中学受験「トップ校狙えるのになぜ?」偏差値と憧れに固執していた母が娘に教えられたこと

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。


写真ACより

目次

10以上ランクの低い中学を志望する娘

自分の憧れていた学校が一番いい学校

不合格に衝撃! 娘が立てた作戦とは

偏差値のしばりをほどいて学校の評価を

偏差値60超えなのに……10以上ランクの低い中学を志望

 「偏差値」という言葉。受験経験者にとっては耳なじみがあるワードであろう。この数字は本来、テストや模試を受けた集団の中で自分がどれくらいの位置にいるかを示すもの。いわば目盛りにすぎないのであるが、受験する当事者家庭にとっては非常に重要で「上がった!」「下がった!」と一喜一憂するほど悩ましいものとなる。

 それは中学受験においても同様で、偏差値に踊らされてしまいがちだ。困ったことに、世の中では偏差値が高いほど良い学校で、低ければ行く価値がない学校だという見方がされやすい。

 久しぶりに連絡をくれた桜子さん(仮名)が、しみじみとこう言った。

 「私あの時、娘の決断を応援することができて良かったなぁって、いまさらのように感じました」

 娘である野々花さん(仮名)は、この春就職した22歳。満開の桜の下で晴れやかな入社式を迎えたという。しかし、野々花さんが中学受験をした頃は母子の意見がすれ違い、ツラい毎日を送っていたそうだ。

 「小学生時代の野々花は塾が楽しかったみたいで、常に偏差値60以上をキープしていました。塾からもトップ校を狙えるとのお墨付きをいただいていたほどです。私はうれしくて、家からも近いK学院を猛プッシュしていました」

 K学院は日本古来の伝統芸能も学べ、6年間続けた場合は卒業時に師範の免状も取得できるというお嬢様学校。校則が厳しい学校ではあるが、進学実績は好調。偏差値も60を超えており、難関校のひとつに数えられていた。

 「ところが野々花が行きたがったのが、我が家からは遠いS学園。学校の雰囲気は自由で派手。確かに制服もかわいいですし、やっているカリキュラムも楽しそうでした。ですが、偏差値は40代後半。進学実績も国公立に行く子はほとんどいないという悲惨さで、電車を乗り継いでまで行く意味があるのかな? と感じていました」

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