●入学式で親が主役の不思議
「親の過干渉は、大学入学前である受験から始まっています。大学の進路決定は子どもの問題であり、あくまで親は相談相手であるはず。しかし最近では、親の理想の進路をゴリ押ししたり、子どもが悩んだ上で決定した進路に対し、非難や不満をぶつけたりする親が増えているように感じられます。これは受験においてよくある親子のトラブルの事例として挙げられますが、親主導で決定した進路に例え子どもが一度は納得したとしても、大学生活で当たり前にあるようなストレスに対して、子どもが“何かが違う”と気づいたら、時すでに遅しとなり、悪い事態を引き起こしてしまうケースも十分考えられます」(水野氏 以下同)
中には、大学の入学式を、まるで自分のことのように楽しむ親の姿も見られるという。
「キャンパスライフの主人公は、もちろんわが子である大学生。しかしながら昨今では、子どものキャンパスライフにまで過剰に干渉する親が増えてきたように感じます。多くのプレッシャーを抱えながら受験を戦い抜いてきた後の晴れ舞台である入学式に、子ども以上に派手な服装で参加する親の姿も散見されます。これではいったいどちらがキャンパスライフの主役かわかりませんね。そのような親たちが、後のキャンパスライフにおいて過剰に干渉をするというのは想像に容易いともいえるのではないでしょうか」
●大学側の過剰なサービスとは?
過保護な親の顔色を窺って、大学側も新たなサービスを始めているそう。
「ある大学教授の話に寄れば、実は最近、講義に一定期間でてこない学生に対して、学校側が、モーニングコールをして起こしたり、親との面談を行うこともあるそうなんですよ。私はこれを聞いた時“まるで不登校支援のようだな”と危機感を覚えました。大学は、本来学生の自主性を尊重し、“自由と責任”を与える場所であるはず。単位取得ができなければ留年、それが当たり前です。ですが、留年する学生の数があまりにも増えてしまうのは、大学側のイメージとしてもよろしくない。少子化に伴い、大学側も生き残りをかけて、様々なサービスという名の過保護を行っている状況なのです。もしかすると、相対的に見ても、今の大学生はひと昔前に比べると、自立していないのかもしれません」
「親の関わり方と大学側の対応が過保護・過干渉傾向になった影響で、結果的に、今の大学生を幼くしてしまっているケースも少なくない」と語る水野氏。子育ては、本来“子どもを自立させること”が最大のテーマであるはず。親も学校も、過保護・過干渉なままでは、本末転倒な事態を引き起こすのはやむを得ないのかもしれない。
(取材・文/吉富慶子)