●子どもの目標、支える支援のあり方を
――原告は上告する方針とのことです。最高裁ではどのような審理が期待されますか
今回の判決は「孫が看護師の資格取得を目指していたという主観的な事情は、自立の目的達成に関する判断を左右しない」と、孫の正看護師になろうとする希望を切り捨てています。
子ども・若者が高い目的を持ち、それを達成しようとすること自体が持っている価値をあまりにも軽く見過ぎていて、この判示には強い憤りを覚えました。
社会を見れば、子どもの貧困に取り組む視点から、修学支援新制度も導入され、給付型奨学金や学費の減免も拡充されています。
生活保護制度を見ても、先に述べたように住宅扶助の関係では世帯分離されていても保護費を減額しない扱いになりましたし、大学や専門学校への進学時に転居する場合は30万円、転居しない場合は10万円を支給する「進学準備給付金」の制度も始まりました。
大学や専門学校への進学率は70%を超えています。私はそもそも大学や専門学校への進学者を世帯分離する扱いを止めるべきだと考えていますが、そのような扱いを続けるとしても、修学を支援する方向で制度が運営されなければならないと考えます。
高裁判決の結論は、このような方向性に大きく反するものです。最高裁での判断には引き続き注目していきたいと思います。
【取材協力弁護士】
太田 伸二(おおた・しんじ)弁護士
2009年弁護士登録(仙台弁護士会所属)。ブラック企業対策仙台弁護団事務局長、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団全国常任幹事。Twitter:@shin2_ota
事務所名:新里・鈴木法律事務所
配信: 弁護士ドットコム