過払い金の計算方法とは? 弁護士が分かりやすく解説します!

過払い金の計算方法とは? 弁護士が分かりやすく解説します!

5、過払い金計算ソフトの使い方

では、実際に過払い金計算ソフトを使って、正確な金額を求めていきましょう。

(1)用意すべきもの

過払い金を本格的に計算するにあたって準備すべきものは以下の通りです。

Excelソフトを使えるパソコン
過払い金計算ソフト
取引履歴

(2)「取引履歴」ってなに?

「取引履歴」とは、「2」で記載したような

借入額
契約上の利率
返済額(分割なら各回分も)
遅延履歴

などの情報のことです。いわゆる借金の履歴です。

取引履歴は、消費者金融などの貸金業者に電話や郵便、FAXで要求することにより取り寄せることができます。

「貸金業者に取引履歴を請求したら脅かされるんじゃないの?」ということを気にされる方がいらっしゃいますが、そのようなことは全くないのでご安心下さい。

最高裁判所の判例で「貸金業者は債務者の取引履歴開示請求に応じる義務があり、拒否すれば損害賠償の対象になる」とされているので、貸金業者は取引履歴を請求されたら開示しなければなりません。

なお、貸金業者の連絡先は下記より連絡先一覧をダウンロードして頂くことができます。

貸金業者の連絡先一覧のダウンロードはこちら

また、電話ではなくFAXや郵送で取引履歴を請求される場合には、書面の雛形は下記よりダウンロードできます。

取引履歴開示請求書のダウンロードはこちら

電話で取引履歴を請求したり、FAXや郵送で取引履歴開示請求書を送って、2週間〜数ヶ月で取引履歴があなたの手元に届くでしょう。

(3)いよいよ引き直し計算

取引履歴が手元に揃ったら、いよいよ引き直し計算です。

入力方法は色々ありますが、まずはオーソドックスに、以下の手順で進めていくとよいでしょう。

①まずは取引履歴を見て以下の内容を確認します。

下記画像の事例であれば、平成14年10月29日が最初の取引日で、53万円の借入れをしていることを確認します。

最初の取引日 →下記画像の赤字で囲った部分

最初の取引日の取引金額(いくら借入れたか?) →下記画像の青地で囲った部分

②取引(借入れか返済)があった日付の入力

赤いラインで囲った部分に入力して下さい。

こちらの事例では初回取引日が平成14年10月29日なので、「H14.10.29」と入力します。

③当該取引日の取引金額(借入れ金額、返済金額)の入力

借入れの場合は赤いラインで囲った部分に入力して下さい。

一方、返済の場合には青いラインで囲った部分に入力して下さい。

こちらの事例では初回に53万円の借入をしているので、赤で囲まれた部分に「530,000」と入力します。

④当該取引日の時点での利率(法定利息)の入力

法定利息は借入残高により変わりますが以下の通りです。

借入残高が10万円未満
20%

借入残高が10万円以上100万円未満
18%

借入残高が100万円以上
15%

なお、一旦利息が下がるとその利息がずっと維持されます。

つまり、一度借入金額が100万円以上になった場合には、その後返済を繰り返すことによって借入金額が100万円未満になっても利息は18%にはならず、15%のまま維持されます。

上記を踏まえて、適切な利率を赤いラインで囲った部分に入力して下さい。

⑤以後、次の取引日について、①〜④の流れで進めてこれを繰り返していく

その後は、古い取引日から一つずつ①〜④の流れで入力していくことになります。

(4)全ての取引について入力が終了したら?

全ての取引を入力した段階で、残元金がマイナスになっているか確認しましょう。

マイナスになっていれば過払い金が発生しています。

その上で、計算をした日付の、「残元金」と「過払利息残額」を加えたもの(いずれもマイナスになっていると思いますが、その合計が過払い金となります)がご自身の過払い金額となります。

6、過払い金があるのに請求しないと請求できなくなる?時効と時効を止める方法

ご自身で計算されてみていかがでしたか。

残元金がマイナスになっていましたか。

その場合には、過払い金があるということです。

ですが、これで安心して請求するのはまたの機会でいいや!とお考えの方いらっしゃいませんか。

もし、請求するのは後でいいやとお考えになって請求しないでいると、「時効」という制度によって、せっかくの過払い金を貸金業者に請求できなくなってしまう場合があります。

(1)消滅時効

どういうことかというと、法律の規定によって、最終取引日から10年が経ってしまうと、仮に過払い金があったとしても過払い金が消滅してしまうのです。

この場合、金額の多寡は関係ありません。

発生していた過払い金の全てが請求できなくなってしまうのです。

ですので、ご自身の取引履歴をきちんと見て頂き、最終取引日が10年経っていないかどうかをしっかり確認して下さい。

なお、過払い金の請求期限について詳しく説明した記事がありますので、ご興味があればこちらもご参考下さい。

(2)消滅時効を止める方法

では、もしご自身の取引履歴を見て、最終取引日からもうすぐ10年という場合にはどうしたらいいでしょうか。

先程も説明しましたように、10年経ってしまった場合には、時効によって過払い金は請求できなくなってしまいます。

ですので、何としてでも時効で過払い金が無くならないようにしたいものです。

そのような場合には、いち早く裁判を起こして請求する方法があります。

ですが、そんなにすぐに訴訟を起こすのは難しいでしょう。

ですので、もし、すぐに裁判を起こすのが難しいようであれば、まずは内容証明郵便等を貸金業者に送付して過払い金請求をする意思表示をしておきましょう(このことを法律上「催告」と言います。)。

催告をすることで、時効が完成するのが6ヶ月先延ばしになります。

ただ、この催告は、時効の期間が6ヶ月先延ばしになるだけですので、この6ヶ月以内に実際に裁判等を起こす必要があります。

もし、ただ単に催告をしただけでは、結局、時効によって過払い金は請求できなくなってしまいます。

なお、消滅時効を止める方法については、「過払い金返還請求する権利の消滅時効期間と時効を止める方法」でも説明していますので、もしよろしければこちらもお読み下さい。

関連記事: