁護士法や弁護士職務規程に直接の罰則規定はありませんが、違反した弁護士は職属する弁護士会または日本弁護士連合会による懲戒処分の対象となります。
懲戒処分には、重い順に除名処分・退会命令・2年以内の業務停止・戒告の4種類があります。
業務停止以上の懲戒処分を受けると、少なくとも一定期間は弁護士業務ができなくなります。
戒告の場合はそのまま弁護士業務を続けることが可能ですが、懲戒処分を受けた事実は公表されるため、悪評が立つなどして業務に支障をきたす可能性が高くなります。
悪質なケースでは、刑法上の「秘密漏示罪」(同法第134条1項)に問われ、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金という刑罰に処せられるおそれもあります。
民事上の不法行為責任として、秘密を漏らされた被害者から慰謝料などの損害賠償請求(民法709条、710条)を受けることもあります。
懲戒処分だけでも弁護士にとって重大なデメリットとなりますので、実際のところ、弁護士は厳重に守秘義務を守っているのです。
配信: LEGAL MALL