【専門家に聞く】新型出生前診断‎、受けるべき?

第2回 人に聞けない”新型出生前診断‎”のコト
妊婦の血液から赤ちゃんのDNAを採取し、先天性の染色体異常を検出する「新型出生前診断(以下、NIPT)」。20ccほどのわずかな血液採取ながら精度が高いとあって、開始後3年間で3万人を超える人が受診。現在も高い関心を呼んでいます。

とはいえ、年齢制限などの条件があったり、自由診療のため診断費用の相場が約20万円程度だったりと、誰でも気軽に受診できる検査ではなさそうです。

それでも、もし検査対象として条件に合う場合、受診するべきでしょうか? 千葉大学医学部附属病院遺伝子診療部に話を聞きました。

●悩んだらまず遺伝カウンセリングで判断

NIPTについて、受診するべきかどうか、もし悩んでいるのであれば、まずは相談に訪れてほしいと言います。

「受診するべきかどうかについては、それぞれのお考えがあることなので、一概に受けるべきとは言えません。ただ、一人で迷っていたり、家族と話しても決められなかったりする人は、まずは遺伝カウンセリングだけでも受診されるといいと思います。なかには、間違った知識をもとに悩まれている方も多いですが、NIPTはあくまでも、検査手段のひとつであって、出生前診断にはさまざまな種類があります。悩んでいる方にそうした見方を提供するのが遺伝専門医と遺伝カウンセラーの役割なので、まずは相談をおすすめします」(以下、千葉大学医学部附属病院遺伝子診療部)

NIPTを実施している病院は、学会の指針にしたがって必ず遺伝カウンセリングをセットにしているそうです。慣れない専門用語をしっかり噛み砕いてくれる医師とカウンセラーから、正しい情報を得ることは必須です。

「遺伝カウンセリングでは、検査の詳細を十分ご理解いただいた上で、それがご夫婦(もしくはカップル)にとってどのような意味を持つのか、一緒に考えます。また、遺伝カウンセリングでは『もしNIPTを受けて自分たちが“思っていなかったような検査結果”が返ってきた場合はどうするのか、出産を諦めるのか』といったことについても、寄り添いながら考え、そのうえで検査を受けるか受けないかを決めていただくよう支援をいたします」

【専門家に聞く】新型出生前診断‎、受けるべき?

●遺伝カウンセリングは夫婦で受ける

また、遺伝カウンセリングには、夫婦で訪れることを推奨するとのこと。夫婦で遺伝カウンセリングを受けるのと、単独で受けるのとでは妊婦さんにとって、心理的にどのような違いがあるのでしょうか。

「『NIPTは採血だけだから気軽で簡単』と思われる方もいらっしゃると思いますが、赤ちゃんの生命が左右されることが起こり得る検査です。お二人が同じ情報を共有し、医師や遺伝カウンセラーを交えてお互いの意見を交換し、お二人とも納得して一歩一歩を進めていくことが、検査だけでなくその後の出産や子育てにも何かしらのメリットがあると考えられます」

なお、NIPTを受けることができる期間は医療機関によってバラつきがあるとのこと。

「それぞれの医療機関の方針や遺伝カウンセリング・検査の流れなどによって異なるのが実情です。当院では妊娠16週頃までに検査前の遺伝カウンセリングを受けていただければ、対応することができます。遺伝カウンセリング後に、NIPTを希望する場合、多くはその数日後に検査(採血)となります」

かけがえのない赤ちゃんだからこそ、健康に生まれてくるのかどうか知りたいのが親心。受けるべきかを悶々と悩む前に、遺伝カウンセリングに足を運んでみてはいかがでしょうか。

(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)

出生前診断の理解を深める

出生前診断 (ちくま新書)
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西山深雪
820円
新型出生前診断(NIPT)が始まったが、どういう検査なのか、何がわかるのかが一般にも、医療関係者にもあまり理解されていない。いったいどのような考え方・心構えで検査にのぞめばいいのだろうか。本書は、出生前診断にまつわる事実をできる限り客観的に、わかりやすく解説し、診断を受けるべきか迷う人々に、考え方に応じた指針を与えるものである。好むと好まざるとにかかわらず、もはや出生前診断という技術に関与せざるを得なくなった現代人に、最新知識を提示する。
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出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来 (朝日新書)
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885円
70年代に始まり、次々に登場する胎児診断技術。黎明期から最先端事情まで、取材で浮かび上がる出生前診断の「全容」。晩産化が進み、産科医療も進歩するなかで、多くの女性たちが重い問いに対峙し、葛藤している。体験者の生の声、医療者の賛否両論に日本で唯一人の出産ジャーナリストが迫る。
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新型出生前診断と「命の選択」 (祥伝社新書)
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妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる「新型出生前診断」が、二〇一三年四月から日本でも始まった。また、遺伝子を調べることによって、将来発症しやすい病気や確率も判明するようになっている。このような医療技術の進歩は基本的には望ましい。だが、最新技術が命に関わる領域に踏み込んだことで、患者と家族は大きな選択を迫られるようになった。その結果、自らの判断が正しかったのか悩む人が増えている。それに対して私たちはどう考えればいいのだろうか。医学の進歩に、心のケアや倫理は取り残されていないだろうか。現状と課題を、精神科医の立場から考える。
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