●どの場面でも話すことができない“全緘黙症”と、ある特定の場所で話せないが家庭では話す“選択緘黙症”がある
「“緘黙症”とは、不安や恐怖が原因で、本人に話したい意思があっても話せない状態をいい、情緒障害や精神疾患として位置づけられています」
そう話すのは、『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』の著者・立石美津子さん。緘黙症には2つの種類があるという。
「家庭でも、どの場面でも話すことができない“全緘黙症”と、話すことを期待されている特定の場所、例えば幼稚園や保育園、小学校などでは一切しゃべらないけれど、家庭ではよくしゃべるなどの“選択性緘黙症”(場面緘黙症と呼ぶ場合もある)があります。たいていは後者で、集団生活が始まる幼稚園入園を機に周りが気づくことが多いです。また、声だけでなく、笑顔がなくなったり、身体の動作が止まったりする症状で表れる場合もあります」(立石さん 以下同)
●改善させようと追い込まず、専門家や周りの協力を得ながら、その子に合った接し方でサポートしよう!
言葉の遅れや発声障害で話すことができないのではなく、本人は話したくても話せない状態であることを、周りが理解することが大事だという。
「“どうして話せないの?”“少しでも勇気を出して話してみなさい!”と、家族が詰め寄ったり、なんとか改善させようと強制的に話す訓練をすると、ますます追い込まれてしまい逆効果です。もし心配であれば、家族だけで抱え込まず、まずは最寄りの自治体に連絡し相談する場所を紹介してもらったり、直接、小児精神疾患を専門に扱うクリニック、大学病院を受診し相談しましょう」
また、幼稚園や学校で話せないことをからかわれたりすると、さらに話すことに対して不安感を覚えたり、人が集まるところを避けたり、対人恐怖や引きこもりなどの二次的な問題に発展してしまうリスクもあるという。だからこそ、家族は“無理に話さなくてもいいんだよ”と対応してほしいと、立石さんは話します。
「話すことができなくても、指差しや筆談、表情、身振り手振りなどのジェスチャーなどを通してコミュニケーションをとることができます。無理に話させようとするのではなく、本人ができる方法に寄り添い、できるだけ精神を安定させてリラックスして過ごせる環境を準備してやりましょう。そして、今まで話すことや感情表現ができなかった場面や状況で話すことや感情表現ができたときは、どんな小さなことでも褒めてやりましょう。それが本人の自信につながります」
緘黙症は情緒障害として位置づけられているため、学校などのサポート体制も整っているという。
「小学校で“支援学級”や通常学級に籍を置きながら別の授業を受けられる“通級制度”などの特別支援教育を受けることも可能です。このように、親御さんや周りの人が症状に気づければ、様々なカタチで困難を乗り越える手助けをすることができますね」
専門家や周りの人の協力を得ながら、その子に合った接し方でサポ―トすることが何より大切なようです。
(構成・文/横田裕美子)