●胸の谷間をジッと見つめられ…
「お墓参りはあくまで名目。夫の実家は本家にあたり、義父は8人兄弟。さらに夫は長男で5人姉妹なので、毎年お墓参りの後は、とんでもないことになるんです」(Mさん 以下同)
Mさんの夫の実家は岐阜県。田んぼが広がり、カエルの鳴き声が聞こえるのどかな場所に、夫の実家の大豪邸がたたずむ。
「10LDKはあると思いますね。ゲストルームもあるし、親戚が入れ代わり立ち代わりで、軽く30人以上集まるので、ほとんど旅館状態。お墓参りの後は、必ず飲めや歌えの昔ながらの大宴会となり、エンドレスのカラオケ大会が始まります。近年は、誰の提案だかわかりませんが、バーベキューもやり始めて、お肉の買い出しだけでも10万円以上はかかるんですよ。あとは、お寿司やオードブルを買うだけなんですけど、それが尋常じゃない量なので、それはそれは準備が大変なんです」
台所を仕切るのは、もちろん長男の嫁であるMさん。姑と小姑はほとんど手伝わず、口を出すだけだという。
「驚いたのは私が妊娠していた時。安定期に入っているかいないかの状態なのに、遠慮なくこき使うんですね。バーベキュー用のかた~いとうもろこしを何本も包丁で切らなくちゃならなくて…。食事の上げ下げやお酒のお代わりを作るのも大変でしたし、お腹の子が大丈夫かどうか心配でなりませんでした」
それに加えて手がかかるのが、舅の兄弟たちだという。
「とにかく兄弟そろって大酒飲みなんですね。酔っぱらったおじさんにお尻をペロンと触られたこともあるし、かがんで食器を片づけている時に、胸の谷間をじっと見られて“おっ、ボインちゃんだねぇ~”と言われたこともありました(笑)。宴会は昼すぎから始まって、そのまま夜中まで続くんですけど、みんな飲み疲れて、あちこちでバタバタと倒れてはいびきをかいているような状態。いったいこの集いがいつまで続くのか、正直、本当に勘弁してほしいです」
カウンセラーの那賀まき氏は、Mさんにこんなアドバイスを送る。
「大勢の親族が集まってくる本家の長男の嫁は、みんなのお世話係のような役割を任されます。理不尽さを感じながらも、その役割をしっかりとこなしているⅯさんは、家族や親族から頼られ、甘えられる存在と認識されやすいです。ところがこの状態が続くと、Ⅿさんは、頼ることも甘えることもできずにひたすら頑張り、耐えるしかない。自分には許されないことをしている人(マイペースだったり、当たり前に甘えられたり)を目にすると腹が立ちやすくなります。今後は、Ⅿさんが甘えたり、気を遣わずにいられる人が必要です。最も効果的な相手は、もちろん夫。今一度夫婦の関係を見直し、夫という味方を感じられるような絆を作ることを意識するといいでしょう」
いい嫁を演じれば演じるほど、さらに頼られるようになってしまう…。この理不尽さに耐えられず、ある日突然大爆発! なんてことにならないように、たまには自分の殻を破って、夫に素直に甘えてみることが必要なのかもしれない。
(取材・文/吉富慶子)