●社会に出たら、すべてが競争!
――幼少期から、想像を絶する極貧生活を経験されている風間さん。著書からは、桁外れのたくましさと生きる力を感じますが、今の教育事情をどう捉えていますか?
「偉そうに言える立場ではないですけど、例えば昔から、イジメはあったと思うんですね。ただその方法ややり方はまったく違います。例えば僕は、家が貧乏だったので“お前ん家、めちゃくちゃ貧乏だな!”とよくからかわれました。でも昔は、子ども同士でケンカしても“足を使ってはいけない。おなかをキックしたら相手が死んじゃう”とか、そういうルールを把握した上でやっていましたよね。今の子は、そんなルールを学ぶ機会もないし、きっとケンカのしかたを知らないんじゃないかなぁ。だからともすれば、致命的なダメージに繋がってしまうのではないかと…。それが一番怖いですよね」(風間さん 以下同)
――子どもになるべくケガやケンカをさせないように…と守ることしか頭にない“モンスターペアレンツ”が増殖中。この現象をどう感じていますか。
「例えば“公園の砂場で遊んじゃいけない”とかね、たしかにいろいろと問題はあるんでしょうけど、自然のものに触れるのはとてもいいことだと思うし、そういう経験は子どものうちにたくさんさせた方がいいですよね。体育や水泳の授業もとても大切! “こうすると痛い”とか、自分の身体って、何でも経験してみてわかる。組体操も、今年あたりから禁止になっているようですけど、“いったいどこからが危ないのか”をきちんと経験させて加減をわからせないとダメなんじゃないでしょうか。自分で知って、初めて“相手にやってはいけない境界線”がわかるわけで…。そういう意味で言うと、子どもの頃に多少の痛みや傷を負うことは必要なんじゃないかと思います。水泳の授業もそうですよ。日本は島国なんだから、絶対に泳げた方がいいと思います」
――ニートや引きこもり…コミュニケーションが図れなかったり、打たれ弱い新成人も増えていますが…。
「子どもに罪はないし、結局は親の責任なんじゃないでしょうか。もちろんわが子はかわいいので、さじ加減が難しいとは思いますが、守るばかりでなく、ある程度の試練は子どもの時に社会勉強させておいた方がいい。いろんな人と関わらせた方がいいと思うし、野球のリトルリーグや部活動など、集団で行動することの大切さを子どものうちにしっかりと学ばせるべきではないでしょうか。“自分は今どういう立場に置かれているのか、相手は今、何を考えているのか”とか、周りを見渡す、自分自身を見つめる能力は、集団の中に溶け込んでこそ育まれていくもの。そういう能力がしっかり身についていないと、大人になって集団に入っていけないので、外に出るのが嫌、家に一人でいるのがいい、自分のことをわかってくれるお母さんだけでいいとか、そうなってきちゃうんじゃないかな。だから、運動ができるできないじゃなくて、一番になれなくてもいいんですよ。“その集団の中で、どういう風に自分の位置を決めていくか”を学ぶことが重要なんです」
――どれだけ子どもを守っても、いずれは親の元を離れて、飛び立っていくわけですからね。
「本当に難しい世の中になってきているとは思いますよ。今のニュースを見ていても、一生懸命“競争させない社会”にしているような印象は受けますけど、社会に出たら、間違いなく“競争”ですからね。だからこそ、子どもの時から少しずつそういう精神を学んで、たくましく成長していってほしいなと思います」
(撮影/篠山チキン 取材・文/蓮池由美子)