セクハラ辞任が相次ぐENEOS、「不適切にもほどがある」昭和体質を変えるには?

セクハラ辞任が相次ぐENEOS、「不適切にもほどがある」昭和体質を変えるには?

●取締役に女性はたったの1人、再発防止策は本当に機能するのか

齊藤氏は、杉森氏がセクハラで失脚しているのを見ていたのに、自分もセクハラをして失脚しています。そして、親会社のトップ2人がセクハラで失脚したのを知っているグループ会社のトップである安茂氏もまたセクハラで解任というのですから、異常事態であることは確かです。

この危機意識の低さは、おそらく企業風土にあるのだと思います。これらトップだった人たちは昭和の時代の人たちなので、以前から飲み屋でのこれら蛮行は日常茶飯事だったのでしょう。そして、それを許す風土がこの企業にはあったのだと思います。それが責任ある立場になっても何も変わらなかった(というよりやめられなかった)ということなのでしょう。

昭和時代の残党は、この企業には、まだたくさんいるでしょうから、これからもこのような不祥事はあるかもしれません。しかし、研修を繰り返し、セクハラに対して厳しい対応をしていけば、時間はかかるかもしれませんが確実にセクハラは減っていくはずです。

社会の目も厳しくなっており、スマホでいつでも写真が撮られるようになり、誰でもネットで意見を言える時代です。そのため、かつてのように、権力やお金で問題をもみ消すことは難しくなってきています。

企業のトップになる人は、企業防衛として、セクハラやパワハラをすれば、録音された内容や写真がネットにさらされるということを常に肝に銘じておく必要があります。

ENEOSホールディングスは、2024年4月から新社長に宮田知秀氏が就任すると発表しています。宮田氏は、東燃系で製造部門出身とのことで、これまでの日石系の販売部門出身者とは異なる経歴であることから、改革が進むのではないかと期待されています 。

ただ、執行部の体制を見ると、監査等委員でなない取締役9名の中に女性はたった1人だけです 。女性の取締役が多ければセクハラが起きないというわけではありませんが、少なくとも女性取締役が同席するような場所でセクハラは起きにくいでしょうし、男性取締役だけよりもセクハラには気をつけるはずです。

取締役に適する女性人材がまだ育っていないということかもしれませんが、それ自体も問題です。多様性の時代ですから、社外取締役でも良いので、女性の積極的登用が求められます。役職員の意識改革は簡単にはできるものではなく、時間がかかるものですが、新社長には古い慣習を刷新して、新たなENEOSを作ってもらいたいと期待しています。

今回は、ENEOSのセクハラ問題を取り上げましたが、このような問題は、他の企業でも起こり得ます。特にワンマン社長がいるような会社では、他の役職員が社長に対して注意することは難しいと言えます。だからこそ、規定を整備して、研修を実施することが重要になります。その場合、必ず、社長にも研修に参加してもらい、社長にこそ意識を変えてもらわなければなりません。

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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