書類送検されても起訴されない為の重要知識を弁護士が解説

書類送検されても起訴されない為の重要知識を弁護士が解説

3、書類送検は誰がどこに行うのか

「送検」という字面のとおり、送検とは検察官に事件を送る(送致する)ことをいいます。

書類送検も、その事件について捜査を行った警察官が検察官に事件に関する書類を送致します。

つまり、書類送検は、警察官が検察官に対して行うことになります。

では、なぜ警察官は検察官に事件を送致することとされているのでしょうか?

この点を理解するには、警察と検察の役割の違いを理解する必要があります。

警察は犯罪が発生した際に捜査を行う役割を担っています。

これに対して、検察は発生した犯罪の被疑者を起訴するか否か(裁判にするか否か)を決定する役割を担っています。

起訴するために捜査が足りないと思えば、検察官は警察を指揮して補充捜査を行わせることができますし、場合によっては検察官自ら捜査を行うこともあります。

このように、検察官は事件をいかに処分するかについての最終的な判断権を持っているため、警察官は原則としてすべての事件について検察官に報告をする義務を負っているわけです。

4、書類送検されるまでの流れ

これまでの説明で書類送検の大まかな内容は理解いただけたのではないかと思いますが、ここではどのような流れをたどって書類送検が行われるかを具体的な事例を設定して説明したいと思います。

(設例)

Aさんは前方不注意で赤信号で停車していた前車に追突してしまい、Bさんにむち打ちの傷害を負わせる事故を起こしてしまいました。

AさんはBさんに自分の落ち度を認めて謝罪するとともにすぐに警察に連絡し、ほどなく現場に警察官が到着して事情を聞かれ、そのまま現場検証を行いました。

単純な追突事故で、Bさんの怪我もさほど重いものとは思われなかったため当日Aさんは逮捕はされませんでした。

しばらくしてからAさんは警察から連絡を受け、指定された日に警察署に行って事故に関する事情を聞かれ、Aさんの供述調書が作成されました。

すでに別の日にBさんも警察の事情聴取を受けていたらしく、Aさんは担当の警察官から、「とりあえず必要な捜査は終わったので事故を検察官に送る。いずれ検察庁から連絡があるだろう。」と言われました。

この設例でAさんが起こした追突事故は過失運転致傷罪や道路交通法違反などの犯罪に当たるものですが、さほど重大な犯罪とは言えず、被害者の怪我も重くはなく、Aさん自身も落ち度を認めていたため逮捕はされていません。

Aさんの起こした事故が死亡事故だったり飲酒運転によるものであったりした場合には逮捕された可能性が高く、その場合には事件は身柄事件に移行することとなります。

逮捕されなかったAさんは、以前のままの生活をしながら警察から連絡がある都度捜査に応ずることになります。

具体的には、警察官の取調べと供述調書の作成、実況見分への立会いなどが行われるでしょう。

そして、警察がこの件について必要な捜査を終えると、事件は書類送検され、検察官の手に渡ることになります。

なお、警察官は検察官に対して処分に関する意見(処分意見)を付して書類送検を行います。

この意見には4種類のものがあります。

厳重処分(起訴を求めるもの)
相当処分(検察官の判断に委ねるもの)
寛大処分(厳しい処分を求めないもの。起訴猶予を求めるもの)
しかるべき処分(起訴を求めないもの。嫌疑不十分などの場合)

検察官は警察の処分意見を尊重するのが通常ですが、処分意見に検察官に対する拘束力はなく、検察官が処分意見と異なる処分を選択する可能性がないわけではありませんので注意して下さい。

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