生活保護打ち切り、働きながら正看護師めざす「孫の収入増」で…容認判決に批判「子どもの自立阻害する」

生活保護打ち切り、働きながら正看護師めざす「孫の収入増」で…容認判決に批判「子どもの自立阻害する」

●県も途中で方針変換 生活保護を再開

――生活保護に対するネガティブな意見も珍しくないネットでも、今回の判断には批判的な見方が多いようです

今回のような進学する子どもに対する世帯分離は、生活保護を受けながら大学や専門学校で学ぶことを認めていない現行制度の下で、それでも子どもの進学を認めるためにおこなわれるもので、その目的は将来的な世帯の自立を促すことにあります。

今回のケースでおこなわれたように、准看護師を取った段階で世帯分離を解除してしまったら、正看護師の資格取得は難しくなり、世帯分離をした目的を完全には達成できません。

実は熊本県も、廃止からおよそ1年後に、正看護師の資格を取得したほうが自立助長に効果的だとして、改めて孫を世帯分離して生活保護を再開しています。このようなことからしても、世帯分離を解除せず、祖父母の生活保護を継続するという判断は十分にあり得るものでした。

●「機械的な判断」が生活保護法の趣旨に沿うか

――結果的に、また生活保護を受けられるようになったとはいえ、今回のような行政の廃止判断が裁判所で認められてしまうと、自治体によっては子どもがいつまでも自立できない恐れがありますね

今回の高裁の判決は、孫の収入と祖父母の収入を合わせると最低生活費を上回るので、「孫の就学・資格取得により、自立を一応達成することができた」として、世帯分離を解除して、保護を廃止した処分を認めています。

しかし、「一応」の自立で十分とすることは、大学や専門学校へ進学する者を世帯分離する趣旨が「世帯の将来的な自立」のためであることと整合しません。

正看護師は准看護師に比べると賃金が高く、孫の将来的な自立を考えた場合にはそれを支援するのが生活保護法の趣旨にも合致するはずです。

その点で、この世帯に生活保護をおこなっていた熊本県としては、世帯分離を解除して保護を廃止する方向ではなく、世帯分離を継続して修学を支援する方向に裁量権を行使すべきでした。

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