「胃と背中が痛い」のは「胃潰瘍」や「逆流性食道炎」が原因?医師が徹底解説!

「胃と背中が痛い」のは「胃潰瘍」や「逆流性食道炎」が原因?医師が徹底解説!

「胃と背中が痛い」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「胃と背中が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

胃潰瘍

胃潰瘍とは胃の粘膜より下にある粘膜下層や筋層が深くえぐられた状態になる病気です。食事中から食後にかけて痛みを感じやすい点が特徴です。上腹部痛のほか、胸やけ、吐き気、嘔吐、食欲不振なども胃潰瘍の症状です。
胃潰瘍を発症しやすい原因は以下の通りです。

ピロリ菌感染

解熱鎮痛剤(主にNSAIDs)の使用

過度なストレス

喫煙

刺激物や温度が極端に高い・低い飲食物の摂取

暴飲や暴食

不規則な食生活

確定診断は胃カメラによる直接観察です。血液検査やCT検査も同時に行うことがありますが、これらでは確定診断を得ることはできません。
胃潰瘍は、基本的には胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)、H2受容体拮抗薬と、胃の粘膜を保護する防御因子増強薬を組み合わせて治療にあたります。薬物療法に加えて、胃潰瘍を発症した原因を取り除きます。特に胃潰瘍の原因の多くがピロリ菌とされており、ピロリ菌感染が原因である場合は、胃潰瘍が治癒した後に内服薬で除菌をします。また、胃潰瘍の原因は喫煙や食べ過ぎ・飲み過ぎなどの生活習慣が原因のこともあり、再発予防としても生活習慣の改善はとても大切です。

逆流性食道炎

成人の10~20%は逆流性食道炎を持っていると考えられています。胃と食道の間にある逆流を防ぐ筋肉(下部食道括約筋)が正常に機能しなくなることで胃酸の逆流が起こります。食道は胃酸に対する抵抗性がないため、酸にさらされている時間が長くなると食道に炎症が起き、症状が出現します。胸やけを訴える方が多く、その他、すっぱいげっぷ(呑酸:どんさん)、胸やみぞおちの痛みなども起こりえます。
逆流性食道炎の原因には、以下があげられます。

食べ過ぎ

食後すぐに横になる

脂肪の多い食事

激しい運動

過度なストレス

睡眠不足

肥満

高齢

治療薬の副作用

逆流性食道炎の典型的な症状がある場合は問診のみで診断が下ることもあります。確実な診断方法は、食道の炎症状態を内視鏡を用いて直接確認する内視鏡検査です。
生活習慣は逆流性食道炎に影響を与えるため、生活習慣の改善は治療のポイントになります。また、薬物療法も有効です。胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)とカリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB)が第一選択として推奨されています。ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)も酸の分泌を抑制する作用を持ち、処方されることがあります。内科的治療で改善しない場合は、外科手術が検討されることもあります。

膵炎

膵臓から分泌される膵液に含まれる消化酵素が膵臓自体を溶かしてしまうことで膵炎を発症します。症状としては上腹部痛や背部痛、発熱、嘔吐が出現します。膵臓は左寄りに位置するため、右側よりも左側の上腹部として自覚することが多いです。膵炎の診断は血液、尿検査、超音波検査、造影CT検査などを用いて行います。
膵炎と診断された場合、重症度にかかわらず原則入院となります。
主な治療は以下の通りです。

絶飲食(早期の経腸栄養は推奨されている)

点滴補液

痛みのコントロール

飲食をすると膵臓から消化酵素が分泌されてしまうため、それを抑えるために絶飲食となります。膵炎で感じる痛みは非常に強いことがあり、痛みによっては麻薬性の鎮痛薬を使うことがあります。治療期間は重症度により変わり、軽症の場合は1週間程度、重症の場合は数ヶ月かかることもあります。重症膵炎は命に関わるため早期発見・早期治療が重要です。疑わしい症状がある場合は迷わず消化器内科を受診しましょう。

機能性ディスペプシア

ディスペプシアとは、胃もたれやみぞおちの痛みを主とする腹部症状のことで、日本人の1割がこの症状を有しているといわれています。このうち、内視鏡検査などで明らかな異常を認めないものが機能性ディスペプシアです。
原因はあきらかになっていませんが、ストレスがかかわっているのではないかと考えられています。
主な症状は以下の通りです。

食後の胃もたれ

早期膨満感(食べ始めてすぐに満腹感を感じること)

みぞおちの痛み

みぞおちの焼ける感じ

げっぷやおなら(排ガス)

初期治療は胃酸の分泌を抑える酸分泌抑制剤と胃の動きをよくする胃運動機能改善薬を使用します。効果が乏しい場合は、二次治療として抗不安薬や抗うつ薬、漢方などが症状に合わせて処方されます。

「胃と背中が痛い」時の正しい対処法は?

胃と背中の痛みを感じたときでも、事情によりすぐに病院にいけないこともあるでしょう。そのような場合の応急処置としての対処法を解説します。これはあくまでも病院に行くまでのつなぎとして考えてください。

まずは、体をあたためてみることです。身体をあたためることで痛みが改善する場合があります。入浴はもちろん、あたたかい食べものや飲みものを摂取して内側からもあたためましょう。
ストレスを緩和させることも効果的です。胃と背中の痛みを主訴とする疾患の多くはストレスによって悪化する可能性があります。そのため、ストレスをためすぎず緩和させることが大切です。自分の好きなことがストレス軽減につながることも多いですが、忙しい毎日を過ごしている場合はあえて「何もしない」ことも大切かもしれません。
生活習慣を見直すことも良いでしょう。食べ過ぎや飲み過ぎなどの摂取量、栄養の偏った食事内容、香辛料やカフェインなどの刺激物などの食習慣は胃や背中の痛みの原因となり得ます。食生活だけでなく、睡眠不足や喫煙習慣、便秘なども大きくかかわっているため、それぞれを見直すことが治療にも再発予防にも効果的です。
また、胃の不調には市販の胃薬が効くこともあるので試すのも良いでしょう。ただし、原因解明には至らないため、症状が続くようであれば必ず医療機関を受診しましょう。

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