「胃と背中が痛い」のは「胃潰瘍」や「逆流性食道炎」が原因?医師が徹底解説!

「胃と背中が痛い」のは「胃潰瘍」や「逆流性食道炎」が原因?医師が徹底解説!

胃と背中が痛いとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

≫「胃がんの前兆となる5つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!

監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

「胃と背中が痛い」症状で考えられる病気と対処法

胃やみぞおち、背中の痛みを感じると「胃の調子が悪いのかな」と感じるかもしれません。しかし、みぞおちあたりにはたくさんの臓器が集まっており、胃ではない違う臓器が原因のこともあります。今回はどんな場合に病院受診が必要なのか、また病院に行くまでの対処法をあわせて解説します。

胃と背中が痛い症状で考えられる原因と対処法

胃の痛みに加えて、背中も同時に痛む場合、膵炎(すいえん)の可能性があります。膵炎は、膵臓から分泌される消化酵素が、何らかの原因で膵臓自体を溶かすことによって炎症を起こします。その炎症により、膵臓の位置する左上腹部と背中に痛みを生じます。
膵炎の原因は男女で異なります。男性の場合はアルコールが、女性では胆石がそれぞれもっとも多い原因です。そのほかの要因として、喫煙、肥満、脂肪の過剰摂取などがあげられます。
膵炎は重症化すると、命に関わる場合もあり、症状が続く場合や強い場合には早急に医療機関を受診しましょう。ただし、みぞおちや背中の痛みから「膵炎だ」と自分で判断するのは難しく、何科を受診すれば良いか悩むかと思います。まずはかかりつけの内科を受診しましょう。専門診療科は消化器内科です。

胃と背中が痛くて下痢が出る症状で考えられる原因と対処法

胃と背中の痛みに下痢が伴う場合、感染性胃腸炎が考えられます。感染性胃腸炎は、ウイルス、細菌、あるいは寄生虫などによる感染が原因で起こります。主な症状は水様性の下痢、嘔吐、腹痛、発熱です。感染経路は多くが経口で、汚染された食品や水、あるいは感染者との直接的な接触により感染します。治療は症状を和らげる対症療法が中心で、特に水分と電解質の補給が重要です。一度にたくさん水分補給をすると嘔吐してしまうので、スポーツドリンクやリンゴジュースなどを少量ずつ時間を空けて飲むようにしましょう。また、感染予防も非常に大切です。手洗い、食品の適切な調理と保存を意識しましょう。

胃と背中が痛くておならが出る症状で考えられる原因と対処法

胃と背中が痛くておならが出る症状で疑われる疾患は、機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群です。どちらも明確な原因が不明で、検査上明らかな異常が見つからない点が共通しています。機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群は、ストレスによる影響が大きいと考えられています。特定の場所・場面に遭遇すると胃腸の調子が悪くなるなどといった場合は、これらの疾患であることも考えられます。
緊急性はありませんが、下痢や便秘、吐き気などの消化器症状が長くつづいている場合には、日中に消化器内科を受診しましょう。治療は症状に合わせた薬物療法が中心です。

胃と背中が痛くて吐き気がする症状で考えられる原因と対処法

胃と背中の痛みだけではなく、吐き気などの不快感をともなうことがあります。これらから考えられるのは、急性胃炎や逆流性食道炎、または前述の感染性胃腸炎です。
急性胃炎とは、食生活の乱れやストレス、または痛み止めなどの薬によって胃の粘膜に炎症がおきる病気で、腹痛や吐き気などの症状が現れます。進行すると胃潰瘍に移行し、吐血や黒い便がみられることがあるため、重症化する前に早めにかかりつけの内科(特に消化器内科)を受診し、生活の見直しと治療を行いましょう。
逆流性食道炎は胃酸が逆流することによって、食道が傷ついている状態です。主な症状は胸焼けです。また、喉に痛みや違和感を感じる方もいます。逆流性食道炎は、辛い食べ物や脂っこい食べ物、飲酒や喫煙などの生活習慣が原因となります。また1回に大量の食事をする、睡眠不足、ストレスなども原因となる場合があります。疑わしい症状がある場合は、まず生活習慣の改善を試みましょう。それでも症状が治まらない、繰り返すなどであれば、消化器内科を受診することをおすすめします。

便秘で胃と背中が痛い症状で考えられる原因と対処法

便秘によって腸管内にガスが溜まると腹痛が出現することがあります。腸はお腹全体に広がっているため下腹部だけでなく胃が痛いように感じることがあります。まずは便秘にならないよう定期的な運動や食物繊維の摂取など生活の見直しをしてみてください。便秘が続く場合は医療機関を受診し、便秘薬を処方してもらいましょう。また便秘のせいかなと自分で考えている胃や背中の痛みの中には、他の疾患が潜んでいる可能性があります。症状が続く場合はかかりつけの内科を受診し相談しましょう。

すぐに病院へ行くべき「胃と背中が痛い」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

吐血や下血がある場合は、救急外来へ

吐血や下血がみられるということは、消化管のどこかから出血をしていることになります。特に注意が必要なのが「タール便」とよばれる黒い便や吐血です。タール便や吐血をきたしている場合は食道、胃、十二指腸などの上部消化管から大量に出血している可能性があるため、緊急を要します。すぐに消化器内科を受診するか、救急車を呼んで救急外来に搬送してもらいましょう。
また、突然背中の痛みをきたす代表的な病気に大動脈解離があります。これは身体で最も太い血管である“大動脈”の壁が破れてしまう病気であり、大量出血や心タンポナーデ(心臓の周りに血が溜まる)、脳梗塞などにより命を落とす可能性がある病気です。突然の強いみぞおちの痛みや背部痛が出現した場合はすぐに救急車を呼んで病院へ搬送してもらうことも考えましょう。

受診・予防の目安となる「胃と背中が痛い」時のときのセルフチェック法

胃と背中が痛い以外に下痢の症状がある場合

胃と背中が痛い以外に吐血が出る場合

胃と背中が痛い以外に血便が出る場合

胃と背中が痛い以外に血の気が引く感じがある場合

関連記事: