子育ての“ダブルバインド”が子に及ぼす悪影響とは?

第2回 知らぬ間にわが子を追い込む“ダブルバインド”とは?
なかなか言うことを聞かないわが子…。そんなとき、皆さんはどうしていますか? 例えば、「○○しないなら、もう知らない! 勝手にしなさい!」とか、おもちゃをなかなか片付けないわが子に「片づけないなら、捨てちゃうわよ!」などと、脅すようにしつけたことはないでしょうか?

●ダブルバインドによるしつけが、子どもに様々な悪影響を及ぼす

「親御さんは、本当は見捨てるつもりもないし、おもちゃを捨てるつもりもないのに、子どもを脅し恐怖心を抱かせることで従わせる。このように、“親の矛盾した命令”で子どもを心理的にコントロールすることを、“ダブルバインド”と言います」

そう話すのは、『一人でできる子になる テキトー母さん流子育てのコツ』 (日本実業出版社)の著者である立石美津子さん。実は、子育てで無意識によくやってしまうこの“ダブルバインド”によるしつけが、子どもに様々な悪影響を及ぼすから要注意だという。その悪影響とは?

子育ての“ダブルバインド”が子に及ぼす悪影響

1)親への恐怖心、不信感が募っていく

「子どもは親が庇護なくして生きていけません。そんな親に“見捨てられるかもしれない…”と恐怖を抱くようなしつけをされていたら、当然、親への恐怖心や不安感が募り、精神のバランスを崩していきます。アメリカの文化人類学者グレゴリー・ベイトソンによれば、“ダブルバインド”がエスカレートすると、稀に統合失調症を発症するケースもあるというので、気をつけましょう」(立石さん 以下同)

2)自然に“ダブルバインド”のやり方を学習し、友達や周りの人に同じことをやるようになる

「日々親から“ダブルバインド”でしつけられた子は、自然にそのやり方を学習してしまいます。そして、例えば今度は、お友達に対して“○○しなかったら、遊んでやらないからな!”などと、相手が絶対に服従せざるをえない脅しでコントロールするようになりかねないのです」

3)成長した子が、親による“ダブルバインド”が脅しとわかったとき、一転、反撃することも…。

「“ダブルバインド”によって、親からコントロールされてきた子どもが、成長して“あれは、親の脅しだったんだ”と気付いたとき、今度は親をコントロールする反撃に出る恐れもあるのです。思春期になって、例えば、“○○買ってくれないなら、万引きしてやるからなっ!”とか、“○○してくれないなら、学校行かないからな!”などと、親を逆に脅してコントロールするようになる可能性もあるのです」

このように、無意識にやってきた“ダブルバインド”が、大きなツケとなって返ってくるというから恐ろしい…。


「もちろん、基本的な親子の信頼関係があれば、たまに“ダブルバインド”のようなやり取りがあったとしても、それが直接悪影響につながるということはないと思います。しかし、無意識だからこそエスカレートしてしまうので、くれぐれも気をつけてください。しつけは“脅し”ではありません。相手の気持ちを動かしたいときは、まず相手の気持ちに“まだ遊び足りないんだね”と寄り添い、その後シンプルに“でも、そろそろ帰ろうね”と伝えることです。親の忍耐も不可欠ですが、愛するわが子のため。ぜひ実践してみてください」

脅すことでその場は解決するかもしれません。しかし、その弊害は想像以上のようです。親の愛情と伝え方の工夫で、お子さんが健やかに成長できるよう導いてあげたいものですね。
(構成・文/横田裕美子)

お話を伺った人

立石 美津子
立石 美津子
子育て本作家・講演家。著書は『一人でできる子が育つ テキトーかあさんのすすめ』『心と頭がすくすく育つ読み聞かせ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『1人でできる子になるテキトー母さん流子育てのコツ』『立石流 子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方 』など。
子育て本作家・講演家。著書は『一人でできる子が育つ テキトーかあさんのすすめ』『心と頭がすくすく育つ読み聞かせ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『1人でできる子になるテキトー母さん流子育てのコツ』『立石流 子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方 』など。