「歯がない家族」がいる人必見 オールオン4のトラブル事例とリスク回避法【歯科医監修】

「歯がない家族」がいる人必見 オールオン4のトラブル事例とリスク回避法【歯科医監修】

「少ないインプラントで噛めるようになる」と定評のあるオールオン4ですが、一方で説明不足や理解不足によるトラブルも少なくないようです。そこでオールオン4で起こりうるトラブル事例やその対策について、くろさわ歯科医院の黒澤先生に解説していただきました。

≫「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」それぞれの特徴を教えて!

監修歯科医師:
黒澤 治伸(くろさわ歯科医院)

昭和大学歯学部卒業。医療法人での勤務を経て、くろさわ歯科医院を開業。丁寧なカウンセリングで患者さんと向き合い、一人ひとりに合わせた最善の治療を提案している。日本口腔インプラント学会、国際口腔インプラント学会(ICOI)の各会員。歯科医師臨床研修指導歯科医。

「オールオン4」とはどんな治療?普通のインプラントとどう違う?

編集部

オールオン4とはどのような治療法なのでしょうか?

黒澤先生

オールオン4は歯をすべて失った方を対象にしたインプラント治療です。顎の骨に4〜6本のインプラントを埋入し、その上に前歯から奥歯までが一体になった歯を入れていきます。

編集部

従来のインプラントとの違いを教えてください。

黒澤先生

従来のインプラントは一般に、1本の歯に対し1本のインプラントが顎の骨に対して垂直に埋め込まれます。歯を2本失ったら2本、4本失ったら4本のインプラントを入れていくといった感じです。これに対し、「オールオン4インプラント」は、10〜12本分の歯を4~6本のインプラントで支えます。また埋入する方向も顎の骨に垂直ではなく、傾斜させて埋入するのも大きな特徴です。

編集部

オールオン4にはどんなメリットがあるのでしょうか?

黒澤先生

1つは、インプラントの埋入本数が減らせる点です。従来のインプラントは失った歯の本数と同程度のインプラントの埋入が必要なので、治療による患者さんの身体的・経済的負担も大きくなります。しかし、オールオン4の場合は基本的に4本、多い場合でも5~6本なので患者さんの負担が少なくなります。

編集部

従来の治療よりインプラントの本数が減らせる分、治療による負担や費用も抑えられるわけですね。そのほかに、オールオン4にはどのようなメリットがありますか?

黒澤先生

抜歯と同時にインプラント手術をして、その日のうちに仮歯が入るのも大きなメリットだと思います。歯周病で歯がグラグラしている方や、いまお使いの入れ歯が合わない方でも手術当日から固定式の歯が入るのもオールオン4の特長です。

歯科医に聞く オールオン4でよくあるトラブル事例とその原因

編集部

オールオン4で起こりうるリスクやトラブルを教えてください。

黒澤先生

最も避けるべきリスクは、インプラントの埋入中に神経や血管を傷つけてしまうことです。オールオン4はインプラントを埋入する角度が従来とは異なるため、高い診断力と技術力が求められます。これらが不十分で埋入の操作を誤ってしまうと、周囲の血管や神経を傷つけ、術中の大量出血や術後の痺れ・麻痺などのトラブルを引き起こすおそれがあります。

編集部

そのほかに、どのようなリスクやトラブルがありますか?

黒澤先生

オールオン4のトラブル事例として多いのは、インプラントの脱落です。オールオン4は少ないインプラントで最大12本の歯を支えているので、その負担をバランスよく分散して設計しないと過重負担によりインプラントが脱落してしまうことがあります。また、脱落に関しては治療後のインプラント周囲炎にも注意が必要です。ただ、いずれのトラブルもその原因の根底にあるのは「歯科医師の説明不足」だと思います。

編集部

つまり、トラブルの多くは事前のコミュニケーション不足が起因しているということでしょうか?

黒澤先生

そうですね。オールオン4で実際に起こるトラブルのほとんどは、治療前に患者さんと歯科医師の認識のギャップが埋められていないことがその発端となっています。なぜそうなってしまうかというと、治療のデメリットやリスクをあらかじめ患者さんにきちんと伝えていないからです。オールオン4は確かに良い治療ですが、デメリットやリスクなどネガティブな点についてもきちんと説明しないと患者さんも過度な期待を抱いてしまいます。その期待に応えられなかったことが、結果としてトラブルへ発展してしまうわけです。

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