●むやみに遠ざけるのは得策ではない
「もし暴力的な子だったとしても、子どもから望んで遊んでいることもあります。その場合、親が『あの子とは付き合っちゃだめよ』と言って悪影響の子から遠ざけようとしたら、孤立してしまう可能性がありますし、本当につらいときに親に話さなくなってしまうことにもなりかねません」(椎名先生、以下同)
幼稚園や小学校にはいろいろな子どもが通ってきます。極端に暴力的だったり、反抗的だったりする子にもその子なりのストレスがあるもの。それを悪いと決めつけるのではなく、「そういう子と付き合っても大丈夫」なように育てることが大事だと椎名先生。
「子どもが『こういう子がいるんだよ』と話したら、『やーね、何なのその子』ではなくて、『その子はその子だよね、いろいろな子がいるんだよ』という対応が望ましいでしょう。なかには、遠ざけたいという思いから『仲良くしたらダメ』と言ってしまう親もいますが、そうではなく『ママとしては、暴力的な子と一緒にいることであなたが傷つかないか心配なの。あなたはどう? 大丈夫なの?』と、まずはちゃんと話を聞いてみることが大事です」
自分の感情や思いを押し付けるのではなく、子どもには子どもの意思があることを忘れてはいけないとのこと。
「もし『嫌い』ということであれば、『違うお友達と遊んでみたら?』とさりげなく促してみるのも手でしょう。逆にそれでも『仲良くしたい』と言うのであれば、その子と遊んで帰ってくるときなどは、要注意しながら『楽しかった?』とそれとなく聞いてみる。その子を遠ざけたら不安が消えるということではなくて、まずは子どもと話し合いの時間を持つことが大切なのです」
●ときには親が介入することも重要
また、ときには、「仲良くしたいけど、ときどき暴力やいじわるなことを言うから嫌だ」と訴えることもあるかもしれません。そんなときには、親が行動することもアリだと椎名先生。
「クレームや文句を言いに行くというのではなくて、『うちの子はそういうのをすごく嫌って言ってるんだよ』とか、『あなたを嫌いじゃないんだけど、これだけはすごく悲しいみたいだからやめてくれるかな』というように、相手の子を尊重することを忘れずに気付いてもらうということが大事です。一方で、『自分の子どもにも非があるかもしれない』という姿勢も忘れてはいけません。相手を一方的に責めるのではなく、『うちの子も嫌なところある?』と聞いてみることも必要です」
●“排除”は将来の社会生活にマイナス
また、もう一歩踏み込んでその子や友達を呼んで、どんな状態かを見ることも手だと言います。
「排除しようとするのではなくて、逆に家に積極的に呼んで受け入れてしまうのも手です。そうすれば、自分たちは敵じゃないということを示すことにもなり、親が何かを言うにしても、良い関係の中でやめてほしいことをやめてと言えるようにもなります。相手の子どもの状態や子どもたちの人間関係をそれとなく把握することもできるのです」
さらに、そう遠くない将来、社会に出ていく子どものことを考えると、悪影響だからと言って排除することは、社会人になってからの人間関係にも影を落としかねないそう。
「集団生活というのは同じことをちゃんとできる、ということではなくて、自分の嫌いな人や合わない人もいて、その中で個人としてどう振る舞うかが大事なんです。幼稚園や小学校にダメな子や意地悪な子、やんちゃな子がいるように、大人になってからもそうした人はいるんです。あの子とあの子を排除すれば解決するというのは、社会に出たら通用しません。“人としてあり得ない”と思うような上司や付き合いにくい同僚とも上手くやらなければいけない。ただ、その中でも『これだけは許せません』という意思をどう上手に伝えるか、それを身につけることが幼少期から大事になってくるのです」
我が子を第一に考える親だからこそ、子どもの友達にも厳しい目を向けてしまいがち。しかし、真に我が子を想うなら、安易な排除に走らない交遊関係の築き方を、親が上手にアシストしてあげることが重要なようです。
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)