高齢者の脱水“5つの原因”とは? 年間を通して脱水対策が必要な理由【介護福祉士解説】

高齢者の脱水“5つの原因”とは? 年間を通して脱水対策が必要な理由【介護福祉士解説】

高齢者の方にとって気を付けるべき症状のひとつに「脱水」があり、さまざまな疾患の発症リスクを上げる原因にもなります。最悪の場合、脱水の症状が悪化して命を落とすことも。そこで高齢者の脱水症のリスクや予防策について、高齢者施設で介護福祉士として勤務経験のある尾崎さんに解説してもらいました。

監修介護福祉士:
尾﨑 佳奈(介護福祉士)

福祉系の4年制大学卒業、社会福祉士と介護福祉士の資格を保有。中途の聴覚障害がありコミュニケーションに困難があるものの、大学卒業後は障害者支援施設で2年半生活支援員として勤務。その後地域密着型特別養護老人ホームで介護福祉士として5年半勤務。現在は子育てをしながら、主に福祉系のwebライターとして活動中。

高齢者は脱水になりやすい? 主な原因は?

編集部

高齢者が脱水症になりやすい原因はなんでしょうか?

尾﨑さん

原因は大きく5つ挙げられます。
①加齢によりのどが渇きにくくなる
②腎臓の機能が衰え、体内の水分を調整することが難しくなる
③筋肉量が低下し、体内に保持する水分量が低下してしまう
④頻繁に尿意を感じ、失禁を恐れて水分補給をしない
⑤利尿剤により排出される水分量が多くなる
これらが高齢者の脱水症の主な原因として考えられます。

編集部

近年猛暑の中エアコンをつけず脱水を起こし、熱中症になったというニュースをよく見かけます。なぜこのような事故が起こるのでしょうか?

尾﨑さん

高齢者は暑さを感じる機能や汗をかく機能が低下します。そのため、例えば暑い部屋の中にいても、暑いと感じずにエアコンをつけなくても平気と判断してしまうことがあります。さらにのどの渇きも感じにくくなっているため、猛暑でも水分補給をあまりしないことで脱水症になるのです。またエアコンの風が嫌いという理由でつけない方もいらっしゃいます。

編集部

では、夏場の脱水に注意すればよいですか?

尾﨑さん

いいえ、高齢者の場合は冬も注意が必要で「かくれ脱水」と呼ばれる脱水症になっている場合があります。かくれ脱水とは脱水症になる前の段階のことを指し、体がだるい、集中力がない、のどが渇く、ふらつきがあるなどの症状が現れます。かくれ脱水が進行すると本格的に脱水症になってしまうため、そうなる前にこまめな水分摂取と適度な塩分補給を行う必要があります。

高齢者の脱水が危険な理由 症状や疾患との関係について

編集部

高齢者の脱水症はなぜ危険なのですか?

尾﨑さん

高齢者の脱水症は水分補給の回数の減少や腎機能の衰えによって体内の水分が減ってしまい、ナトリウムなどが含まれる電解質のバランスが不安定になることで起こります。そのため血液濃度が上がり、血管性の疾患につながりやすくなるのです。もっと悪化すれば脳梗塞などを発症することによって命を落とすリスクも上がります。そのため高齢者の脱水症は危険なのです。

編集部

脱水症を起こした際の症状について教えてください。

尾﨑さん

めまい、立ちくらみ、倦怠感、のどの渇き、皮膚の張りがなくなる、体重減少などの症状があります。これらの症状は脱水症の中でも初期症状に分類されます。症状が重症化してくると嘔吐や血圧の低下、呼び掛けに反応がないなどの症状が見られるようになります。

編集部

高齢者が脱水症を起こすとどのような危険がありますか?

尾﨑さん

めまいによって転倒し、ケガをすることがあります。ケガの程度によっては寝たきりになってしまう可能性が出てきます。また体内の水分が減少することで血液の濃度が上がり、心筋梗塞や脳梗塞などの血管性の疾患を引き起こしやすくなります。場合によっては命を落とすこともあり、大変危険です。

編集部

脱水症を疑ったほうがよいサインはありますか?

尾﨑さん

いつもよりトイレに行く回数が少ない、または尿量が少ない、尿の色が濃い、暑いのに汗をかいていない、唇や口腔内が乾燥している、食欲がないなどの症状が見られれば脱水症を疑ったほうがよいでしょう。

編集部

脱水症になった場合経口補水液を摂取すればよいですか?

尾﨑さん

はい。経口補水液を摂取する際は一気に飲むのではなく、少量を何回かに分け、時間を掛けて飲むようにしてください。これは一気に飲むことで摂取した水分が尿として排泄されることを防ぎます。しかし嘔吐や意識喪失で経口補水液の摂取ができない場合は無理に飲ませず、病院で点滴を受けるようにしてください。

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