「芸能人が脳卒中で倒れた」というニュースが報道されることもあり、脳卒中は怖い病気という認識は多くの人が持っていると思います。しかし万が一、自分の家族や知人が脳卒中を発症したら落ち着いて対応できるでしょうか? 今回は、脳卒中の症状やいざというときのために覚えておきたい対処法について、「関東脳神経外科病院」の清水先生に詳しく教えていただきます。
監修医師:
清水 暢裕(関東脳神経外科病院)
岩手医科大学卒業。その後、群馬大学医学部附属病院脳神経外科入局、関東脳神経外科病院、佐久総合病院勤務。2021年、埼玉県熊谷市に位置する「関東脳神経外科病院」の理事長に就任。日本脳神経外科学会専門医。山梨大学医学部臨床教授。
脳卒中の症状とは?
編集部
まず、脳卒中について教えてください。
清水先生
脳卒中とは脳血管障害の1つで、「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3つに分類されます。脳梗塞は脳の血管が詰まることで起こり、脳出血とくも膜下出血は脳の血管が破れることで発症します。
編集部
脳卒中というと非常に危険なイメージがあります。
清水先生
そうですね。脳卒中によって一度死滅した脳の細胞は元に戻らないため、後遺症として半身麻痺や言語障害が残ってしまったり、場合によっては死に至ったりすることもあります。現在、日本において脳卒中は寝たきりになる原因の第1位とされています。
編集部
なぜ、脳卒中を発症するのですか?
清水先生
脳卒中の原因は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血のどれが発症したのかによって異なります。
編集部
まず、脳梗塞の原因を教えてください。
清水先生
脳梗塞は「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳梗塞」「ラクナ梗塞」という3種類に細かく分けることができます。アテローム血栓性脳梗塞は動脈硬化が主な原因であり、心原性脳梗塞は不整脈の一種である心房細動が主な原因となります。また、ラクナ梗塞も動脈硬化などが原因となって発症しますが、アテローム血栓性脳梗塞と違ってラクナ梗塞は脳の太い血管から分岐している細い血管が詰まることで起こります。そのほか、原因不明で脳梗塞が起きる場合もあります。
編集部
脳出血やくも膜下出血のように、血管が破れるタイプの脳卒中の原因はなんですか?
清水先生
脳出血にも様々な原因がありますが、多くの場合は動脈硬化や長年の高血圧によって、脳内の細い動脈が脆くなって破綻し、出血が起きることで発症します。一方、くも膜下出血は「脳動脈瘤(脳の動脈がコブ状に膨らんだもの)」が突然破裂することによって発症します。
編集部
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血のなかで、最も多いのはどれですか?
清水先生
現在、日本で最も多いのは脳梗塞のタイプです。以前は脳出血が多かったのですが、高血圧治療が進んだことや、欧米型の食事が広まったことにより、脳梗塞が最も多くなっています。
脳卒中の初期症状
編集部
脳卒中を発症すると、どのような症状が表れるのですか?
清水先生
一般に、脳卒中を発症すると以下の症状が突然起きるとされています。
片方の手足・顔半分の麻痺・しびれが起こる(手足のみ、顔のみの場合もある)
呂律が回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない
力はあるのにバランスが取れなくて立てない、歩けない、フラフラする
片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠ける
経験したことのない激しい頭痛がする
編集部
様々な症状があるのですね。
清水先生
ただし、細かく言えば、障害された脳の部位によって症状が異なります。脳梗塞と脳出血は症状がよく似ていますが、くも膜下出血の場合には突然、激しい頭痛が起きることが最大の特徴です。
編集部
頭痛が激しい場合は、くも膜下出血が疑われるのですね。
清水先生
「バットで殴られたような」と表現されることもあるような激しい頭痛が突然、起こります。多くが吐き気や嘔吐を伴い、意識が朦朧としたり、意識を失ったりすることもあります。
編集部
発症する前に前兆はあるのですか?
清水先生
多くの場合、前兆はありません。ただし、一部の脳梗塞では、同様の症状が一時的に表れることがあります。これを「一過性脳虚血発作(TIA)」と言い、発症後に脳梗塞を引き起こす可能性があります。また、くも膜下出血の場合には事前に「ものが二重に見える」「まぶたが落ちる」などの症状がみられることもあります。
配信: Medical DOC