3、一般市民が半グレによる犯罪に巻き込まれやすいケース
一般市民が半グレによる犯罪に巻き込まれるケースがあります。代表的なパターンは次のとおりです。
(1)暴行や傷害を受ける
まず、繁華街などで暴力をふるわれるケースがあります。特に夜間は注意が必要です。
犯行に及んだ半グレには、被害者にケガを負わせると傷害罪、傷害に至らなければ暴行罪が成立します。
刑罰は、傷害罪の場合には「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です(刑法第204条)。
暴行罪では「2年以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留、科料」のいずれかになります(刑法第208条)。
拘留とは、1日以上30日未満の期間にわたって刑事施設に収監される刑罰です。
科料は罰金と似た財産刑で、1000円以上1万円以下の金額を支払わなければなりません。
(2)みかじめ料を請求される
半グレが一般人にみかじめ料を請求してくるケースもあります。
みかじめ料とは、飲食店などが、出店地域を支配している反社会的勢力に対して支払う金銭です。
みかじめ料を断ると嫌がらせを受けるおそれがあるため、やむを得ず支払ってしまう事例が後を絶ちません。
みかじめ料は従来暴力団の資金源となってきましたが、暴力団への法的規制が強化され、最近では半グレが取立てるケースが増加しています。
半グレがみかじめ料を取立てれば、恐喝罪が成立すると考えられます。恐喝罪の刑罰は「10年以下の懲役」です(刑法第249条1項)。
また、嫌がらせをしてきた場合、業務妨害罪が成立することも考えられます。
業務妨害罪の刑罰は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です(刑法233条、234条)。
(3)闇金の被害に遭う
半グレが運営している闇金の被害に遭う方もいます。
法外な金利で金銭を貸し出し、返済できないと嫌がらせをしてくるなど、闇金は非常に悪質です。
多額の請求を受け、生活が崩壊してしまう方も少なくありません。
闇金には、貸金業の届け出をしてない点について貸金業法違反、法外の利息で金銭を貸した行為について出資法違反が成立します。
取り立ての際の行動によっては、脅迫罪や恐喝罪などが成立するケースもあります。
刑罰は、貸金業法違反の無登録営業については「10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、またはその両方」です(同法第47条2号)。
法外な金利での貸付けには「10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、またはその両方」が科されます(出資法第5条3項)。
(4)特殊詐欺を手伝わされる
半グレに特殊詐欺を手伝わされ、自分が犯罪者になってしまうケースもあります。
特殊詐欺とは、被害者に突然電話をかけるなどして言葉巧みにお金を支払う義務があると信じ込ませ、手渡しや振込みといった方法で金銭をだまし取るものです。
従来「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」といった名称で呼ばれてきました。
特殊詐欺は半グレの大きな資金源のひとつです。一般人が、被害者になるだけでなく、加害者として巻き込まれるケースもあります。
具体的には、ネット上の闇バイトの募集に応募してしまったり、闇金に返済できずに手伝いを強要されたりする形で、特殊詐欺に加担してしまう例が後を絶ちません。
手伝いとして、直接現金を受け取る「受け子」、ATMから金銭を引き出す「出し子」といった末端の役割を任されます。
「受け子」として被害者から現金を受け取ると、詐欺罪が成立します。刑罰は「10年以下の懲役」です(刑法第246条1項)。
「出し子」には窃盗罪が成立し「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」の刑罰に処せられます(刑法第235条)。
4、半グレによる犯罪に巻き込まれたときの対処法
もし半グレによる犯罪の被害者・加害者になってしまった場合には、どうすればよいのでしょうか?
半グレの犯罪に巻き込まれた際の対処法を解説します。
(1)半グレとの対面は避ける
可能な限り半グレと直接対面するのは避けてください。
相手は犯罪行為もいとわない集団ですので、金銭の要求や暴力行為に及ぶハードルは一般人に比べて格段に低いです。
直接会えばどんな行為をされるかわかりません。一度弱みを見せると行動がエスカレートする可能性もあります。
もし対面せざるを得ない場面になっても、ひとりで対峙するのは危険です。できる限り複数人で、人目に付く場所で会うようにしましょう。
(2)やりとりを記録して証拠化する
半グレとのやりとりは、証拠になるようにできるだけ記録に残してください。
記録がなければ、被害に遭ったとしても証明することができないため、泣き寝入りになってしまうおそれがあります。
具体的には、書面、メール、SNSのメッセージ、録音、録画などを残しておきましょう。
警察や弁護士に相談する際にも、証拠があればスムーズに話が進みます。
(3)警察に相談する
半グレの被害に遭った、または遭いそうな場合には警察に相談しましょう。
警察も「準暴力団」として扱うなど、半グレへの取り締まりを強化しています。
相談すれば、捜査やパトロールなどの対応をとってもらえる可能性があります。相談の際には証拠があると効果的です。
もし加害者側で特殊詐欺に関わっているのであれば、自首が望ましいでしょう。
そもそも受け子や出し子は、目撃されたり防犯カメラに映っていたりする可能性が高く、逮捕されずに逃げ続けるのは容易ではありません。
自分も罪に問われるおそれはありますが、自首して罪を認めたり、捜査機関に黒幕に関する情報を話したりすることが、罪の重さを判断する際に有利な事情となり得ます(刑法第42条1項)。
どうしても自首する勇気が出ない場合には、事態が悪化する前に弁護士にご相談ください。
配信: LEGAL MALL