フィギュアスケート選手・小松原美里、「結婚、そして卵子凍結。私の選択」

フィギュアスケート選手・小松原美里、「結婚、そして卵子凍結。私の選択」

フィギュアスケート選手の小松原美里さんは2017年、アイスダンスのパートナーであるティム・コレト(現在は小松原尊)さんと結婚。そして2023年、卵子凍結という決断をしました。アスリートとしてオリンピック出場という目標を追いながら、未来の自分のために行った選択。約7年の夫婦の歩みと今の想いを語っていただきました。

ペア結成から約8カ月、結婚は自然な流れで

小学4年生からフィギュアスケートを始め、高校時代にはアイスダンス選手として全日本ジュニア選手権で連覇。その後、イタリアへと拠点を移し、22才のときにはイタリア選手権で日本人初の銅メダルを獲得した小松原美里さん。世界を舞台にアスリートとしてキャリアを重ねながら、漠然とライフプランを思い描いていたと振り返ります。

「両親は仲がよく、私の夫婦の理想像。だから自分もいつか結婚して、お母さんになって…と、ふわっとしたイメージを持っていました」

23才のとき、子宮の近くに腫瘍が見つかり手術を受けたことをきっかけに自分の体と向き合い、ヴィーガン(動物性食品をいっさい口にしない完全菜食主義者)に。イタリア人選手とのペアを解消し、新しいスタートを切るべくトライアウト(パートナーとしての相性を判断するためのスケーティング)に臨みました。そこで出会ったのが、アメリカ人スケーターのティム・コレトさん。

「トライアウトの際、ティムの荷物が空港でロストバゲージに遭い、スケート靴や衣装が現地に届かないというアクシデントがありました。でも、そのおかげでスケート以外のことも早くから共有できたと思います。それに、当時の私はオリンピック出場をあきらめながら滑っていたのですが、ティムと『心の中にはまだ叶えたい夢があるよね』という話をして前向きな気持ちに。彼と一緒にやっていこうと決めました」

2016年、2人は正式なペアとなり、オリンピック出場という共通の夢を追うようになります。

「最初の頃は言葉の壁がありました。ティムは当然、日本語がまったくわからない。私は当時イタリアに住んでいたのでイタリア語は勉強していたけれど、英語はいまいち…。それでも2人とも『もっとコミュニケーションを取りたい』『理解を深めたい』という想いが強かったので、お互いに勉強しました」

絆を深めた2人は2017年に結婚。競技だけでなく私生活でもパートナーとなりました。

「『スピード婚』と言われるくらいの早さで結婚しました。だって一緒に過ごしていて楽しいし、邪魔するものもないし。私たちにとって結婚は自然な流れだったような気がします。あまりに自然だったから、自分でもびっくりしたくらい(笑)」

アスリート同士の結婚、国籍や文化の違い…。大変なこともあるけれどいまだに新しい発見があるからおもしろい!

国籍の違うアスリート同士の結婚には大変だと感じることも。

「言葉ももちろんですが、いちばんは育った国の文化の違い。当たり前と思うことが全然違うんですよね。スケートでは理解し合える部分が多いけれど、結婚生活では確実に違う人間同士であるということを実感します。でも、いいようにとらえれば『あ、彼は私とは違う考えなんだな』『こんな一面もあるんだ』と、いまだに新しい発見ばかり。それがおもしろいなと思っています」

結婚生活に明確な約束事はないものの、スケートのカップルとして設けたコミュニケーションのルールを家庭でも実践しているそう。

「例えば、疲れておなかがすいていると、頭が働かなくてギスギスしちゃいますよね。その状態で相手にイライラをぶつけない、とか。ほかにも、ティムはけっこうおしゃべりなタイプですが、私にもキャパシティがあるので、余裕がないときは『ごめん、今は1人で過ごしたい』と言います。最初の頃、ティムは『なんで?』という感じでしたが、今は理解してくれるようになりました」

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