インターネットで世界中の地図を無料で見られる「グーグルマップ」。そこに書き込まれる悪質なクチコミを放置しているとして、医療機関に勤める医師らが近く、運営するグーグルに対して損害賠償を求める裁判を起こす。
グーグルマップでは、地形や道路だけでなく、飲食店やホテル、観光地の住所や営業時間などの情報をクリック一つで入手でき、利用者が感想を書き込んだり、星マークによる5段階の評価を付けたりもできる。一方、誹謗中傷の温床になっていると指摘する声もある。
その大きすぎる影響力が世界で危惧されつつある巨大プラットフォーマーに対し、日本の一般市民が連帯して訴える今回の動きがどれだけ広がりを見せるか注目される。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「当事者になって初めて気づいた」
原告となる予定の東京都内の医師は「最初は自分も便利だと思って使っていたが、当事者になってその問題に気づいた」と振り返る。
この医師は数年前に開業した際、隣のビルに入る駐車場の利用券を間違って自分の病院の受け付けに持ってくる人が散見されることを不思議に思っていた。
グーグルマップを見て謎が解けた。地図上で自分の病院が隣のビルに入っているものとして表示されていたのだ。
知らない人が勝手に誤った住所をグーグルマップに書き込んでいたと分かり、グーグルに修正を依頼したが、1年ほど無視されたという。
●不適切の基準が不明 「泣き寝入りするしか…」
クチコミの仕組みについて、グーグルは「Google Japan Blog」というページで以下のように説明している。
<クチコミが投稿されると、クチコミがポリシーに違反していないことを確認するために、直ちに管理システムに送られます。Google の管理システムが建物への不正侵入を防ぐ警備員のようであるのに対し、Google のチームは、不適切なコンテンツが Google に投稿されるのを防いでいます。>
<Google のオペレーターチームは、24 時間体制でフラグが立てられたコンテンツを確認しています。ポリシーに違反するクチコミが見つかった場合は Google から削除し、場合によってはユーザーアカウントの停止や法的措置などの対応を取ります。>
しかし、冒頭の医師によると、実際にどのような基準で違反と判断されているかは利用者には分からない。
さらに、問い合わせ先がどこにあるのか分かりにくく、問題がありそうな投稿を報告しても放置されることが続いているという。
医師は「グーグルにはちゃんと対応する窓口がなく、ありえない。訴えること自体が難しく、書かれた方は泣き寝入りするしかない」と批判する。
配信: 弁護士ドットコム