ADR(裁判外紛争解決手続)とは|メリットやおすすめな人をわかりやすく解説

ADR(裁判外紛争解決手続)とは|メリットやおすすめな人をわかりやすく解説

夫婦で離婚協議が難しい場合、ADRという民間調停を利用する方法があります。ADRは弁護士費用より安価で、裁判所よりも手軽です。この記事ではADRのメリットと手続き方法を紹介しています。

夫婦で離婚協議ができない場合、弁護士に依頼したり、家庭裁判所の離婚調停を思い浮かべる人が多いと思います。

しかし、一方で、弁護士費用は高額で支払えないし、だからといって家庭裁判所で争うのもハードルが高い、という人も多く、必要な条件を取り決めないままに離婚してしまうケースも散見されます。

この記事では、弁護士費用より安価で、裁判所よりもハードルが低い「ADR(裁判外紛争解決手続)」という民間調停の制度を利用した離婚の方法をお伝えします。

ADR(裁判外紛争解決手続)のメリット

ADR(裁判外紛争解決手続)という民間の調停機関を利用した離婚協議の方法があります。

ADR機関は民間ではありますが、いわゆるADR法に基づき、法務大臣が認証する制度で、法務省に管轄されているので、安心して利用できます。

以下では、ADR機関を利用した離婚協議のメリットをお伝えします。

■早い

家庭裁判所の離婚調停を利用した場合、終結まで1年かかったということも珍しくありません。

長期化の理由はいくつもありますが、1ヵ月に1回程度しか期日が開けないこと、別席調停なので1回の進度が遅いこと、無料なので、安易に欠席や日程変更が発生すること、休廷期間(裁判官の夏休みや年末年始、年度末や年度初めなど)があることなどが挙げられます。

一方、ADRは、法務省の統計によりますと、全体の約4割の案件が3ヵ月未満で終了しており、審理回数も3回以内が約8割です。

離婚協議は、心身ともに疲弊しますので、早期に解決ができることは大きなメリットといえます。

■手軽

家庭裁判所に申し立てる場合、申立書のほか、戸籍謄本やさまざまな準備書類の提出が求められます。

しかし、ADRの場合、申立てのハードルを下げるため、できるだけ簡易な手続きにしている機関がほとんどです。

■利便性が高い

ADRは民間の機関なので、家庭裁判所より利便性が高いのが特徴です。

たとえば、裁判所は平日の日中しか調停が開かれませんが、ADRはほとんどの機関が平日夜間や土日に調停を実施しています。

また、コロナ禍を経て、オンライン調停が可能な機関も増えています(ちなみに、筆者が運営する家族のためのADRセンターでは、現在、95%がオンライン調停です)。

■調停人の専門性が高い

実は、家裁の調停で一番クレームが多いのが調停委員の「レベル」についてです。

ジェンダーバイアスのかかった発言をしたり、自分の思い込みや偏見で話を進めてしまう調停委員が後を絶ちません。

そもそも、みなさんが意外に思われるのは、調停委員は法律や心理の専門家ではなく、単なる門外漢の方がほとんだということです。

一方、ADRの調停人は、法的知識や子どもの福祉に関する知識が豊富な専門家です。

そのため、短時間で質の高い調停が期待できます。

■費用が安価

家庭裁判所の調停は申立時に数千円必要ですが、その後は何度話し合っても無料です。

一方、ADRは民間の機関ですので、都度利用料がかかりますので、家裁に比べると費用がかかります。

しかし、多くの機関では、利用料が低額に抑えられていて(1回の期日費用が1万円前後)、弁護士に依頼した際の10分の1程度ですむ機関がほとんどです。

■納得度が高い

利便性や安価といったメリットが前面に出されやすいADRですが、実は、一番のメリットは協議の後の納得度が高いという点です。

ADRは、別席調停との選択制ではあるものの、同席調停が基本となっている機関がほとんどです。

そのため、調停委員による伝言ではなく、双方の言い分がストレートに伝わるため、相互理解が進みます。

また、専門性の高い調停人の仲介により、理性的・理論的に話が進むため、悪口の言い合いや駆け引きではなく、「目の前にある問題を三者(申立人・相手方・調停人)で解決する」という雰囲気で話合いが進められます。

結果として、自分の言いたいことも言えたし、相手の話も十分に聞いたし、いい落としどころが見つけられたという納得感につながります。

ADR(裁判外紛争解決手続)の注意点

このようにメリットが多いADRですが、注意点がひとつあります。

それは、現時点では、取り決めたことに対する執行力がないという点です(現在、ADR法改正が進んでおり、養育費及び婚姻費用については執行力が付与される予定です)。

そのため、ADR機関を利用する際、公正証書の作成までサポートしてくれる機関か否かという点がひとつのポイントとなります。