肩の痛みや違和感は決して珍しい症状ではなく、多くの人が放置してしまっているのも事実です。しかし実は、肩の痛みを治療せずにいるとさらに症状が悪化したり、思わぬ疾患が隠れていたりすることもあるそうです。井出整形外科クリニックの井出先生に詳しくお聞きしました。
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監修医師:
井出 学(井出整形外科クリニック)
2007年東京医科大学卒業。横浜医療センター、横浜市立大学附属市民総合医療センター、相模原協同病院、平塚共済病院、横浜市立大学附属病院、横浜市立市民病院整形外科などを経て2023年10月井出整形外科クリニック院長就任。日本整形外科学会専門医、日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医など。
慢性化する肩こりのリスクとは?
編集部
肩こりが慢性化している人も多いと聞きます。
井出先生
はい、特に日本人は外国人に比べて肩こりに悩まされやすいといわれています。その理由は、「日本人は体型が華奢で筋肉量が少ない」ということが挙げられます。また、「床に座る、お辞儀をするといった日本ならではの習慣が肩こりの原因につながっている」ということもいわれています。
編集部
いろいろな原因があるのですね。
井出先生
特に近年は、床に座ってデスクワークをする方や普段から前屈みの姿勢になる機会が多く、肩こりに悩む人がますます増えているように思います。
編集部
肩こりが慢性化すると、何かリスクがあるのですか?
井出先生
はい、一般に肩こりを放置すると「負の連鎖」を起こしやすいとされています。
編集部
負の連鎖とはなんですか?
井出先生
そもそも肩こりの原因は同じ姿勢を長時間続けることによる筋肉の緊張です。筋肉が緊張すると血行が悪くなって筋肉はますます硬くなります。すると疲労物質が筋肉の中に蓄積され、肩の張り感だけでなく、痛みを生じさせます。さらに今度は痛み自体がストレスとなって自律神経を刺激し、ますます血流を悪くしてしまうのです。
編集部
負の連鎖が続く限り、肩こりはなくならないのですね。
井出先生
なくならないだけでなく、症状は全身に広がることもあります。痛み、手足のしびれ、頭痛、体のだるさ、疲労感といった症状だけでなく、うつ、不眠、意欲の低下といった精神症状にまで進行することもあります。
編集部
うつや不眠なども招くのですね。
井出先生
実際のところ、肩こりが慢性化してうつなどの精神症状を招くこともあります。反対に、精神症状が肩こりを招くこともあるので、どちらが原因かということはわかりません。しかし、両者の間に相関関係があることは知られています。
すぐに受診すべき「肩こりの症状」とは?
編集部
肩こりに関する負の連鎖を断ち切るためにはどうしたら良いのでしょうか?
井出先生
ストレッチやマッサージをしても2週間程度、肩こりがよくならないという場合には、まず整形外科を受診してください。一般には、次のような症状があれば早めに受診することをおすすめします。このような場合には、ほかの疾患が隠れていることもあります。
突然、肩の周りに強い痛みが発生した
腕に麻痺を感じる。筋力が突然落ちた感じがする。思うように動かせない
頭痛、めまい、意識障害、嘔吐などがある
呼吸困難、胸痛、動悸などがある
編集部
どのような疾患の可能性があるのですか?
井出先生
例えば突然痛みが生じたり、腕に麻痺や筋力低下したりしたなどの場合には、頚椎椎間板ヘルニアのような整形外科的疾患の可能性があります。また、痛みや麻痺が腕や手、指などに広がる場合には神経痛の可能性もあります。これらの場合には早く治療介入した方が予後が良いとされているので、できるだけ早めに受診することをおすすめします。
編集部
そのほか、肩こりはどのような疾患の可能性がありますか?
井出先生
頭痛、めまい、意識障害、嘔吐などが見られる場合には脳卒中など、脳の疾患が疑われることがあります。また呼吸困難などの場合には心疾患や肺疾患の可能性があります。その場合には脳や循環器の専門医を受診しましょう。
編集部
内臓の疾患も考えられるのですね。
井出先生
特に左肩や左胸など左側が痛む場合には、狭心症や心筋梗塞の疑いがあります。早めに医師の診察を受けることが大切です。
配信: Medical DOC