未来の家電はどう変わる? パナソニック×AIが進む未来

前回に引き続いてお届けする、AI編の第2弾。前回は「AIとは何?」といった基本的なことから今後の展開について、家電の専門家である戸井田園子さんの意見をご紹介しました。そして今回は、国内外におけるAI技術の最先端の動向や、パナソニックの現在および今後の取り組みについて、立命館大学で研究をされる傍らパナソニックと協働開発を行う谷口忠大教授に教えてもらいました。

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第3次ブームを迎え、さらに進化し続けるAI研究の世界

谷口教授の主な研究テーマは、 “記号創発ロボティクス”です。これは一体、どのようなものなのでしょうか?

「人間が話したり運動したりできるのは、成長しながらさまざまなことを経験し、学んでいくからです。プログラミングされたことを機械的にインプットするのではなく、小さなころから自分たちの経験を元に認知発達していきますよね。そして人間は言語やジェスチャーなど、さまざまな“記号”を自ら学び、また生み出すことができます。この自分で生み出す力を、ロボティクス(=ロボット工学)の研究を通じて実現させようというアプローチが“記号創発ロボティクス”です」

そう語る谷口教授によると、現在は第3次AIブームと言われているのだとか。

「さかのぼれば、コンピューターが生まれたのは第二次大戦ごろのこと。ここで人間は、計算をするという、ある意味、自分で考える人工物に出会います。それから、より論理的に思考するものを作ろうということになったのが、第1次ブーム。次に、『知識』に注目して本格的な専門家のような人口知能を構築しようとしたのが第2ブーム。たとえば犬の概念を与えるために、“犬は動物である”など、いろいろな知識を入れてルール付けを試みました。でも、現実はとても曖昧で判断が難しいですよね。犬でも大きさや色などはさまざまですから」

また、画像認識による顔認証でも、同じようなことが起こったのだとか。

「たとえば僕の顔でも、メガネを取ったら“谷口ではない”と認識されるかもしれません。そこで、何がどうあれば谷口なのかをハッキリさせるには、いろいろな情報を与え、曖昧なものでも認識できるようにトレーニングするべきと考えられるようになった。つまり、ルールという考え方から今の機械学習、そして“ディープラーニング”というフェーズに至ったんです」

“ディープラーニング”とは、人間の脳に似せた多段階の処理によってデータの分析と学習を行わせる機械学習の一種。現在の第3次AIブームを牽引するもので、この誕生によりさまざまなことができるようになったそうです。

どんなことが可能になった? 現在のAI技術が実現すること

それでは今、実際にどのようなことができるようになったのでしょうか?
谷口教授によると、「最も注目されているのは画像処理で、他に大きく進歩して着実な需要を作っているのは音声認識と音声合成」なのだそうです。

「あとは自然言語処理において、機械翻訳も注目されている技術でしょう。もちろん、ロボティクスや自動運転車の分野も伸びていますが、これも画像処理や音声認識といった技術の進歩を受けて伸びているというのが実際だと思います」

では、これらの技術はどのような形で家電に落とし込まれるのでしょうか?
谷口教授によると、たとえば画像処理は室内監視や見守りなどに、音声認識はスマートスピーカーなどに活用されているそうです。

「現状での音声認識の使い方はほとんどスイッチ代わりかキーボード代わりですが、利用シーンによって使い勝手が全然変わりますよね。たとえばクーラーをつけるだけなら、いちいちスマートスピーカーに“クーラーをつけて”などと言う前に自分でリモコンを操作した方が早いから、必ずしもいつも音声認識が便利なわけじゃない。一方で、何かの作業で両手がふさがっているときなどは、とても便利だと思います。適材適所シーンを見つけていくことが大切でしょうね」

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