アザ治療の「ピコレーザー」の効果はご存じですか? ダウンタイムや治療回数も医師が解説!

アザ治療の「ピコレーザー」の効果はご存じですか? ダウンタイムや治療回数も医師が解説!

「顔などにあるアザが気になり、いつもメイクでカバーしている」という女性もいると思います。しかし、アザは「ピコレーザー」で綺麗にすることが可能です。一体、どのようなアザであれば治療可能なのか、さらに治療期間や回数などについても気になります。今回は「新橋汐留 小林クリニック」の小林先生に疑問を解決していただきました。

≫ピコレーザー治療でシミの消えない人がいるのはなぜ?

監修医師:
小林 正弘(新橋汐留 小林クリニック)

慶應義塾大学医学部卒業。その後、慶應義塾大学病院形成外科レーザー外来責任者、慶應義塾大学教授などを務める。2022年、東京都港区に「新橋汐留 小林クリニック」を開院。医学博士。日本形成外科学会 形成外科専門医。

アザの種類と治療法

編集部

アザはどのように治療することができるのですか?

小林先生

レーザー機器の進歩により、多くのアザがレーザーで治療することができるようになりました。レーザー治療では、患部に単一波長の強い光を照射します。この光は特定の色にのみはたらき、色素を破壊します。つまり、アザの色に合った波長のレーザーを選択することによって、周囲の組織にダメージを与えず、アザのみを破壊できるということです。

編集部

「アザの色」とはなんですか?

小林先生

アザは生まれつき出現している、もしくは生まれつきその素養があり、成長によって出現する皮膚の色の違いのことを指します。アザは正常皮膚と異なる色調を持っており、色の違いによって「赤アザ」「青アザ」「茶アザ」「黒アザ」といった種類があります。アザの種類によって、成り立ちや治療法が異なるのです。

編集部

そのなかで、レーザーで治療可能なアザはどれですか?

小林先生

いずれのアザもレーザーによる治療は可能ですが、特に高い効果が期待できるのは赤アザと青アザです。

編集部

そのほかのアザは治らないのでしょうか?

小林先生

黒アザは悪性化する(皮膚がんに変化する)可能性があるため、従来は手術で切除することが強く勧められていました。ただし、面積の小さいものに限れば、可能性が高いわけではありません。整容的な結果を考慮すれば、治療法の選択は患者側に委ねるべきという考えも多くなってきました。色の濃さから想像されるように色素の量が多く、治療回数がかかってしまう場合もありますが、比較的容易に反応するものもあります。

編集部

茶アザについてはいかがですか?

小林先生

茶アザに対してもレーザー治療は用いられますが、再発傾向が強く、完治することは多くありません。ただし、濃い茶アザに関しては多くの場合、改善させることは可能です。

ピコレーザーによるアザ治療

編集部

赤アザや青アザは、どのように治療するのですか?

小林先生

赤アザに対して一般的に用いられているのは、「Vビームレーザー」と呼ばれるレーザーです。色素レーザーという種類で、赤色に反応して赤色の血管を破壊します。

編集部

Vビームレーザーについて、もう少し詳しく教えてください。

小林先生

Vビームレーザーは、レーザー照射時に、冷却ガスで照射部位を冷やしながらレーザーを照射するので、従来の機種より、合併症の少ない治療が可能です。「毛細血管奇形(単純性血管腫)」や「乳児血管腫(いちご状血管腫)」などの赤アザ、「血管病変」、血管が浮き出ている「毛細血管拡張症」の治療に使用されます。

編集部

青アザの治療についてはいかがでしょうか?

小林先生

青アザに対しては、色素系のレーザーが使用されます。これは青色、茶色、黒色に反応するレーザーです。これまで多く使用されてきた機種は、「Qスイッチルビーレーザー」と呼ばれるレーザーです。従来のレーザー装置よりも照射時間を短くして、ピーク出力を高めたレーザーであり、少ない副作用で深部の色素まで破壊することが可能です。

編集部

レーザー機器にも種類がありますが、青アザの場合はQスイッチルビーレーザーを用いるのですね。

小林先生

そうですね。最近では、新たに「ピコレーザー」というレーザー機器が使用されるようになってきました。ピコレーザーも広く捉えればQスイッチルビーレーザーの一種です。従来のQスイッチルビーレーザーがナノ秒(10億分の1秒)単位の照射時間であるのに対し、ピコレーザーはさらに短縮したピコ秒(1兆分の1秒)単位の時間で照射します。

編集部

ピコレーザーは本来、シミなどの治療で使うレーザーですよね。

小林先生

はい、そうです。ピコレーザーは極めて短い時間、レーザーを照射するため、少ない副作用でメラニン色素を破壊し、シミの改善を目指す医療機器です。シミにも用いられますが、アザや刺青(いれずみ)除去においても高い効果が認められています。

編集部

ピコレーザーとQスイッチルビーレーザーの違いは、照射時間の違いによるものですか?

小林先生

照射時間の違いにより、作用機序が変わります。Qスイッチルビーレーザーは、温熱作用で色素を破壊していましたが、ピコレーザーでは、瞬間的に高いエネルギーを与えることで機械的なゆがみを与えるという、光音響作用により色素を砕きます。この働きが、特に刺青の色素に作用し、刺青を取るのに必要な治療回数を大幅に減少させました。

編集部

ピコレーザーは青アザに対して、効果が期待できるのですね。

小林先生

はい。青アザには、大きく「太田母斑」と「異所性蒙古斑」の2種類があります。太田母斑は生まれつき、もしくは、思春期から出現する主に顔の片側にできる青アザです。自然に消失することはないため、消すためにはレーザー治療が必要です。一方、異所性蒙古斑はお尻以外にできる蒙古斑です。10~12歳で消失することも多いですが、消えないものもあります。消えない可能性の高いものは、早期にレーザー治療をおこないます。いずれの青アザも、皮膚の深い部分(真皮)にメラニンがあるという特徴があります。太田母斑と異所性蒙古斑に対しては、ピコレーザー治療が2020年5月から保険診療となりました。

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