フジ『大奥』、家治を「バカ殿」呼ばわりした人物は? ドラマのようではなかった史実を解説


家治もこんな笑顔になれるといいね(写真:サイゾーウーマン)

今期放送中の『大奥』(フジテレビ系)。小芝風花がヒロインを務め、KAT-TUN・亀梨和也やSnow Man・宮舘涼太も出演することで話題を集めていたものの、いざ始まると評判は芳しくない様子。同シリーズの熱心なファンである歴史エッセイスト・堀江宏樹氏が、今作の残念なポイントを史実的背景から解説する。

目次

徳川家とオランダ人の交流は本当?

家治がオランダ商館員から取り寄せたもの

ティツィングはドラマのような親日家とはいえない

徳川家とオランダ人の交流は本当?

 『大奥』第5話の後半部では、徳川家治や、大奥の女性たちがオランダ商館長イサーク・ティツィングと謁見する様子が描かれました。ドラマの家治がオランダ語をしゃべりだしたのには驚かされましたが、大奥に招き入れられたティツィングに、側室のお佐保が琴を聴かせたり、女中たちが総出で歓待していた様子は印象的でしたね。こういうことは本当にあったのでしょうか?

 答えは、おおむね「YES」です。

 家治だけでなく、多くの歴代徳川将軍が、オランダ商館員の訪問を楽しみにしていました。ただ、将軍とオランダ人たちの対面は、身分の都合上、御簾越しになるのが常で、さらに通詞(つうじ)とよばれた通訳が両者の対話を取り仕切ります。それゆえに、ドラマのように将軍がじきじきにオランダ語で対話というようなことはなかったはずです。

 ご存じのように、江戸時代の日本は鎖国していましたが、西洋諸国では唯一、オランダとは文化的交流がありました。しかし、そのオランダ人もふだんは長崎の外国人居住地域だった出島に押し込められるようにして暮らさねばなりません。それでも4~5年に1回(頻度は時期によって異なる)、オランダ商館長以下、医師や職員たち何名かが江戸城を訪ね、将軍や幕府の重役たちに珍しい異国の手土産をわたし、対話する機会が設けられていました。

 将軍だけでなく、江戸幕府の要人たちも熱心にオランダ人たちと質疑応答を繰り広げたことが知られています。つまり、鎖国はしていても、江戸城上層部は外国文化に対する興味関心を失っていなかったのです。

関連記事: