【2024年より新制度】高齢者が、NISAなどへ長期積立投資する場合に心配なこと <その1>

所得税に関するNISA相続の手続き

先述のとおり、相続の際には株式等を売却する必要はありません。相続人は、被相続人の死亡を知った日以後、遅滞なく、金融機関へ「非課税口座開設者死亡届出書」などの書類を提出すればよいのです。あとは、金融機関が株式等の名義変更手続きを行ってくれます。

 

所得税は相続後、相続人が株式等を売却したときに、相続人に対してかかります。その場合、NISA口座は非課税口座なので、被相続人が亡くなるまでの利益には課税されません。

 

また、相続人は相続した株式等を自身のNISA口座に移管することはできず、自身の特定口座や一般口座に移管することになります。すなわち、相続人は原則として相続発生日の時価で株式を取得したことになり、売却日の時価との差額に課税されます。

 

したがって、被相続人の運用期間中は非課税だった株式等の利益にも、相続人の運用期間中は課税されることとなります。

 

もし、相続人の運用期間中に課税されることを避けたいのであれば、「相続直後に株式等を売却し、売却した代金で別の株式等を運用する」という方法があります。そうすれば、相続人の保有期間はほとんどゼロになるので、被相続人が購入してから相続人が売却するまでの期間を、実質非課税にすることができます。

 

また、相続した株式等を相続人の特定口座で運用する方法もあります。この場合、所得税はその利益に課税されますが、他の特定口座との損益通算が可能になります。

 

その他、NISA口座の株式等を相続したあとで課税される対象については、図表1を確認してください。

 

図表1

NISA口座で運用した株式・投資信託を相続した場合の課税関係

 

筆者作成

 

まとめ

本記事では、高齢者がNISAで長期積立投資をしているときに、万が一のことが起こった場合の対策として、「相続」の手順を説明しました。「その2」では、NISA口座ではなく、特定口座・一般口座の株式を相続する場合の、「所得税」と「相続税」の課税関係について、説明したいと思います。

 

出典

国税庁 No.1464 譲渡した株式等の取得費

国税庁 相続税のあらまし

国税庁 NISA及びつみたてNISAの手続に関するQ&A

国税庁 株式・配当・利子と税

 

執筆者:浦上登

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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