労災保険と損害賠償請求との関係は?損害を補填してもらう方法

労災保険と損害賠償請求との関係は?損害を補填してもらう方法

労災に遭ってしまった場合、労災保険により治療費などの補償を受けることができます。

しかし、労災保険で受け取ることができる補償は一部に過ぎず、なかには会社等に対して損害賠償請求をすることで、より多くの補償を受け取ることができるケースもあります。

本記事では、

労災で会社に対して損害賠償をするべき場面
会社へ損害賠償請求をする際のポイント
損害賠償請求が認められた裁判例

について解説を行います。

本記事が参考になれば幸いです。

1、労災での損害賠償をみる前に~労災被害は労災保険でカバー

労災による被害は、労災保険でカバーするのが一般的になります。

労災保険により、以下の損害が補償されます。

療養補償給付
休業補償給付
傷病補償年金
障害補償給付
遺族補償給付

これらの給付は、会社の故意過失にかかわらず受給をすることができます。

そのため、まずは労災保険の申請を考えましょう。

労災給付の内容についての詳細は、以下の記事をご確認下さい。

2、労災で損害賠償請求をする場面とは


 では、労災で会社等に損害賠償請求をすべき場面とは、どのような場面でしょうか。

労災保険では、労災によって被った全ての損害が補償されるものではありません。

また、会社や加害者に対して直接請求をしたい場合も検討すべき場面といえます。以下詳述致します。

(1)労災では、慰謝料や物損の補償が無く、金額も不十分である

労災保険による補償は、給付基礎日額の全額の支払を受けられるものではありません。

例えば休業補償給付ですと、労災保険では給付基礎日額の80%(休業(補償)等給付:60%、休業特別支給金:20%)までとなっております。

また、労災では、慰謝料や物損は補償の対象ではありません。

このように、労災保険で受けることができる補償は、労災によって被った損害の一部であるといえます。

特に労災により、後遺障害が生じるような重大事故の場合は、多額の慰謝料が認められるケースもありますので、損害賠償請求についても十分に検討しましょう。

(2)会社に対して責任追及をしたい場合

会社に過失や注意義務違反がある場合は、民事上の損害賠償責任を負います。法律構成としては、

民法上の不法行為責任の追及
労働契約法上の債務不履行責任の追及

が考えられます。

①民法上の不法行為責任について

民法上の不法行為責任には、一般の不法行為(民法709条、710条)、使用者責任(民法715条)、工作物責任(民法717条1項)があります。

一般の不法行為では、会社側に故意または過失があり、労災が生じてしまったといえる場合に責任追及ができます。

例えば、機械作業中に手が機械に巻き込まれたような事故ですと、その機械が危険であり、それを認識又は認識し得たにもかかわらず、事故防止措置をとっていなかった場合などが該当します。

また、使用者責任の典型例は、業務に起因する職場でのパワハラやセクハラを上司が行っていた場合に、会社に対しても責任追及をする場面です。

工作物責任は、土地工作物により労災が生じてしまった場合に、その占有者や所有者に対して責任を追及する場面に用います。

典型例としては、職場でガスの爆発が怒った場合や建物が崩れた場合などがあたります。

②労働契約法上の債務不履行責任

労災事故が生じた場合、会社の安全配慮義務違反を理由として債務不履行責任又は不法行為責任を問うことも考えられます。

会社は、労働者と労働契約を締結しますが、その契約に付随して労働者の安全を危険から保護するように配慮する義務を信義則上負っていると考えられており、それの義務の違反を根拠に債務不履行責任、又は不法行為責任を追及することになります。

(3)加害者に対して責任追及したい場合

労災にあった場合に、会社だけでなく加害者に対しても責任追及をすることも考えられます。

その場合は、加害者に対して不法行為責任を追及することになります。

例えば、上司によるパワハラ、他の労働者からの業務中の暴行、業務中の交通事故などが挙げられます。

このような場合、加害者に対しては、不法行為責任、会社に対しては使用者責任を追及することになります。

加害者に対しては、通常の不法行為責任ですので、その行為の特定などが重要となります。

なお、加害者だけに責任を追及して会社を相手方に入れないことも当然できますが、支払能力の点を考慮しますと、会社を相手方に入れておいた方が支払を確実に受けることができるといえるでしょう。

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