●ホテルのフロント対応、火に油を注いだ悪手
コールセンターに続き、ホテルの悪質な宿泊客に応対するデモを筆者も体験した。
AI客「今すぐ最上階のスイートルームに案内してくれ。通常料金の半額でな」
いきなりの高い要求にしどろもどろになる。 筆者「お客様……ほ、本日は別のお客様が利用しておりますので、難しいです。申し訳ございません」
AI客「そんなの関係ない。他の客をどけてその部屋を用意しろ。料金は譲歩しろ。俺は常連だ」
押し問答が続いた。
筆者「申し訳ございませんが、これ以上無理を申し上げられると宿泊をお断りします。……警察に通報します」
AI客「警察だと?笑わせるな。こんなところ二度と使わん!他にいいホテルはたくさんある」
これまでのカスハラ取材で「理不尽な要求には毅然とした対応をとることが大事。警察に通報することもいとわない」と聞いていたので、断固拒否した。ただ「とにかく断ろう」と思うあまり、一方的な対応に終始し、AI客の怒りがどんどん大きくなっていくのが分かった。人が相手だったら大変なことになっているだろう。
「断ろうという気持ちが前に出すぎて、顧客の声を受け止めずコミュニケーションが足りなかったように思います」と関根さんは言う。
このバージョンは「理不尽な顧客は断ると決めても、いざその場面になると断りにくいので練習したい」という企業の声から開発したそうだ。実際、断ることは非常に難しかった。企業は悪質な客を断るルールを決めた上で、AIと練習するのが効果的だという。
同社は今後、その場で答え方をアドバイスする機能もつける計画だ。カスハラが原因で離職者が出ることは企業にとって大きな損失になる。時間や場所を選ばずにトレーニングでき、評価がブレないAIは、いい練習相手かもしれないと思った。
(撮影場所 WeWork Hanzomon PREX South)
配信: 弁護士ドットコム