書類送検されても起訴されない為の重要知識を弁護士が解説

書類送検されても起訴されない為の重要知識を弁護士が解説

7、書類送検後の流れ

書類送検が行われると、事件は警察官の手から検察官の手に渡ります。

検察官は必要に応じて自らまたは警察に指示して補充捜査を行います。

そして得られた証拠や事件の内容を総合的に考慮した上で、被疑者に対する処分を決定します。

検察官による処分は、起訴処分と不起訴処分の2つに分かれ、不起訴処分の代表的な例が起訴猶予と嫌疑不十分です。

検察官が起訴処分を選択した場合には検察官は裁判所に公判請求を行い、事件は裁判所での審理に移ります。

不起訴処分となった場合には被疑者に対する処分は行われません。

なお、不起訴処分のうち、嫌疑不十分とは証拠不足などのために犯罪の証明ができないか困難な場合をいい、起訴猶予とは犯罪の嫌疑はあるものの情状などにより起訴の必要がない場合をいいます。

8、書類送検されたらどうしたらよいか

先ほど述べたように、書類送検が行われると事件は警察から検察に移り、裁判にするか否かを判断する段階に移行します。

もともと書類送検の対象となる在宅事件は軽微な犯罪であることが通常ですが、在宅事件でも起訴処分となることは珍しいことではありません。

平成27年における起訴率は33.4%となっており、送検されたうちの3分の1の事件が起訴処分となっていることからしても、決して油断することはできません。

では、書類送検された場合にはどうすればよいのでしょうか?

また、不起訴処分を得るためには何をすればよいのでしょうか?

犯罪事実を争っているケースは別として、不起訴処分を得るために最も重要なのは被害者の処罰感情がないことと、被害者の被害が回復されていることです。

したがって、不起訴処分のためには被害者との示談を成立させることが必須です。

ただ、加害者と被害者が直接話し合って示談をすることは難しいこともありますので、その場合には弁護士に依頼して示談を含む弁護活動を行ってもらうのがいいでしょう。

9、書類送検は前科や前歴になるか

インターネットの検索候補などを見ると、書類送検が前科や前歴となるのかという疑問を持つ人が多いようですので、これについても説明しておきます。

まず、書類送検されると最終的な処分結果にかかわらず前歴として記録は残ることになりますが、前科となるかどうかは処分結果によります。

そもそも前科とは、以前に刑事裁判を受けて有罪判決を受けたことがあることをいうのが一般です。

執行猶予付きの判決も有罪判決の一種ですから前科の対象となります。

これに対して前歴とは、以前に捜査の対象となったことがあるかということを指して使われる場合と、以前に逮捕されたことがあるが不起訴となったことを指して使われる場合があります。

もともと刑法や刑事訴訟法上、前歴という用語はありませんので、意味が確定していないのはやむを得ません。

ただ、刑事実務上問題となる前歴は、検察庁に記録として残るために後の犯罪に関する処分をする際に消極的な評価の対象となるものと考えると、在宅事件で起訴猶予となった場合なども検察庁には記録として残りますので、逮捕されたか否かは問わないものと考えておくのが無難でしょう。

このように考えると、書類送検された後には不起訴処分を含めて何らかの処分が決まったことが記録に残りますので、書類送検されると何らかの前歴が残ることになります。

ただ、前歴に関する記録が検察庁に残っていても、後に罪を犯して処罰を受ける場合以外には何ら不利益となるものでもありませんので、さほど気にする必要もないでしょう。

これに対して、書類送検後に起訴されて有罪判決を受けた場合には前科の対象となります(ただし、前科という用語も刑法や刑事訴訟法上は使われていません)。

10、書類送検に関する相談先

もし書類送検されてしまった場合には、まずは弁護士に相談することを考えましょう。

先ほども触れたとおり、逮捕されず在宅事件扱いになっているからといって油断することはできません。

処分の見通しなどについて専門家である弁護士に相談し、具体的にどのような対策を取るべきかについても指示を仰ぎましょう。

なお、ケースによっては弁護士に弁護を依頼すべきこともあります。

その場合には早めに依頼することが、十分に弁護活動ができる時間を確保できるという点で重要なことです。

まとめ

書類送検は、比較的軽い罪について警察が被疑者を逮捕せずに捜査を行った後に行われるものであること、書類送検されないようにするための方策、書類送検されてしまった場合にとるべき方策などについて説明してきましたが、お分かりいただけましたでしょうか。

逮捕されずに済んだという意味では書類送検の対象となったことは幸いなことですが、書類送検後には処分に関する検察官の判断が行われることになりますので、安心してばかりはいられません。

書類送検が行われた場合には、弁護士への相談、被害者との折衝など十分に対策を取っておきましょう。

監修者:萩原 達也弁護士

ベリーベスト法律事務所、代表弁護士の萩原 達也です。
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