アグネスチャン「乳がん」で全摘出を覚悟。舞台に戻り命の尊さを伝える

アグネスチャン「乳がん」で全摘出を覚悟。舞台に戻り命の尊さを伝える

笑顔の舞台裏で乳がん治療と闘った。アグネスチャンが伝えたい命の尊さ

魚森先生

術後、短期間でお仕事に復帰されたと聞きました。

アグネスさん

そうですね。医師が「ドレーンが取れればコンサートできるんじゃない?」と言ってくれたので、10月1日に手術をして、10月6日にはコンサートをする予定でした。術後、思ったより体調が戻らず、何度も吐き、食欲もなく6日のコンサートはキャンセルしましたが、10日のコンサートは予定通り行うことができました。

魚森先生

色々ご苦労もありましたか?

アグネスさん

はい。術後におっぱいが小さくなることばかり心配していたのですが、術後は腫れるんですね。10日のコンサートでは、衣装がキツくて背中のファスナーが上がりませんでした。
さらに、右胸の手術だったので右手が思うように使えなかったのですが、私、左手でマイクを持つと音を外してしまう癖があったので(笑)。右手でどうにかマイクを持って歌いました。

魚森先生

お仕事を続けながら、放射線治療もされたのですよね?

アグネスさん

はい。治療自体は2〜3分ですが、地方の仕事もあったので毎日の通院が大変でした。でも、お友達ができて待ち時間に一緒に過ごしたり、お守りや食べ物を交換したり、大変だけど楽しかったですね。
看護師さんや放射線技師さんもいつも笑顔で、クリスマスには皆さんサンタさんの帽子をかぶって出迎えてくれたり、飴を配ってくれたりして……飴1個だけど、本当に嬉しくて気持ちが明るくなりました。
放射線治療をしていた時は、胸が焼き魚みたいな感じで焼け焦げていったのも辛かったですが、今は戻っています。

魚森先生

その後にホルモン治療をされたのですよね。

アグネスさん

その後のホルモン治療は、もっと辛かったです。
「更年期の症状が出る」と聞いていたのですが、それに加えて私の場合は湿疹が出ました。湿疹を隠すための厚塗りメイクが上手くなったのはこの頃です(笑)。湿疹だけなら良いのですが、コンサートの前日に顔がパンパンに腫れてしまった時は本当に悲しかったですね。顔が大きく目が小さくなり、メイクで応急処置してもらったのですが、自分の顔を鏡で見た時、泣いていいのか、笑っていいのか……。
その日のお客さんは「アグネスさん、テレビと違うなぁ」と思っていたと思います(笑)。

魚森先生

捉え方が前向きですね。

アグネスさん

でも、当時はすごくめげました。
当時小学生の三男も、私のこんな姿を見るのが辛かったようで、家にいても笑えない日もありました。
そんなある夜、三男が私のところに来て「今日のジョーク!」と言い、インターネットで仕入れてきた一発芸をやってくれました。その時は泣きながら大笑いして「子どもがここまでやってくれているのに、私は何て弱気だったんだろう……」と、そこからは前向きになりましたね。

魚森先生

ご家族で支え合うこともとても大切なことですよね。

アグネスさん

乳がんが再発しないためにはどうしたらよいでしょう?

魚森先生

これをしたら再発しない、というのはありません。大豆イソフラボンなどの効果が謳われているものもありますが、エビデンスはまだ確立されていません。やはり、ストレスをためないことが大事だと思います。
例えばステージ1だと再発率は10%ですが「その10%に入ったらどうしよう」と思うか「10人中9人は再発しない」と考えるかで、ストレスが変わってきますよね。
だから私は「神様しかわからないことで悩んだって仕方ないから、前向きに」とお話ししています。
もうひとつ大事なことは、検診ですね。

アグネスさん

私は、乳がんのお友達を作ることが大事だなと思います。
「乳がんになったからこそできること」を仲間と発見すると、自分の力が湧いてくるんですよ。
がん治療で孤独を感じている方は、ぜひ仲間を探していただきたいですね。

魚森先生

アグネスさんは、がん治療がよりよくなるような活動をたくさんしていますよね。

アグネスさん

はい。2008年から日本対がん協会の「ほほえみ大使」の活動をしています。当時の日本の乳がん検診の受診率が20%未満と知り、乳がん検診の受診をメディアで呼びかけたり、政府に働きかけて検診のクーポンを出してもらったりなどして、検診率を上げることに取り組んでいます。

魚森先生

検診の受診率をどうやって上げるかは、我々も頭を悩ませています。
アグネスさんのような著名な方が発信してくれるのは本当にありがたいですね。
受診率が上がらないのはどうしてだと思いますか?

アグネスさん

日本の女性は周りを優先して、自分のことを後回しにしてしまうからだと思います。
やっぱり自身の健康が大切です。そのため、男性にお願いします。お母様や奥様に「検診に行ってみたら?」と伝えてください。「検診の後に食事に行こうよ」や「僕のためだと思って行ってよ」など、なんでも良いので、男性に頑張っていただきたいと思いますね。

魚森先生

自分のことを後回し……それはすごくしっくりきます。日本の女性は、確かに自分のことを後回しにしてしまいますね。

アグネスさん

検診方法も、マンモグラフィとエコー検査があって、少しわかりにくいのかもしれませんね。

魚森先生

乳がん検診の方法としては、2年に1回のマンモグラフィのみが認められていますが、日本人の乳房はいわゆる「高濃度乳房」と言われていて、マンモグラフィで白っぽくうつるタイプが多く、同じく白くうつる乳がんを見つけにくいという難点があります。
一方で、しこりや石灰化の発見にはエコー検査よりもマンモグラフィが優れていますので、やはりどちらも受けていただきたいですね。

アグネスさん

ひとりで悩まずに何か少しでも気になることがあれば、お近くの病院で相談していただきたいです。検診に行って早期発見ができれば、乳がんはこわくないです。

魚森先生

そうですね。現在の制度では、検診を受けるタイミングが定められていますが、気になるところがあれば次の検診を待たずにぜひ相談してください。女性特有の病気で、受診を躊躇ってしまうお気持ちもわかりますが、何か力になれるはずですので、ぜひ相談してほしいです。
今日はアグネスさんのお話を聞いて、とても感銘を受けました。ありがとうございます。

アグネスさん

乳がんになる前は、生きているのは当たり前で、子どもたちの将来も当然見届けられると思っていましたが、乳がんになって、それは当たり前ではないと感じました。生きているだけで感謝です。こうやって皆さんと会ってお話ができているということも、ひとつの恵みだと思います。
がんになって、毎日がより輝くようになりました。それもやっぱり、早期発見・早期治療できたからです。
皆さんももっと、自分の体を大事にしてください。それが、自分のためにも、愛する人のためにもなります。魚森先生、今日はありがとうございました。

編集部まとめ

乳がんといっても種類があり、治療の選択肢、手術の選択肢もさまざまで、さらには早期発見のための検診方法にも種類があります。
今回の対談では、アグネスさんの経験を通し、さまざまな選択肢を専門医の立場で解説いただき、とても分かりやすかったのではないでしょうか。
「自分のことは後回し」にしている女性の皆さん、家族のために、大切な人のために、まずは乳がん検診の予約をすることから始めませんか。

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