大谷翔平の通訳・水原氏「ギャンブル依存症」と告白か。なりやすい人の特徴や原因を医師が解説

大谷翔平の通訳・水原氏「ギャンブル依存症」と告白か。なりやすい人の特徴や原因を医師が解説

大谷翔平選手の通訳を務める水原一平氏が「自分はギャンブル依存症です」と告白したと、ロサンゼルス・タイムズなどアメリカの複数のメディアが報じています。

ギャンブル依存症は数ある依存症のうちの1つで、ギャンブルにのめりこんでしまう病気を指します。

借金をするなど、自分や周囲の生活に不利益や迷惑が生じることをわかっていながらも、より大きな刺激を求めてギャンブルを続けてしまうことが特徴です。

今回はギャンブル依存症について、かかりやすい人の特徴、身近な人がこの病気になった時の対処方法を紹介します。

※この記事はMedical DOCにて【「ギャンブル依存症」の特徴・原因はご存知ですか?医師が監修!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

≫アルコール依存症の治療法を解説「孤独にならないことが治療継続のカギ」

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

ギャンブル依存症の特徴と原因

ギャンブル依存症とはどんな病気ですか?

ギャンブル依存症は依存症の1つです。娯楽で始めたギャンブルが、のめりこむあまり自分に不利益で有害なものになっていて、自己制御できない状態を指します。賭け事に膨大な金額や時間を使うことで自分の社会生活や家族に迷惑がかかっていると知りながら、より大きな刺激を求めて賭け事にのめりこんでいってしまうのです。
この病気に関わる賭け事や遊戯として、日本でパチンコ・スロットマシーンが一番多く、競馬や麻雀がそれに続きます。2009年の全国調査では、成人男性の9.6%、女性の1.6%がこの依存症であるとされました。
また2016年の患者数は外来患者が2929人、入院患者が261人で、治療をしていないけれども依存と思われる人は約70万人に上ります。この数字からもわかる通り、この依存症は病気としての認識が非常に低く、アルコール依存症などに比べても、治療に取り組んでいる人はごくわずかというのが現状です。

ギャンブル依存症の特徴を知りたいです。

この病気は数ある依存症の1つです。依存症の特徴としては以下のようなものが挙げられます。

ある物事・行動・関係性にのめりこんでしまい、自己制御ができなくなる。

依存行動によって自分の健康や生活、家族に問題が生じていてもコントロールできない。

依存症は物質依存と行動嗜癖の2つに分かれますが、ギャンブル依存症は行動嗜癖に分類されています。行動嗜癖はほかに、過度な買い物・万引き・スマホゲーム・自傷行為などが挙げられます。物質依存の例としては、アルコールや薬物依存症が有名です。
この依存症の特徴により社会生活に支障が出て、仕事を解雇されたり、借金に追われたりする人も多いです。家族など身近な人が被害にあう病気でもあります。

ギャンブル依存症の原因はなんですか?

ギャンブル依存症は脳のドーパミンに関する病気です。パチンコや競馬で勝った時に、脳からドーパミンという物質が出て快楽を得ます。逆に負けた時は「次は勝つ」という思いがドーパミンを出して興奮します。この行為を繰り返していくと、ギャンブルという行為に対して耐性ができてしまい、より大きな刺激でないと快楽を得られなくなるのです。
この場合の大きな刺激とはつまり、巨額の賭け金などを指します。多少の勝ち負けでは脳の耐性で快楽が得られなくなってしまうので、より大きな刺激を求め、ますます賭け事にのめりこんでいってしまうのです。

ギャンブル依存症になりやすい人はどんな人ですか?

依存症は誰でもなりうる病気です。数ある依存症のうち、ギャンブル依存症は日頃からパチンコやスロットなどの遊戯や賭け事に親しんでいる人がなりやすい病気といえるでしょう。さらに依存症は本人ではなかなか気づきにくいという特徴があります。
周囲の人が、少しでも本人の行動がおかしいと思ったら、相談機関に相談してみることが大切です。

ギャンブル依存症の診断と治療

ギャンブル依存症はどのように診断されますか?

本人へのヒアリングによって、ギャンブルへの依存度を診断します。具体的には、賭け事への強烈なとらわれ・欲望と渇望・勝ち負けや結果への慣れ・欲望のコントロールの困難さなどをヒアリングして診断を下します。この病気の診断の基準として用いられている米国の診断基準(DSM-5)を紹介しましょう。

望む興奮を得るために、掛け金の増額が必要になる

ギャンブルをやめると落ちつかなくなったり、いらいらしたりする

ギャンブルを控えよう・減らそう・止めようと努力を繰り返したが成功していない

過去のギャンブルの経験をまざまざと思い出したり、次のハンディ付けや計画を考えたり、資金を得る方法を考えるなどいつもギャンブルのことを考えている

苦痛な気分(無力感・罪悪感・不安・抑鬱)の時にギャンブルに走ることがよくある

負けた分を別の日にとり返そうすることがよくある

ギャンブルに熱中している程度を隠そうと嘘をつく

ギャンブルのために重要な人間関係・仕事・教育・職業上のチャンスを失いかけるか、失ったりしたことがある

賭け事が原因の絶望的な経済状況を救済する金を出してほしいと他人に頼る

カウンセリングでは過去1年でこうしたチェック項目に当てはまるかどうかをチェックし、重症度を調べます。アメリカでは、上記のうち4〜5項目当てはまれば軽度、6〜7項目で中度、8〜9項目で重度とされています。

ギャンブル依存症は治るのでしょうか?

適切な治療と支援を受ければ回復が可能な病気です。ただしこの病気は脳の機能が関係しているので、本人の気持ちや努力だけで治るものではありません。専門機関の治療や自助グループの支援を受けながら回復していくことが大切です。

ギャンブル依存症はどのような治療を行いますか?

精神療法を行います。具体的には「ギャンブルをしたい」という自分の渇望に対抗するスキルを身につけ、自分の問題を反省し、生き方を改めていくといったようなカウンセリング手法が取られます。
またこの病気では、本人だけでなく家族など周囲の人にも迷惑や被害が及んでいることが少なくありません。それに伴う心理的な問題や本人の罪悪感なども乗り越えていく必要があります。
そしてこの病気ではカウンセリングだけではなく、同じ病気を抱える人たちの自助グループに加入し、支援を受けることもおすすめします。自助グループではグループミーティングによる報告活動などの定例活動を行っており、この活動がミーティングによって長期的にギャンブルから離れられ、生き方が変わったという人も多いです。

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